特集 地震発生! あなたの住まいは大丈夫? 耐震補強、家具転倒防止……震災の備えは住居から!
なぜ、日本はこんなに地震が多い?
あした起きてもおかしくない大地震
毎日、どこかで地震が発生している日本。その理由を、東京大学地震研究所の島崎邦彦教授に聞いた。
日本の中で「大丈夫」と断言できる場所はない
日本は、世界でも稀に見る地震の多い国と言ってよいでしょう。地震とは、そもそも地下の弱いところが一気にずれる現象で、プレート(岩盤)とプレートの境目で多く発生します。日本列島が位置する環太平洋は、ちょうどこのプレートの境目に当たり、さまざまなプレートが重なる掃き溜めのようなところなので、あちこちにほころびが生じやすいのです。
地震には「海溝型地震」と「直下型地震」の2種類があります。海溝型地震とは、海溝に沈み込む海のプレートが陸のプレートを引きずり込もうとする時、陸のプレートが元に戻ろうとする力によって発生する地震のこと。大正12(1923)年の関東大地震や、現在心配されている東海地震、東南海(とうなんかい)地震も、このタイプだと考えられます。この地域では、マグニチュード8程度の地震が100年から150年の間隔で起きています。前回の安政東海地震から150年過ぎていることから、静岡県西部、駿河湾一帯の東海地震はいつ起きてもおかしくないと言ってよいでしょう。
一方、内陸部でプレートの内部がひずみ、限界に達すると壊れて断層ができます。これが私たちの足元で起きるものを直下型地震と言います。平成7年の阪神・淡路大震災はこのタイプの地震が起こしました。
断層の中でも今後もずれて、大地震を起こす断層を活断層と言います。どの場所でいつ地震が起きるのか、予測するのは困難ですが、活断層があるかどうかが一つの目安となります。もちろん活断層がない地域が安全だとは言い切れません。大地震が地面に残した傷跡は、ある程度の時間が経てば消えてしまいますが、同じ場所で地震が起こるので、消えるより早く地震が繰り返すと傷跡が残っていきます。これが活断層です。「ここには明らかにある」と簡単に言えますが、「ここには絶対にない」とは言えないので、地道に調査するしかありません。
我々は、分かることについては答えられますが、分からないことについては断言できません。例えば、東海地震、東南海地震などが起こるだろうと予測はできますが、それ以外の場所については安心だということは絶対に言えません。日本全国どこでも、ここは大丈夫という場所はないのです。
最近日本では、岩手・宮城内陸地震や新潟県中越沖地震など、地震が続いていますが、それでも比較的平和な時代だと言えるでしょう。実はこの先、大きな地震が、「かため打ち」で起きる可能性があるのです。たまたま今は間が空いている時期に過ぎないのですが、その間に一生を過ごせたら、その人は幸運だと言えます。まさに、大地震は今日起きてもおかしくないのです。
「いつ起きるのか、どの場所で起こるのか」と心配するよりも、お金をかけてでも家を丈夫にするしかないのです。

阪神・淡路大震災の原因となった活断層、野島断層の保存館(写真提供:島崎邦彦)

東京都立川市・青梅市などを通る立川断層のトレンチ調査。砂利の層のずれが分かる(写真提供:島崎邦彦)


東京大学地震研究所
地球流動破壊部門 教授
島崎 邦彦
しまざき くにひこ
1946年、東京生まれ。68年東京大学理学部地球物理学科卒業、70年東京大学理学系大学院地球物理学専攻修士課程修了後、東京大学地震研究所助手を経て、74年に理学博士に。その後、カリフォルニア工科大学研究員、東京大学地震研究所助教授を務めたのち、89年より教授となる。地震調査や予知、防災関連などの委員を多数務めている。主な著書は『あした起きてもおかしくない大地震』『地震と断層』『活断層とは何か』など
取材&文:さくらい伸