気象予報士 半井小絵さん
その秘密は、番組を担当する半井小絵さんの熱心な情報収集によって組み立てられる予報と、落ち着いた話し方にあります。
幼い頃、祖母に聞いた室戸台風の話が忘れられず、気象予報士の資格を取得したという半井さん。
防災への意識の高さは、そこから始まっています。
災害につながる気象情報が最優先です
午前中は気象庁のホームページでデータをチェック。昼にはNHKに出社し、膨大な資料と刻一刻と変わる状況を見ながら、打ち合わせをしつつ、解説画面や原稿の作成。約2分間の放送のために、ほぼ1日を費やす半井さん。
「大気の動きや雲の様子などの細かい資料と地形の特徴を解析して、予測をします。でも、気象の状況に同じ条件はほとんどありません。それにニュース番組ということで、気象情報とは別にニュースの中で解説することもあります。番組の進む具合によって、臨機応変に情報を加えたり整理したりも必要です。限られた時間で何を伝えるべきか……放送直前まで、葛藤は続きます」
一人でも多く被災者を減らすため、半井さんは防災情報が最優先。
「災害の恐れがない場合は、四季折々の話題をお伝えしたいと思っています。でも昨日(4月16日)は迷ったんですよ。東北で気温27度を観測した地域があったのですが、西日本の天気はすでに下り坂。でも、雨のピークには間があると考えたので『今年初の夏日となった所がありますが、明日は続きません。』という話題から入りました。もし昨日の時点で災害の恐れがあったら、雨雲の状況を最優先に伝えましたね」
取材当日の東京はぐずついた天気。その日のポイントは「明日は、東日本の太平洋側は大荒れ」でした。翌日は、東海・関東地方を中心に風雨が強まって、首都圏の交通ダイヤは大幅に乱れました。
日々の放送に加え、半井さんは、防災セミナーやシンポジウムで講師やパネリストを務めたりしています。
「伝えたいのは、自然の力は大きいということ。『自分だけは大丈夫』と思わないでほしいんです。昨年8月、『羽越水害から40年』行事の防災シンポジウムで兵庫県豊岡市長の中貝氏とご一緒したのですが、その時のお話は忘れられません。市の防災無線で避難勧告を出したにもかかわらず、逃げた住民は10%以下。行政の方が『行政の力ではどうにもならないことがある。まずは逃げることが大切だ』とおっしゃったんです」
多くの人と出会うことで、テレビを観る人がどのように受け止めてくれるか、みなさんの気持ちが少しでもわかるようになれば、と半井さん。そのためには
「まず、いかにわかりやすく気象情報を伝えられるかが課題です。子どもでも理解できるような言葉を選ぶように、気をつけています」
最後に、6月から7月にかけての気象状況を聞いてみました。
「梅雨の時期は、一番予報の難しい時期です。梅雨前線の位置によって、晴れ、曇り、雨と数百キロ単位で天気が変わってきます。地域によっては、停滞して雨が長引くことも。気象情報を見る時は、梅雨前線の位置と雨の強さに注意してください」
兵庫県出身。2001年3月、日本銀行在職中に気象予報士の資格を取得し、同年6月に民間の気象会社に転職。2002年4月からNHK関東甲信越の気象情報を担当し、2004年3月末より「NHK ニュース7」(月〜金曜、19時〜19時30分放送)の気象情報を担当している。防災に関連する講演のほか、主な著書は『半井小絵のお天気彩時記』(かんき出版)。