1-7 事業継続体制の構築
(1)中央省庁の業務継続体制の構築
中央省庁においては、これまで、首都直下地震等の発災時に首都中枢機能の継続性を確保する観点から、中央省庁ごとに業務継続計画を策定し、業務継続のための取組を進めてきた。平成26年3月には、「首都直下地震対策特別措置法」(平成25年法律第88号)に基づき「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」(以下「政府業務継続計画」という。)が閣議決定されたことを受け、中央省庁はこれまでの業務継続計画について見直しを行った。
内閣府においては、中央省庁の業務継続計画の策定を支援するため、平成19年6月にガイドラインを策定した。その後、近年の災害の激甚化・頻発化や社会情勢の変化などを踏まえて同ガイドラインの見直しを行っており、最近では令和4年4月に改定を行った。また、政府業務継続計画に基づき、中央省庁の業務継続計画の実効性について、有識者等による評価を行っており、これを受けて中央省庁は、必要に応じて業務継続計画の見直しや取組の改善等を行っている。
政府としては、このような取組を通じて、首都直下地震発生時においても業務を円滑に継続することができるよう、業務継続体制を構築していくこととしている。
(2)地方公共団体の業務継続体制の構築
地方公共団体は、災害発生時においても行政機能を確保し業務を継続しなければならない。このため、地方公共団体において業務継続計画を策定し、業務継続体制を構築しておくことは極めて重要である。地方公共団体における業務継続計画の策定状況は、都道府県においては平成28年4月時点で100%に達し、市区町村においても令和5年6月時点で100%に達した(図表1-7-1)。
内閣府では、「市町村のための業務継続計画作成ガイド」(平成27年5月策定)、「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」(令和5年5月改定)及び「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」(令和3年6月改定)を策定し、周知しているほか、地方公共団体における業務継続体制の構築や受援体制の構築を支援するため、内閣府・消防庁の連携により、市町村の担当職員を対象とした研修会・説明会を平成27年度から毎年度開催している。
(3)民間企業の事業継続体制の構築
大規模災害等が発生して企業の事業活動が停滞した場合、その影響は自社にとどまらず、サプライチェーンの途絶などにより、関係取引先や地域の経済社会、ひいては我が国全体に多大な影響を与えることとなる。そのため、大規模災害等の発生時における企業の事業活動の継続を図ることは、極めて重要である。
内閣府では、企業の事業継続計画(BCP)の策定を促進するため、平成17年にガイドラインを策定し、本ガイドラインに沿ったBCPの策定を推奨している。ガイドラインの内容は、社会情勢の変化等を踏まえて見直しを行ってきており、最近では、令和5年3月に改定版を公表した。また、企業における取組をより一層促進するため、BCP策定のポイントを分かりやすくまとめた簡易パンフレットや、参考となる取組事例集を作成・周知するなど、業界団体等と連携して事業継続に係る取組の普及を進めている。
内閣府では、BCPの策定率を始めとした民間企業の取組に関する実態調査を隔年度で継続して実施しており、「令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPを策定した企業は大企業76.4%(前回調査(令和3年度)では70.8%)、中堅企業45.5%(前回調査では40.2%)と、ともに増加しており、策定中を含めると大企業は85.6%、中堅企業は57.6%となっている(図表1-7-2)。
事業継続力強化に向けた企業向け簡易パンフレット等の発信
南海トラフ地震や首都直下地震など我が国の経済活動に甚大な影響をもたらす大規模災害の発生が切迫しているとされている。このような大規模災害が発生した場合、被害や影響は被災地に留まらず、全国に広がることが想定されている。特に、各産業はサプライチェーンを通じて相互依存関係にあり、1社の事業中断が、全国へと連鎖的に広がり、国内外の関連企業や産業全体に影響が波及することが懸念される。
こうした事業活動に及ぼす甚大な影響をできる限り回避するためには、これまで取組を進めてきた事業所の耐震化や安否確認、食料等の備蓄などに加え、事業継続計画の策定、仕入先の複数化、企業間や業種を超えた連携等の「事前の備え」が不可欠である。このため内閣府では、令和5年12月に、BCP策定の重要ポイント(※)として、重要業務の選定、目標復旧時間の設定、必要リソースの確保を明確化するなど、BCPの策定方法を分かりやすくまとめた簡易パンフレットを作成したほか、実際にBCPを策定している企業における取組やその効果などをまとめた取組事例集を作成した。
切迫する大規模地震を乗り越えるため、今後も、経済団体や業界団体と連携し、我が国における事業継続の取組を強化していく。