特集 風水害の危険! そのとき、 あなたは?

平成16年台風23号がのこしたもの 〜兵庫県豊岡市を訪ねて〜

近年の台風で、特に被害が大きかった平成16年台風23号。中でも、兵庫県豊岡市は円山川が破堤し、7人が亡くなった。市や地域における、風水害対策の変化をレポートする。

 約6万人の住民に避難勧告・指示が出された豊岡市。だが、実際に避難したのは約5700人と10%にも満たなかった。破堤による直接被害で1人が亡くなり、1人は裏山崩壊による家屋の下敷きに。そのほか、冠水した道路を車や徒歩で進んで濁流に流され、5人が命を落とした。
 多くの反省点の中で、特に情報伝達に関しては、水位の変化や道路状況などが具体的に伝えられなかったこと、避難勧告と避難指示を誤解した人もいたこと、聞きとりやすい丁寧な口調の通報がかえって緊迫感を与えなかったことなどがあがった。そこで、できるだけ早く住民に避難してもらうために、洪水ハザードマップの全戸配布や、出前講座などによる積極的な啓発事業も実施。情報伝達は、防災無線に加え、地域のリーダーや聴覚障害者などへの一斉FAX、携帯電話の災害情報メール送信も行うようにした。災害の記憶が風化しないよう、メモリアルイベントや防災教育も実施している。

豊岡市立野で、円山川が破堤。堤防が沈下している部分から越水し、その水によって堤防の側面が削られたために決壊した。(写真提供:豊岡市、豊岡河川国道事務所)

豊岡駅から続く、アーケードのある商店街も歩道と車道の区別がつかないほど冠水した。(写真提供:豊岡市、豊岡河川国道事務所)

各家庭や公共施設には防災行政無線の受信機が取り付けられている。すでに市全域をカバーした。

町のよさと住民の力を再発見! 〜下陰区自主防災会ネットワーク〜

 約1050世帯が住む下しもかげ陰区は、人的被害はなかったものの、場所によっては1.6mも冠水し、避難ルートがわからなかったなどの問題があった。そこで一念発起したのが、副区長の西村充春さん。県の防災リーダー講習に通って防災士の資格を取り、具体的な活動に取り組み始めた。
 まずは台風23号の冠水マップを作成。実際の冠水度を知ることで災害意識が高まり、避難ルートも想定できた。続いて作ったのが防災マップ。
「常に目にしていなければ意味がない。そこで、ポスターにしたんです」
 子どもたちとの「防災まちあるき」も行っている。危険な場所のほか、神社なども含めて区内を探検し、見たものを書き込んだ地図を作ってもらった。区長の谷上毅さんは、
「防災教育と言わず、自分たちの町を再発見するイベントにすれば、みんな楽しく参加してくれます」
 大人向けには「下陰区セーフティネット」という人材登録制度を立ち上げた。電気・土木工事関連、アマチュア無線などの特技だけでなく、炊き出しや掃除などでも登録可能。
「いざというとき、気持ちのある人にすみやかに活躍してもらえるよう、事前に地域を把握するのが目的です」
と、西村さん。この意識を持続させる活動にも力を入れている。

公民館横の防災倉庫には発電機やライフジャケット、屋外にはボートも常備。

資機材の購入や訓練計画などを話し合う西村さん(左)と谷上さん。

防災マップのポスター。避難勧告や指示が出たときの行動も記載。

撮影:尾上達也

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