令和4年版 防災白書|第2部 第2章 1 災害一般共通事項


第2章 科学技術の研究

1 災害一般共通事項

(1)情報収集衛星による自然災害観測・監視技術

内閣官房内閣情報調査室においては、情報収集衛星を運用し、災害発生時に関係機関に対して情報収集衛星で撮像した被災地域の画像の提供を行ったほか、大規模災害等事態が発生した場合において必要と認められるときは、情報収集衛星により得られた画像情報に基づく加工処理画像を公開して、被災等の状況の早期把握等に貢献した。

(令和2年度決算額 81,106百万円の内数)

(2)総合科学技術・イノベーション会議による防災科学技術研究の推進

総合科学技術・イノベーション会議においては、第5期科学技術基本計画及び科学技術イノベーション総合戦略等に基づき、防災・減災機能強化のための科学技術研究、危機管理技術等の研究開発の推進を図った。

<1>戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

平成30年度に開始した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期の「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において、大規模災害時に国や市町村の意思決定の支援を行う情報システムを構築するための研究開発を推進しつつ、研究成果を試験的に令和2年7月豪雨といった実災害で活用し、事後検証を行うことで研究開発の有効性を検証した。

(令和2年度決算額 科学技術イノベーション創造推進費55,500百万円の内数)

<2>官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)

「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の「革新的建設・インフラ維持管理技術/革新的防災・減災技術領域」において、国、自治体に加え、民間の災害対応主体による事前の防災・減災対策や、発災後の応急対応等の充実に寄与する各省による技術開発や社会実装の取組を、AIなどを活用して推進した。

(令和2年度決算額 科学技術イノベーション創造推進費55,500百万円の内数)

(3)防災リモートセンシング技術の研究開発

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、防災・減災に向けた取組として、光や電波を用いて広範囲の大気状況や地表面の様子を瞬時に把握するリモートセンシング技術の高性能化及び高精細化を行った。

(4)耐災害ICTに関する研究成果の展開等

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」に参画し、他の研究機関及び企業等と連携して開発した防災チャットボットSOCDAの長期実証実験に取り組んだ他、接近時高速無線接続による通信途絶領域解消技術を搭載したシステムの導入を地方公共団体が決定し、構築を開始した。また、災害情報の収集と分析を行うDISAANA/D-SUMMを引き続き公開し、実証実験を継続した。

(5)グローバル環境計測技術の研究開発

国立研究開発法人情報通信研究機構においては、雲、降水等の大気海洋圏の高精度計測のために、光・電波センサー技術、解析・検証技術等の研究開発を行った。

(6)消防防災科学技術研究推進制度(競争的資金制度)の促進

消防庁においては、消防防災科学技術研究推進制度(競争的資金制度)により、火災等災害時において消防防災活動を行う消防機関等のニーズ等が反映された研究開発課題や、「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)等の政府方針に示された目標達成に資する研究開発課題に重点を置き、消防機関等が参画した産学官連携による研究開発を推進した。

(令和2年度決算額 120百万円)

(7)災害時の消防力・消防活動能力向上に係る研究開発

消防庁消防研究センターにおいては、南海トラフ地震・首都直下地震等の大規模地震や津波、水害、土砂災害などの自然災害に対し、ICT等の最新技術を活用し迅速で効果的な救急救助活動を行うため、ドローンなど上空からの画像情報を活用した救助活動計画の策定手法と、救助現場での安全なガレキ取除き手法、さらに、ドローンに搭載したレーザーによる情報収集手法、レーザーセンサーによる安全監視手法に関する研究開発を行った。

(令和2年度決算額 46百万円)

(8)災害対策のための消防ロボットの研究開発

消防庁消防研究センターにおいては、消防隊が現場に近づけない過酷な環境となる石油コンビナート火災・爆発災害対策のための消防ロボットシステムの研究開発を実施し、実戦配備型を平成30年度末に完成させ、令和元年度に消防本部への実証配備を開始した。令和2年度には、実証配備を引き続き進め、その結果を基に、訓練や実戦活用を通じた機能・システムの最適化、低コスト化、準天頂衛星などの新技術の導入等実戦配備型の改良を行うとともに、量産型の仕様を策定した。

(令和2年度決算額 71百万円)

(9)衛星等による自然災害観測・監視技術

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構においては、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)等を運用し、国内外の防災機関に大規模災害における被災地の観測画像の提供を行う等、災害状況の把握に貢献した。

(10)災害をリアルタイムで観測・予測するための研究開発

国立研究開発法人防災科学技術研究所においては、今後発生が懸念される首都直下地震を始めとする内陸部を震源とする地震、南海トラフや日本海溝等における海溝型巨大地震及びその余震、津波や火山災害による被害の軽減に向け、陸海の基盤的地震観測網等を活用した予測技術等の研究開発を行った。

(11)災害リスクの低減に向けた基盤的研究開発の推進

国立研究開発法人防災科学技術研究所においては、各種自然災害のハザード・リスク、現在のレジリエンスの状態を評価するとともに、各種災害情報を各セクター間で共有・利活用することで連携・協働し、予防力・対応力・回復力を総合的に強化する災害対策・技術について、社会実装を目指した研究開発を実施した。

(12)農作物、農業用施設等の災害防止等に関する研究

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構においては、耐冷性・耐寒性・耐湿性・高温耐性品種の育成や、作物の気象災害の防止技術に関する研究、農村地域の強靱化に資する防災・減災技術の開発に関する研究を行った。

(13)漁港・海岸及び漁村における防災技術の研究

国立研究開発法人水産研究・教育機構においては、漁村地域の防災・減災機能を強化するために、漁港施設・海岸保全施設の耐震・耐津波に関する研究を行った。

(14)船舶における防災技術の研究

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所においては、船舶の安全性向上や海難事故防止技術の開発のために、海難事故等の原因究明手法の深度化、防止技術及び適切な再発防止策の立案に関する研究等を行った。

(15)港湾・海岸及び空港における防災技術の研究

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所においては、既往の災害で顕在化した技術的な課題への取組を継続しつつ、沿岸域における災害の軽減と復旧に関する研究開発課題に取り組んだ。

(16)災害等緊急撮影に関する研究

国土地理院においては、関係機関の迅速な災害対応に資することを目的に、デジタル航空カメラや航空機SAR等を用いた、地震、水害、火山噴火等の被災状況の把握、迅速な情報提供を行うための手法の検討を行った。

(令和2年度決算額 145百万円)

(17)寒冷地における沿岸防災に関する研究

国立研究開発法人土木研究所においては、寒冷地における沿岸域の安全確保のため、流氷来襲地域における冬期の津波防災に関する研究及び沿岸施設の安全性向上に関する研究を行った。

(18)気象・水象に関する研究

気象庁においては、気象研究所を中心に気象業務に関する技術の基礎及びその応用に関する研究を推進した。特に気象観測・予報については、集中豪雨等の監視・予測技術に関する研究等を行った。また、地球温暖化対策に資するため、数値モデルの改良を行った。

(令和2年度決算額 966百万円)

(19)生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)に関する研究

環境省においては、環境研究総合推進費により、生態系を活用した防災・減災の評価・実施方法に関する研究を推進した。


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