第1章 令和6年能登半島地震及びその被害の概要
第1節 令和6年能登半島地震の概要
(1)地震に関する概要
令和6年1月1日16時10分、石川県能登地方の深さ16km(暫定値)を震源とするマグニチュード7.6(暫定値)の地震(以下、本特集において「本地震」という。)が発生し、石川県の輪島市及び志賀町で震度7を観測したほか、北海道から九州地方にかけて震度6強から1を観測した。気象庁は、同日に、本地震及び令和2年12月以降の一連の地震活動について、名称を「令和6年能登半島地震」と定めた。
能登地方では令和2年12月から地震活動が活発になり、令和2年12月1日から令和5年12月31日までに、震度1以上を観測する地震が506回発生している(図表1-1)。また、令和5年5月5日には、能登半島沖の深さ12km(暫定値)でマグニチュード6.5(暫定値)の地震が発生し、石川県珠洲市で震度6強を観測し、石川県を中心に人的被害や建物被害が発生した。その後、時間の経過とともに地震の発生数は減少していた中で、令和6年1月1日に本地震が発生した(図表1-2)。
令和5年12月までの地震活動は、能登半島北東部の概ね 30 km四方の範囲であったが、1月1日の本地震直後から、北東-南西に延びる150km程度の範囲に広がっている(図表1-3)。この地震の震央周辺では、同日16時12分にマグニチュード5.7の地震(最大震度6弱)、16時18分にマグニチュード6.1の地震(最大震度5強)、6日23時20分にマグニチュード4.3の地震(最大震度6弱)、9日17時59分にマグニチュード6.1の地震(最大震度5弱)が発生するなど、現在(令和6年4月1日現在)もおおむね同様の範囲で地震が発生しており、1月1日16時から4月1日0時までの間に、最大震度1以上を観測した地震は 1,772 回発生している(図表1-4)。
地殻変動は、令和2年12月頃から観測されていたが、本地震の発生に伴って、国土地理院の電子基準点により、輪島2観測点で2.0m程度の南西方向への変動、1.3m程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に大きな地殻変動が見られた。また、新潟県などの日本海側だけでなく、関東地方や中部地方など広い範囲で北西から北向きの地殻変動が観測された。陸域観測技術衛星「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析によると、輪島市西部で最大4m程度の隆起、最大2m程度の西向きの変動が検出された(図表1-6)。この隆起は、能登半島北岸の広い範囲で海岸線が変化し、陸化として空中写真や現地調査によって確認された(図表1-7)。また、石川県、富山県、新潟県などの沿岸部を中心として幅広い地域で液状化現象による被害が確認された。
(2)津波に関する概要
本地震により石川県能登に対して大津波警報が、山形県から福井県及び兵庫県北部に対して津波警報が発表された(図表1-8)。金沢観測点(港湾局)で80cm、酒田観測点(気象庁)で0.8mなど、北海道から九州地方にかけての日本海沿岸を中心に津波を観測した(図表1-9)。そのほか、空中写真や現地観測から、能登半島等の広い地域で津波による浸水が認められた。また、現地調査により、石川県珠洲市や能登町で4m以上の津波の浸水高、新潟県上越市で5m以上の遡上高を確認した。