第3節 地域の原子力防災体制の充実・強化
3-1 地域防災計画・避難計画の策定と支援
地方公共団体は、「災害対策基本法」に基づき地域防災計画(原子力災害対策編)(以下「地域防災計画」という。)を作成し、都道府県及び市町村が原子力災害対応においてとるべき基本的な対応を定めることとなっている。
現在、防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づき、原子力発電所から概ね30km圏内の関係地方公共団体により地域防災計画が策定されている(図表3-1-1)。地域防災計画は、内容の具体化や充実化が重要であり、避難計画や要配慮者対策の具体化等を進めるに当たって、自治体のみでは解決が困難な対策について、国が積極的に支援することとしている。
内閣府は、「地域防災計画の充実に向けた今後の対応」(平成25年9月原子力防災会議決定)に基づき、道府県や市町村が作成する地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化を支援するため、平成27年3月、原子力発電所の所在する地域ごとに課題を解決するためのワーキングチームとして「地域原子力防災協議会」(以下「協議会」という。)を設置し、その下に作業部会を置いた。各地域の作業部会では、避難計画の策定支援や広域調整、国の実動組織の支援等について検討し、国と関係地方公共団体が一体となって地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化に取り組んでいる(図表3-1-2)。
地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化が図られた地域については、避難計画を含む「緊急時対応」を取りまとめ、協議会において、それが原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的なものであることを確認している。また、内閣府は原子力防災会議の了承を求めるため、協議会における確認結果を原子力防災会議に報告することとしている。「緊急時対応」の確認を行った地域については、「緊急時対応」の具体化・充実化の支援及び緊急時対応の確認(Plan)に加え、協議会において確認した「緊急時対応」に基づき訓練を行い(Do)、訓練結果から反省点を抽出し(Check)、その反省点を踏まえて当該地域における「緊急時対応」の改善を図る(Action)というPDCAサイクルを導入し、継続的に地域の原子力防災体制の充実・強化を図っている。
各地域の「緊急時対応」について、令和2年度には、福井エリア地域原子力防災協議会(第5回)において「美浜地域の緊急時対応」が取りまとめられ、その内容が確認された(図表3-1-3)。
なお、福井エリアについては、敦賀、美浜、大飯、高浜の各地域に分科会を設置し、各地域に特化して具体的に解決すべき課題について検討することとしている。
(1)女川地域
女川地域については、令和2年3月に女川地域原子力防災協議会(第1回)において「女川地域の緊急時対応」を確認した。また、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下における防護措置の基本的な考え方等を踏まえ、同年6月の女川地域原子力防災協議会(第2回)において「女川地域の緊急時対応」を改定した。
女川地域原子力防災協議会(第1回)において確認した内容及び女川地域原子力防災協議会(第2回)において改訂した内容について、令和2年6月に原子力防災会議において報告及び了承がなされた。
(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kyougikai/02_onagawa.html)
(2)美浜地域
美浜地域については、福井エリア地域原子力防災協議会の下に設置された美浜地域分科会を平成30年12月から令和2年12月までの間に9回開催し、原子力災害が発生した際の緊急時における対応について検討を実施した。その後、令和3年1月5日に開催された福井エリア地域原子力防災協議会(第5回)において「美浜地域の緊急時対応」を取りまとめた。
(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kyougikai/02_fukui.html)
「美浜地域の緊急時対応」のポイントとしては、以下の4点が挙げられる。
<1>PAZ(発電所から概ね5km圏内、848人、350世帯)は、施設敷地緊急事態及び全面緊急事態で避難等を実施。30km圏外に避難先を確保。
<2>UPZ(発電所から概ね5~30km圏内、約28万人、約11万世帯)は、全面緊急事態で屋内退避を実施。緊急時モニタリングの結果、一定の放射線量以上の区域は一時移転等を実施。UPZ内の約28万人に対応できる避難先を確保。
<3>豪雪時における除雪計画、広報計画の調整等を目的とし、道路管理者、警察、気象台、利用者団体等から構成される情報連絡本部を各府県の国道事務所に設置、対応。
<4>半島部や中山間地域において、自然災害等により住民が孤立した場合は、漁港やヘリポート適地を活用し、海路や空路により一時移転等を実施。避難体制が整うまでは、放射線防護施設を含む屋内退避施設にて屋内退避を実施。
福井エリア地域原子力防災協議会(第5回)では、福井県、滋賀県及び岐阜県より、「原子力防災対策に終わりや完璧はない」との認識の下、関係市町等と連携して、その充実・強化を図る旨表明され、国は、今後も同協議会を通じて支援を行う旨、警察、消防、海上保安庁及び自衛隊の実動組織関係4省庁からは、不測の事態には、関係自治体からの要請により、必要な支援を行う旨表明した。また、関西電力株式会社は、福祉車両の確保、避難退域時検査の要員や機材の提供等、事業者として実施すべきことに確実に対応する旨表明した。以上により、福井県等の関係自治体、関係府省庁等の対応が具体的であるとともに、原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的であることを確認した。
また、令和3年1月8日に開催された原子力防災会議(第11回)において、福井エリア地域原子力防災協議会(第5回)における確認結果の報告及び了承がなされた。
(3)高浜地域及び大飯地域
高浜地域については平成27年12月に、大飯地域については平成29年10月に、福井エリア地域原子力防災協議会においてそれぞれ「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域の緊急時対応」を確認し、それぞれ平成27年12月、平成29年10月に、原子力防災会議においてその確認結果の報告及び了承がなされた。その後、「緊急時対応」の実効性の向上を図るため、平成30年8月に大飯発電所及び高浜発電所を対象として国の主導する原子力総合防災訓練を実施した。その上で、平成31年3月に取りまとめた「原子力総合防災訓練実施成果報告書」における訓練の教訓事項等及び新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下における防護措置の基本的な考え方等を踏まえ、「緊急時対応」のより一層の具体化・充実化を図るため、令和2年7月の福井エリア地域原子力防災協議会(第4回)において「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域の緊急時対応」を改定した。
(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kyougikai/02_fukui.html)
「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域の緊急時対応」の主な改定のポイントとしては、以下の4点が挙げられる。
<1>大飯発電所及び高浜発電所がともに被災した場合における対応の明確化
<2>府県外への避難に係る連携体制の強化
<3>広域的な避難経路確保体制の強化
<4>感染症等の流行下における各種防護措置の具体化
そのほか、一元的な交通規制を行うための調整の場を設置、避難退域時検査場所における渋滞緩和、避難行動要支援者等の避難における対応の強化などの点について改定した。
福井エリア地域原子力防災協議会(第4回)では、福井県、滋賀県及び岐阜県より、輸送手段の確保に向けた取組、半島部や中山間部が孤立した場合の対応、新型コロナウイルスのような感染症が流行した場合の避難先の確保について表明された。国は、高浜地域及び大飯地域の緊急時の対応については、今後も福井エリア地域原子力防災協議会を通じて、訓練の実施、その結果を踏まえたより一層の具体化・充実化を関係自治体と政府が一体となって行っていく旨を表明した。以上により、今回の改定は、平成30年原子力防災訓練の教訓事項等を踏まえ、「緊急時対応」のより一層の具体化・充実化を図ったものであることを確認した。
(4)泊地域及び伊方地域
新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下における防護措置の基本的な考え方等を踏まえ、令和2年12月の泊地域原子力防災協議会(第3回)及び伊方地域原子力防災協議会(第4回)において、それぞれ「泊地域の緊急時対応」及び「伊方地域の緊急時対応」を改定した。
(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kyougikai/02_tomari.html
https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/kyougikai/02_ikata.html)