REPORT 3 全国防災まちづくりフォーラム
プログラム1 基調講演
「防災フェア 2008 in さいたま」開催中の8月24日。13時から約5時間にわたり、大宮ソニックシティの国際会議場で「全国防災まちづくりフォーラム」が開催されました。テーマは「被災してわかること」。主催者のあいさつの後、まずは(株)毎日放送ラジオ局報道部副部長で、防災情報番組「ネットワーク1.17」のプロデューサーでもある大牟田智佐子さんによる基調講演が行われました。
講演のタイトルは「防災まちづくりは『わがこと』と『大きなお世話』から」。住民の特技をいざというときに役立てられる兵庫県・加古川グリーンシティの「町内チャンピオンマップ」、宝塚市で地域と学校との結び付け役となったボランティアの活動や、神戸市内の2地区における復興過程の比較など、具体例を交えながら災害時に結束力が発揮されるコミュニティづくりの大切さを訴えました。「想定外のことが起きる震災下では、とっさの判断ができる人間力が必要。そして、そんな力のある人材を生み出していかなくてはなりません。まちづくりは人を巻き込んでいく“ダチづくり”なんです」と大牟田さん。


基調講演をする大牟田さん。ラジオ放送以外にも中央防災会議「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する専門調査会」委員等として防災に取り組んできている
プログラム2 リレートーク
続くプログラムは、「被災してわかる日頃からの共助・防災まちづくりの大切さ」をテーマとしたリレートーク。聞き手は、大牟田さんと埼玉県さいたま市の三橋コミュニティ役員・清水恒男さん。発表者は、岩手・宮城内陸地震で被災した栗原市花山総合支所長の千葉和俊さん、栗原市栗駒耕英地区行政区長の金沢大樹さん、くりこま耕英震災復興の会会長の大場浩徳さん、能登半島地震で被災した輪島市門前町門前区長の星野正光さん、新潟県中越沖地震で被災した柏崎市松美町内会長の関矢登さんで、それぞれ震災下での具体的な体験や復興への取り組みが語られました。
その後は、聞き手からの質問の時間に。各被災関係者の話を受けて、清水さんと大牟田さんが会場を代表して、気になる点などを聞きました(詳細はこちらのコラムを参照)。
プログラム3 パネルディスカッション
次に行われたのは、パネルディスカッション「防災まちづくり活動 継続のヒント」。コーディネーターは(財)建設経済研究所・研究理事の丸谷浩明さんで、4人のパネリストから各団体の活発な活動が発表されました。
●宮城県仙台市宮城野区福住町 町内会会長 菅原康雄さん
「隗より始めよ〜小単位の町内会だからできること」と題して、まずは予算ゼロから取り組んだ、独自の防災計画を紹介。名簿作り・マニュアルを含めた組織体制作りの流れ、災害対策本部長を筆頭にした災害時組織編成のほか、家具の転倒防止、災害用トイレやペットへの対応など、具体的な災害対策を発表しました。そして、新潟県中越地震や岩手・宮城内陸地震などでの支援活動を紹介しながら、町内会同士における連携の必要性を訴えました。現在、福住町は3カ所の町内会と災害時支援協力協定を結んでいます。
●三重県特定非営利活動法人 災害ボランティアネットワーク鈴鹿事務局 船入公孝さん
「防災まちづくり活動〜継続のヒントとは〜」について、まず「子どもたちをうまくまきこむこと!」を挙げました。2日間にわたる防災訓練・体験「防災子どもサミット」を行ったことで、子どもたちが両親や祖父母に防災の話をするように。その結果、3世代にわたる防災活動「三ちゃん防災サミット」が実現。さらに、子どもたちに大人が導かれて活動が続き、「子どもがかかわると止められない!」と締めくくりました。
●奈良県上牧町 西大和6自治会連絡会事務局(防災担当) 辻誠一さん
まずは、防災組織の経過を説明。その後、年間行事の中から「子供サバイバルキャンプ」を取り上げ、救護活動や炊き出し訓練、キャンプファイヤーなどの様子をスライドで伝えました。また、新興住宅地であるために自主防災への「関心が少ない」「堅苦しい、面倒だ」などの問題点を挙げ、その解決策として行った祭りや餅つきなどのイベントを紹介し、「遊びながら地域を知る」ことで地域のネットワークづくりができる、とまとめました。
●埼玉県さいたま市 三橋コミュニティ役員 清水恒男さん
コミュニティの紹介の後、昨年の八都県市合同防災訓練の一環として行った「避難場所夜間運営訓練」について発表しました。地震発生から、避難場所受付、各種訓練、夕食、宿泊までの流れに沿ったスライドを見せたのち、「地域住民の結束力なくしては、災害に立ち向かえない」と締めくくりました。
これらの発表を受けて、丸谷さんは、ボランティアの皆さんの活動と住民団体の活動を地域ごとにうまく組み合わせていくのがポイントであり、今回のような機会を活かしてほしいと訴えました。

パネルディスカッションの様子。左から、菅原さん、船入さん、辻さん、清水さん
プログラム4 相互交流の時間
各発表の終了後は、相互交流の時間となりました。今後の防災活動のヒントを得たり、震災下の復旧・復興に向けた支援の輪を広げるなど、貴重な機会となりました。
被災してわかる日頃からの共助・防災まちづくりの大切さ
[岩手・宮城内陸地震]
多くの河道閉塞や山の崩落が生じた栗原市。中でも今回は花山地区や栗駒耕英地区の様子が話されました。集落に入る道路が通行不能になった栗駒耕英地区では、住民はヘリコプターで避難。避難所のスペースに余裕はあったものの、不安・不満がつのり、次第に「山に戻りたい」という住民の声が高まりました。そこで、一時帰宅が実現したところ、人々の心に余裕が生まれたそうです。また、仕事ができない避難所生活が続くと気持ちに張りがなくなるため、特産品のイチゴの一部をなんとか持ち帰り、ジャムに加工。支援者へのお礼はもちろん、自分たちの励みにもなりました。
[能登半島地震]
そば・豆腐屋を営む星野さんは、阪神・淡路大震災などの現場に行った経験から、費用をかけてお店の補強工事を実施。そのため、従業員を含め、震災で命を落とさずにすみました。震災では、「のうなった(なくなった)のは物だけや」というお年寄りの明るさに救われ、「心が復興すれば、物は後からついてくる」と実感。人の命が助かったのは地域の救い、と振り返りました。また、大切なのは災害をイメージすること、と強調。災害を考えることで事前の備えが分かるだけでなく、震災下では知識と実行力をもってリーダーシップを発揮できると訴えました。
[新潟県中越沖地震]
震災では初期対応が大切であり、地域で助け合うことが不可欠、と関矢さん。ボランティアのコーデーネイトをするにあたり、独自で行った住民へのアンケートが役立ったことを紹介しました。まちづくりにおいては、中心となるメンバーが固定されないよう、町内の行事別に実行委員会を作っているとのこと。PTAや民生委員にも加わってもらうことで、まちづくりの意識を普及させています。被災から1年経った現在も、静岡や富山などへ自主防災組織づくりの勉強に出かけるなど、ささやかでも助け合いの気持ちが根付くように取り組んでいます。