令和5年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-8 産業界との連携


1-8 産業界との連携

(1)防災経済コンソーシアム

社会全体の災害リスクマネジメント力を向上させるため、民間事業者においても大規模な自然災害に対する事前の備えを充実していく必要性がある。このための事業者の意見交換・交流の場として、平成30年に「防災経済コンソーシアム」が設立された(図表1-8-1)。

図表1-8-1 「防災経済コンソーシアム」について
図表1-8-1 「防災経済コンソーシアム」について

この「防災経済コンソーシアム」では、それぞれの業界の特性に応じた創意工夫により、事業者の災害リスクマネジメント力向上のための普及・啓発を図る等の「防災経済行動原則」を策定しており、令和4年度は、17団体のメンバーが主に当該原則の理念をそれぞれの下部組織まで普及・啓発する活動を行った。具体的には、2回の事務部会を開催し、メンバー間の意見交換に加え、内閣府による防災に関する施策の紹介、有識者による講演等を実施した。

(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/consortium/index.html

(2)防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム

近年、激甚化・頻発化する災害に対して、より効果的・効率的に対応していくためには、地方公共団体等においてもデジタル技術を始めとする先進技術を積極的に活用していくことが重要である。一部の地方公共団体等では、既に先進技術の活用が進められ、災害対応において効果を発揮しているものの、先進技術に関する情報収集や技術導入の機会が限られていることから、導入が進んでいない地方公共団体等も多い。

このため、内閣府において、令和3年度に、災害対応に当たる地方公共団体等のニーズと民間企業等が持つ先進技術のマッチングや、地方公共団体等における先進技術の効果的な活用事例の横展開等を行う場として、「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム」(以下「防テクPF」という。)を設置した(図表1-8-2)。

図表1-8-2 防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム(防テクPF)の概要
図表1-8-2 防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム(防テクPF)の概要

これまでに、常設のウェブサイト(以下「マッチングサイト」という。)を運営するとともに、地方公共団体等と民間企業等が交流する場となるセミナー(以下「マッチングセミナー」という。)を開催している。

マッチングサイトは、令和3年7月から運用を開始しており、地方公共団体等は自団体が抱える防災上の課題やニーズを、民間企業等は自社が保有する防災に有用な技術を、それぞれ登録することができる。令和5年3月末現在、地方公共団体等は約270件、民間企業等は約800件がマッチングサイトに登録している(図表1-8-3)。

図表1-8-3 防テクPFマッチングサイトの概要
図表1-8-3 防テクPFマッチングサイトの概要

登録されたニーズや技術は、合致しそうな相手と自動的にマッチングされるほか、「平時」から「復旧・復興期」までの災害フェーズや、「風水害」「地震」等の災害種別、導入費用、導入実績など、条件を絞って自由に検索することもできる。また、登録団体は、有用な情報を持つ相手方に対して、マッチングサイトに登録されている連絡先から連絡を取ることが可能となっている。

(参照:https://www.bosaitech-pf.go.jp

マッチングセミナーは、令和4年度末までに計6回開催され、第1回から第3回については、防テクPFの事業概要の説明をはじめ、地方公共団体に実際に導入されている先進技術の事例紹介、災害対策に向けた地方公共団体独自の施策の紹介、民間企業等と地方公共団体が一対一で直接、自社の技術の紹介及び自団体の課題やニーズ等の相談ができる「個別相談会」を実施した。第4回以降については、第3回までの取組に加え、地方公共団体が運営している官民連携ネットワークと連携し、防災に関する官民連携の取組の紹介を実施した。

このほか、「防テクPFモデル自治体支援事業」を実施し、事業化に向けた意欲があるが、マッチングや事業化が進展していない自治体をモデルとして選定し、技術導入における課題や、マッチングに向けた課題の洗い出しや、その対応策の効果の検証などを行う支援を実施した。

これらの取組により、地方公共団体等が先進技術を知る機会の提供や、民間企業等による地方公共団体等への技術の紹介及び地方公共団体等による企業への課題の共有がなされ、新たな導入の契機となるなどしている。

【コラム】
自然災害に対する不動産のレジリエンスを定量化・可視化する認証制度を開発

近年我が国では、様々な自然災害が多発する傾向にある。自然災害に対する建物の被害を最小化し、災害後のレジリエンス(弾性力、回復力)を高め、人々の安全・安心に繋げることは、不動産に携わる者にとって重要な責務になっている。加えて、気候変動を巡る社会的な動きとしてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言等に沿った物理的リスクの把握と開示への必要性も高まるなど、年々ESGの観点からの対応も求められつつある。

しかし、我が国の特性を踏まえた不動産のレジリエンス性能を可視化する仕組みは存在していない。海外ではリスク評価ツールが存在するが、土地情報のみで判断し、高潮等の慢性リスクが強調されるなど、我が国の特性に必ずしも合っていない。なぜなら、我が国では台風等の急性リスクが課題であり、また、土地だけでなく、建物の頑強性や冗長性、災害発生時の即応性などの運営面も考慮すべきだからである。

そこで、一般財団法人・民間企業等7社が「不動産分野におけるレジリエンス検討委員会(D-ismプロジェクト)」を発足し、日本で初めて不動産のレジリエンスを定量化・可視化して認証を行う制度「ResReal(レジリアル)」を開発し、令和5年1月末から、まずは水害を対象とした認証を開始した。同認証では、土地に加えて建物や運営面も対象にし、その性能を数値化し5段階で評価する。これにより、より高いスコアを目指して対策を行うことが可能になる。また、スコアリングの評価項目は全て開示する予定であるため、レジリエンス向上に必要な指標を得ることも可能になる。

ResRealにより、不動産所有者はレジリエンス向上策の打ち出しやTCFD提言に沿った情報開示へ役立てることができる。また、ビル選びや自然災害に強い開発等の基準にすることも可能である。このようにResRealは、様々な「意思決定の判断基準」となり得ることから、不動産のレジリエンスへの意識が高まり、建物の被害を減少させ、延いては国民の安全・安心な生活に繋がることが期待される。また、環境性能やウェルネス性能に関する認証制度は既に整備されており、これらの認証を取得した不動産の経済価値は高いという分析結果が公表されている。今後、レジリエンス性能を有する不動産の経済価値の向上も明らかになることが期待される。

○認証ロゴマーク
○認証ロゴマーク

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