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令和6年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-3 防災訓練・防災教育の取組


1-3 防災訓練・防災教育の取組

災害発生時には、国の行政機関、地方公共団体、その他の公共機関等の防災関係機関が一体となって、住民と連携した適切な対応をとることが求められることから、平時より関係機関が連携した訓練等、防災への取組を行うことが重要である。このため、防災関係機関は「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)、防災基本計画、その他の各種規程等に基づき、災害発生時の応急対策に関する検証・確認と住民の防災意識の高揚を目的として、防災訓練を実施することとされている。

令和5年度は、防災訓練実施に当たっての基本方針や政府における総合防災訓練等について定めた「令和5年度総合防災訓練大綱」(令和5年5月30日中央防災会議決定)に基づき、以下のような各種訓練を実施した。

(1)「防災の日」総合防災訓練

令和5年9月1日の「防災の日」に、首都直下地震発生直後を想定した訓練を行った。まず、岸田内閣総理大臣を始めとする閣僚が徒歩で官邸に参集し、緊急災害対策本部会議の運営訓練を実施した。同会議では、神奈川県相模原市の本村市長とのテレビ会議を通じた被害状況や支援要請の把握、各閣僚からの被害・対応状況の報告、人命第一での対応方針の確認など、地方公共団体等と連携しながら、地震発生直後の応急対策の実施体制、手順確認等を行った。会議終了後には、岸田内閣総理大臣が記者会見を行い、NHK中継を通じて国民へ、家屋の倒壊や土砂災害の危険性が高まっており、命を守る行動をとることや、経済的・社会的混乱を最小限に抑えるため、食料や生活必需品の買いだめ、買い急ぎを控えていただくよう呼びかけを行った。また、併せて緊急災害対策本部の設置、災害緊急事態の布告などに必要な手続に係る訓練も実施した。

また、同日に相模原市を主会場とする九都県市合同防災訓練が行われ、岸田内閣総理大臣や関係閣僚等が現地調査訓練として参加した。岸田内閣総理大臣は、警察、消防、自衛隊などによる救出救助訓練の視察、マンホールトイレの設営訓練やバケツリレーによる消火訓練の体験等を行った。

政府本部運営訓練
政府本部運営訓練
出典:首相官邸ホームページ
九都県市合同防災訓練と連携した現地調査訓練
九都県市合同防災訓練と連携した現地調査訓練
出典:首相官邸ホームページ
(2)政府図上訓練

令和5年12月に首都直下地震を想定した緊急災害対策本部事務局運営訓練(内閣府(中央合同庁舎8号館))と緊急災害現地対策本部運営訓練(東京湾臨海部基幹的広域防災拠点(有明の丘地区))を連動させて実施した。本訓練においては、関係府省庁職員や東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の職員が参加し、訓練会場に参集した上で、実際の災害に近い状況を模擬した状況付与型訓練と、災害発生時に関係機関の連携を要する課題等について討議する討議型訓練を実施した。

地域ブロック毎の訓練では、被災が想定される道府県等と連携し、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、南海トラフ地震を想定した緊急災害現地対策本部運営訓練を実施した。令和5年11月に東北(仙台市)、北海道(札幌市)、同年12月に近畿(大阪市)において、現地に参集した上で、状況付与型訓練と討議型訓練を実施した。

なお、令和6年1月に実施予定であった九州(熊本市)、同年2月に実施予定であった四国(高松市)及び中部(名古屋市)の訓練は、令和6年能登半島地震への対応のため中止とした。

首都直下地震を想定した緊急災害対策本部事務局運営訓練
首都直下地震を想定した緊急災害対策本部事務局運営訓練
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定した緊急災害現地対策本部運営訓練(北海道)
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定した緊急災害現地対策本部運営訓練(北海道)
(3)防災教育の取組

全ての国民が災害から自らの命を守るためには、災害時に国民一人一人が適切な行動をとることができるようになることが極めて重要である。このため、こどもの頃から必要な防災知識や主体的な防災行動を身に付けることができるよう、実践的な防災教育を全国に展開していく必要がある。

政府においては令和4年3月に閣議決定された「第3次学校安全の推進に関する計画」に基づき、

  • 全国全ての学校で地域の災害リスクや正常性バイアス等の必要な知識を教える実践的な防災教育や避難訓練を実施できるよう、発達段階を考慮した防災教育の手引きを新たに作成し周知する
  • 学校現場で活用しやすい教材やデータ等を作成し、その普及を図るとともに、特に幼児期からの防災教育については、家庭に向けた情報伝達・啓発を行うためのひな形も含めて幼児向けの教材を作成し、保護者及び幼児に対する防災教育の充実を図る
  • 実践的な避難訓練の実施状況や見直しの状況を始めとする全国の学校の防災教育に関する実施内容を定期的かつ具体的に調査し、主要な指標を設定し、その状況を公表する

などの取組を進めている。

令和5年度は、文部科学省において、中学校、高等学校教員向けの防災教育の手引きを作成するとともに、内閣府においては、未就学児の防災教育の充実に向けた事例収集等を行った。

【コラム】
「知る・備える・行動する」で防災教育を効果的に実践する

兵庫県立大学 環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授 木村玲欧
(防災教育チャレンジプラン 実行委員会 委員長)


防災教育を効果的に実践するためには、「知る・備える・行動する」の3つの視点が重要だと言われている(注)。「知る」は、地震・津波・火山噴火などを科学的に理解したり、気象災害を過去の被害を踏まえて理解したりすることで、いわば「敵の姿を知る」ことである。「備える」は、災害時に発生する被害・影響や、救助や避難生活などの様々な課題を知り、過去の災害教訓をもとに自分の備えに生かすことである。「行動する」は、地図などを用いて地域で起こる災害を想定した上で、災害時の身の安全を確保する方法、被害を出さない対策、出てしまった被害を小さくする「自助」・「共助」のあり方について実践していくことである。

これらの3つの視点によって、全国各地で防災教育が実践されており、これらの実践のノウハウを共有するための機会もある。国民の防災意識の向上、災害に関する知識や経験等の共有を図るため、内閣府、防災推進国民会議及び防災推進協議会の共同主催により、平成28年度から「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)」が毎年開催されており、学校現場だけでなく、個人・地域・組織・行政・企業等における防災教育の様々な取組が紹介され、意見交換の場となっている。また、平成16年度から開始された「1.17防災未来賞『ぼうさい甲子園』」は、阪神・淡路大震災やその後の自然災害からの教訓を踏まえ、兵庫県、毎日新聞社、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(人と防災未来センター)が主催となった取組である。未来に向け安全で安心な社会をつくるため、児童生徒が学校や地域において、主体的に取り組む防災教育の先進的な活動を顕彰するもので、ホームページからその内容を知ることができる。

さらに、防災教育実践自体を1年間にわたって支援する動きもある。内閣府が推進する「防災教育チャレンジプラン」は、防災教育への意欲を持つ全国各地の団体・学校・個人などから、より充実した防災教育のプランを公募により選出し、1年間にわたって実践のための資金や知恵などの支援をするプログラムである。平成16年度にスタートし、毎年10~30団体、令和5年度までの20年間に約350団体の実践活動を支援している。21年目を迎える令和6年度は「新・防災教育チャレンジプラン」として再スタートし、時代に即した重点テーマとして、<1>「学校・地域連携」、<2>「デジタル等企業の技術を用いた防災教育」を設定し、実践団体の募集を行った。その結果、12団体を実践団体として選定した。今後、これらの団体による活動が全国の地域や学校での防災教育活動の推進の一助となることを期待している。これまでの実践内容や防災教育の知見は、先述の「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)」にて防災教育交流会というシンポジウム形式で共有したり、ホームページでも紹介している。

様々な機会を有効活用しながら、「知る・備える・行動する」防災教育によって、災害に対して「自助」・「共助」・「公助」の力を高めていくことが求められている。

「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2023」において実施された「2023年度防災教育交流フォーラム」
「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2023」において実施された「2023年度防災教育交流フォーラム」
出典:内閣府ホームページ(参照:https://www.bosai-study.net/cp2023/forum/report.html
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注:池田真幸・永田俊光・木村玲欧・李泰榮・永松伸吾(2021)全国で展開される防災教育教材の現状分析~学習指導要領との関係性を踏まえた今後の防災教育のあり方~, 地域安全学会論文集, No.39, pp.103-111.


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