Disaster Report 国内災害レポート

ときには人の命をも奪う局地的な大雨
気象庁予報部予報課気象防災推進室

今年の夏は、局地的な大雨による災害や事故が各地で相次ぎました。楽しい水遊びの場や生活の場が、ときに命を奪う非常に危険な場へ、一変することを知り、気象の変化への注意を心がけましょう。

 局地的な大雨は、急速に発達した積乱雲(雷雲)によってもたらされます。傘がまったく役に立たないほどの激しい雨が降るため、小さな川や山間の沢は瞬く間に増水し、清流が大人でも流されてしまう濁流へと急変します。また、線路や高速道路下を交差してくぐる半地下道路(アンダーパス)では、排水が追いつかずに冠水し、その水深が2mに達することもあります。
 今年の夏は、日本各地で局地的な大雨による災害や事故が発生しました。7月8日、東京都大田区呑川で作業員1人が亡くなり、8月5日には、東京都豊島区雑司が谷の下水道管内で作業をしていた作業員5人が亡くなりました。また、8月16日には、栃木県鹿沼市で東北自動車道をくぐるアンダーパスが冠水し、乗用車が水没して女性1人が亡くなりました。

予測は可能?

 現在の気象予報技術では、局地的な大雨をもたらす積乱雲が発生しやすい気象条件となることを、数百km程度の領域で、1日程度前から予想できます。また、すでに発生している積乱雲がどのように移動するかについても比較的正確に予測することができます。しかし、個々の積乱雲がいつ、どこで発生し、どれくらい発達するのかを事前に正確に予測することは、最新の予報技術をもってしても難しいのが現状です。

気象庁の対応

 気象庁ではこれまでも、雷による災害の恐れがある場合には、雷注意報を発表して注意を呼びかけてきましたが、今年の夏に相次いだ局地的な大雨による災害や事故を防止するために、雷注意報の内容で“突発的な雨の強まり”への注意を呼びかけると共に、気象庁ホームページ上で自治体や民間気象事業者の携帯電話サービスの紹介を8月より始めています。また、今年度内には、気象レーダーエコー図などの“防災気象情報の利用促進のためのガイドライン”を作成・公表すると共に、今後も局地的な大雨の予測技術の向上に努めていきます。

身を守るには

 局地的な大雨による災害に巻き込まれないようにするためには、事前に天気予報や警報・注意報の発表内容を確認するだけでなく、戸外でも携帯電話などで最新の気象情報を収集したり、「空が急に暗くなる」「雷が鳴る」など身の周りの急激な天気の変化にも注意し、異変を感じたら、すぐに、安全な場所へ避難することが大切です。

平常時の都賀川

7月28日、兵庫県神戸市灘区の都賀川が急激に増水し、河川内の親水公園で水遊びをしていた子どもたちを含む5人が流され、亡くなった。左写真は平常時、右写真は事故発生時の都賀川で、川の水位は10分間で1m30cmも上昇(写真提供:神戸市ホームページ)

事故発生時の都賀川。川の水位は10分間で1m30cmも上昇

「平成20年8月末豪雨」のときの愛知県一宮市一宮インターチェンジ付近の半地下道路(アンダーパス)の冠水状況(写真提供:愛知県一宮市)

積乱雲が局地的な大雨をもたらすメカニズム

 積乱雲は、大気の下層へ暖かく湿った空気が流れ込み、上空には冷たい空気が流れ込む大気の状態が不安定な状況のもとで発生・発達します。個々の積乱雲の水平方向の大きさは、せいぜい数kmから十数kmの広がりで、寿命は数十分程度です。
 夏場の積乱雲は、たとえ1個であっても発達して衰弱するまでの短時間に激しい雨を降らせます。これが局地的な大雨です。また、気圧配置や地形の効果によっては、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返し、数時間にわたって狭い地域に激しい雨が降り続く場合があります。これが集中豪雨です。
 「平成20年8月末豪雨」では、暖かく湿った空気が日本付近の大気下層へ連続して流れ込む気圧配置が続いたため、連日、各地で記録的な大雨が発生しました。

積乱雲(雷雲)が発達する条件
積乱雲が局地的な大雨をもたらすメカニズム

こんなときには天気の急変に注意してください!

もし、このような場面にいたら

  • 川などでの釣りや水遊び
  • 河原や川の中州でのキャンプ、バーベキュー
  • 沢登り、キャニオニング
  • 線路や高速道路下を交差してくぐる半地下道路
  • 河川や下水道内の工事現場

こんなときは要注意

  • 天気予報:「大気の状態が不安定」「雷」「天気の急変」などの表現があるとき
  • 警報や注意報:雷注意報、大雨や洪水の警報・注意報が出ているとき
  • レーダーなどの観測情報(民間気象事業者の携帯電話サービスなどで入手):周辺や上流で雨が降っているとき
  • 空の状態:「急に真っ黒な雲が近づいてきた」「雷鳴が聞こえる」「稲光が見えた」とき
  • 川の状態:「水かさが増えてきた」「濁ってきた」「流木や落ち葉が流れてきた」とき
  • 警報装置:サイレンの音が聞こえるとき
  • 看板、表示板:「危険区域には立ち入らない」「雨のときには川から離れてください」「通行止め」などの表示があるとき

異変を感じたら即、避難

真っ黒な雲が近づいてきたら要注意!
(写真提供:中部航空地方気象台ホームページ)

●気象庁ホームページ「天気の急変から身を守るために」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/tenki_chuui.html

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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