特集 地域の力でまちを守る みんなでつくる安全な暮らし

防災は、自分自身の身は自分で守る「自助」、地域や身近にいる人同士が助け合う「共助」、行政による「公助」の三要素が効果的に組み合わせられることによって効果を挙げることができます。
少子高齢化が進む中、今後、地域社会における共助の役割が大きくなると考えられます。災害時における要援護者対策や、雪下ろしなどで、高齢者を地域ぐるみで支援することも重要な課題です。
この特集では、共助の大切さや取り組み方について室・益輝関西学院大学教授からお話をいただき、先進的な活動を行っている共助の事例を紹介します。

阪神・淡路大震災では、地域住民が協力して救出が行われた(写真提供:神戸新聞社)

バケツリレーで消火活動を行う住民たち(写真提供:神戸新聞社)

地域だからできること

 大きな災害が起きた時、行政による公的な力、または、個人の力だけでもどうにもならない。これは阪神・淡路大震災の最大の教訓です。みんなで力を合わせて助け合わなければなりませんし、その地域の人でしかできないことがたくさんあります。
 例えば、倒壊した家屋に閉じ込められている人がいて、早く助けないと命が危ない、まさに時間との勝負です。この場合、隣近所の人や消防団など、近くにいる人にしか助けられません。また、どこに一人暮らしの老人がいて、どこで寝ているのか、どこに井戸があり、ジャッキがあるかなどは遠くから助けにくる人たちにはわからないのです。
 また、まちの防犯についても、地域住民なら24時間の監視の目、常時機能する力があり、効果をあげている地域はたくさんあります。
 そして、細やかなニーズに対する対応も可能です。避難所の食事の場合、行政なら同じ内容のお弁当を配ります。地域の人たちなら「このおばあさんは油ものがだめ」とか「お肉がだめ」といった嗜好や体調に合わせた対応ができるでしょう。
 このように、「公助ではできないところを共助でやる」。「地域だからできること、地域がやらなければならないことがたくさんある」と積極的にとらえていくことが大切です。

「共助」の新しい枠組みを考える

 共助の中には、かつての「互助」※が含まれます。これは「運命共同体」のような、同じ地域に住む人など、暮らしや仕事の利害をともにする人同士の助け合いです。以前はこの互助がしっかりしていて、その力によって地域が支えられていました。しかし、現在は、コミュニティに参加しない人も増え、それがだんだん弱くなってきています。「地域に住んでいる人」の力だけではどうにもならない部分がでてきています。
 地震時の火災の場合、自分の家だけ消火器や水バケツで備えていても、よそから火がでれば自分の家も燃えてしまいます。同じ地域に住む人は「運命共同体」ですから、みんなで守り合わなければなりません。
 そこで、これからは地域で働く人たちや事業所、小・中学生・高校生、大学生など「地域にかかわる人たち」をもっと共助の仕組みのなかに取り込んでいく必要があります。

※ 古くからある地域の互助として、河川から集落を守る「輪中」や茅葺き屋根の修繕を村総出で行う「結い」などがある

現在の共助の姿 変わる防災の担い手

 近年、地域の人たちのだけの活動ではなく、地域の外からいろいろな形でかかわりを持つ人たちが入り、多様な助け合いの輪が広がっています。例えば、ボランティア、大学生のグループや企業が地域の人たちと一緒に活動する。災害時の義援金、共同募金や社会福祉活動もそうです。災害が多発する時代で支え合わないといけないという市民意識、助け合いの文化が広がってきていることのあらわれでしょう。また、専門的な技術や技能を持つ人たち、例えば耐震補強や家具転倒防止が得意な人たちが、地域で一緒に活動する。
 このように、ボランタリーな人たちと地域の活動が重なりあい、そこに専門性が入る新しいスタイルの活動が生まれてきています。この広くなった「共助の輪」をどう作り直していくかが重要です。

室●(山へんに竒)益輝さん

関西学院大学総合政策学部教授
室﨑 益輝
むろさき よしてる
1944年兵庫県に生まれ。67年京都大学工学部建築学科卒業。71年同大学大学院工学研究科博士課程中退。京都大学助手、神戸大学工学部助教授、同大学工学部教授を経て、97年より同大学都市安全研究センター教授。現在、独立行政法人消防研究所理事長、関西学院大学総合政策学部教授を務める。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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