防災 Q&A

Q:マンションやアパートを買ったり借りたりする際、耐震性を判断するには、どのような点に注意すればよいでしょうか?

A:地盤の堅さのほか、建築年と耐震基準、建物の高さ、形状と構造です

 マンションやアパートの場合、自分で戸建て住宅を建てる場合と比べて、敷地や建物の構造などを考えることが少なく、建物の見栄えや使い勝手、交通の便などを重視しがちです。ですが、マンションやアパートは、建物が被害を受けたとき、自分だけの判断で修理することは困難です。このため、地震に強い建物を選ぶことがとても大事になります。 
 地震で建物が被害を受けるのは、地震の揺れの強さに、建物の強さが負けるからです。すなわち、地震の揺れの小さいところに建っている強い建物を選ぶことが基本になります。地震のときの揺れの強さは、地盤の堅さによって異なります。軟弱な地盤では堅固な地盤に比べ揺れが2〜3倍になることもあります。砂質地盤では液状化の危険性もあります。河川周辺やかつての谷筋、田や池・海を埋め立てた場所、低地などは地盤が軟弱な場合が多いです。逆に大昔から家が建っている場所はよい地盤の場合が多いので、昔の地図を調べたり、地名の由来を考えるとよいでしょう。
 一方、建物の強さを調べるポイントは、1.建築年、2.建物高さ、3.建物の立体的な形、4.建物の平面的な形、5.低層部と高層部との壁のバランス、6.平面的な壁の量と壁のバランス、7.基礎の構造、8.建物の構造、9.耐震・免震・制震の別、10.室内の危険度、などです。
 建築年による耐震性の違いは耐震基準の改正に係わります。一般に、1981年以前の建物はそれ以降の建物に比べ耐震性が低いようです。また、建物高さによっても耐震基準が異なっています。31m、45m、60mなどで基準が切り替わります。阪神淡路大震災の被害調査結果を見ると、建物高さが高いほど被害が大きくなっていました。これは建物が高くなると耐震的な余裕が無くなるためと考えられます。そう言う意味では、基準が切り替わる高さよりやや低い建物では、ゆとりが少ない場合もあります。
 低層部が広がっていて高層部が後退して小さくなっている建物や、平面的な形がL字型の建物の場合には建物の揺れ方が素直ではなくなり部分的に強く揺れる箇所が生じ不利になります。また、1階が商店や駐車場になっている場合には、2階以上に比べて1階の壁が不足がちになり、1階に変形が集中し被害が出やすくなります。また、片面に窓が多く、逆の面に壁が多い場合には壁の平面的なバランスが悪くなり建物がねじれやすくなります。そういう意味では、あまり面白みのない直方体の低い建物が耐震的には無難だとも言えます。
 もう一点大事なことは、室内の安全です。大きな収納家具やピアノ、大型テレビが倒れたり、戸棚から食器が飛び出したり、吊り照明が落ちたりします。地盤が軟弱だったり、部屋が高層階にある場合には、室内の揺れは思いのほか大きくなります。

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名古屋大学大学院教授 福和 伸夫
ふくわ・のぶお
1981年に名古屋大学大学院修了後、清水建設株式会社に入社。91年から名古屋大学に異動。専門分野は建築耐震工学、地震工学、地域防災。

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