令和4年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-8 事業継続体制の構築


1-8 事業継続体制の構築

(1)中央省庁の業務継続体制の構築

国の行政機関である中央省庁においては、これまで、首都直下地震等の発災時に首都中枢機能の継続性を確保する観点から、中央省庁ごとに業務継続計画を策定し、業務継続のための取組を進めてきた。平成26年3月には、「首都直下地震対策特別措置法(平成25年法律第88号)」に基づき「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」(以下「政府業務継続計画」という。)が閣議決定されたことを受け、中央省庁はこれまでの業務継続計画について見直しを行った。

内閣府においては、毎年度、政府業務継続計画に基づき、省庁業務継続計画の実効性向上のため、有識者等による評価や各省庁と連携した訓練等を行っており、これを受けて中央省庁は必要に応じ省庁業務継続計画の見直しや取組の改善等を行っている。

また内閣府では、省庁業務継続計画の取組や見直しの支援を目的として、平成28年4月に「中央省庁業務継続ガイドライン」(以下本項において「ガイドライン」という。)(第2版)を策定したところであるが、最近の社会情勢の変化や新たに判明した課題等に対応するため、ガイドラインの見直しを行い、令和4年4月にガイドライン(第3版)を策定した。

政府としては、このような取組を通じて、首都直下地震発生時においても業務を円滑に継続することができるよう、業務継続体制を構築していくこととしている。

(2)地方公共団体の業務継続体制の構築

地方公共団体は、災害発生時においても行政機能を確保し業務を継続しなければならない。このため、地方公共団体において業務継続計画を策定し、業務継続体制を構築しておくことは極めて重要である。地方公共団体における業務継続計画の策定状況は、都道府県で平成28年度に100%に達し、市町村では令和3年6月時点で前年比3%増となる約97%となっている(図表1-8-1)。

図表1-8-1 地方公共団体における業務継続計画の策定率
図表1-8-1 地方公共団体における業務継続計画の策定率

内閣府では、市町村に対して業務継続計画の策定を支援するため、小規模な市町村であっても業務継続計画を容易に策定できるよう、平成27年5月に「市町村のための業務継続計画作成ガイド」を策定したほか、過去の災害事例等を踏まえて、平成28年2月に「地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」を「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」として改訂し、地方公共団体に通知している。

また、大規模災害が発生した場合、被災した市町村が膨大な災害対応業務に単独で対応することは困難な状況となる。このため、業務継続体制を構築する上で、地方公共団体においては、業務継続計画とともに、国、地方公共団体、民間企業、ボランティア団体等からの支援を迅速・的確に受け入れて情報共有や各種調整等を行うための受援体制を整備する必要がある。内閣府では、専任の防災職員がいないなど防災体制面に不安を抱えている市町村においても、受援体制の整備について理解し、なるべく負担を少なく受援計画を作成できるよう、令和2年4月に「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」を策定し、令和3年6月に内容拡充の改訂を行った。

さらに、地方公共団体における業務継続体制の構築を支援するため、内閣府・消防庁共催で、市町村の担当職員を対象とした研修会を平成27年度から毎年開催している。 これらの取組を通じて、業務継続計画の策定のほか、策定した業務継続計画における重要6要素や受援体制の整備など、引き続き、総務省・消防庁とも連携し、地方公共団体における業務継続体制の構築を支援していく。

※重要6要素(出典:内閣府「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」)
〈1〉首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制、〈2〉本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定、〈3〉(職員が業務を遂行するための)電気・水・食料等の確保、〈4〉災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保、〈5〉重要な行政データのバックアップ、〈6〉非常時優先業務の整理
(3)民間企業の事業継続体制の構築状況

内閣府では、企業の事業継続計画(BCP)の策定を促進するため、平成17年に「事業継続ガイドライン」を策定し、平成25年には事業継続における平常時からのマネジメント(Business Continuity Management(BCM))の考え方を盛り込むなど、社会情勢の変化等を踏まえた改定を行ってきた。令和3年4月には改定版として「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」を公表し、その普及を進めるとともに、ガイドラインに沿ったBCPの策定を推奨している。

また、内閣府では、BCPの策定率を始めとした民間企業の取組に関する実態調査を隔年度おきに継続して実践しており、令和4年1月に実施した「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPを策定した企業は大企業70.8%(前回調査(令和2年1月)は68.4%)、中堅企業40.2%(前回調査は34.4%)と、ともに増加しており、策定中を含めると大企業は約85%、中堅企業は約52%となっている(図表1-8-2、図表1-8-3)。

図表1-8-2 大企業と中堅企業のBCP策定状況
図表1-8-2 大企業と中堅企業のBCP策定状況
図表1-8-3 企業調査(令和3年度)のアンケートの回収状況
図表1-8-3 企業調査(令和3年度)のアンケートの回収状況

また、BCPの策定割合以外の主な調査結果は以下のとおりである(図表1-8-4~図表1-8-6)。

図表1-8-4 【BCPを策定(予定)した最も大きなきっかけの回答状況】
図表1-8-4 【BCPを策定(予定)した最も大きなきっかけの回答状況】
図表1-8-5 【BCPの見直しについての回答状況】
図表1-8-5 【BCPの見直しについての回答状況】
図表1-8-6 【被災時にBCPが役に立ったかについての回答状況】
図表1-8-6 【被災時にBCPが役に立ったかについての回答状況】

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