1-7 事業継続体制の構築
(1)中央省庁の業務継続体制の構築
国の行政機関である中央省庁においては、平成26年3月に「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」が閣議決定されたことを受け、本計画に基づき、省庁業務継続計画について適宜見直しを行っている。内閣府においては、本計画に基づき、省庁業務継続計画について有識者等による評価や各省庁と連携した訓練等により実効性の向上に毎年度取り組んでおり、首都直下地震発生時においても政府として業務を円滑に継続することができるよう、業務継続体制を構築していくこととしている。
(2)地方公共団体の業務継続体制の構築
地方公共団体は、災害発生時においても行政機能を確保し業務を継続しなければならない。このため、地方公共団体において業務継続計画を策定し、業務継続体制を構築しておくことは極めて重要である。地方公共団体における業務継続計画の策定状況は、都道府県で平成28年度に100%に達し、市町村では令和2年6月時点で前年比4%増となる約94%となっている(図表1-7-1)。
内閣府では、市町村に対して業務継続計画の策定を支援するため、小規模な市町村であっても業務継続計画を容易に策定できるよう、平成27年5月に「市町村のための業務継続計画作成ガイド」を策定したほか、過去の災害事例等を踏まえて、平成28年2月に「地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」を「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」として改訂し、地方公共団体に通知している。
また、大規模災害が発生した場合、被災した市町村が膨大な災害対応業務に単独で対応することは困難な状況となる。このため、業務継続体制を構築する上で、地方公共団体においては、業務継続計画とともに、国、地方公共団体、民間企業、ボランティア団体等からの支援を迅速・的確に受入れて情報共有や各種調整等を行うための受援体制を整備する必要がある。内閣府では、専任の防災職員がいないなど防災体制面に不安を抱えている市町村においても、受援体制の整備について理解し、なるべく負担を少なく受援計画を作成できるよう、令和2年4月に「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」を策定した。
さらに、地方公共団体における業務継続体制の構築を支援するため、内閣府・消防庁共催で、市町村の担当職員を対象とした研修会を平成27年度から毎年開催している。
これらの取組を通じて、業務継続計画の策定のほか、策定した業務継続計画における重要6要素※の充実や受援体制の整備など、引き続き、総務省・消防庁とも連携し、地方公共団体における業務継続体制の構築を支援していく。
<1>首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制、<2>本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定、<3>(職員が業務を遂行するための)電気・水・食料等の確保、<4>災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保、<5>重要な行政データのバックアップ、<6>非常時優先業務の整理
(3)民間企業の事業継続体制の構築状況
平成23年に東日本大震災が発生し、平常時の経営戦略に組み込まれる事業継続マネジメント(Business Continuity Management(以下「BCM」という。))の重要性が明らかとなった。このため、内閣府は、平成25年にBCMの考え方を盛り込んだ改訂版としての「事業継続ガイドライン第三版-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」を公表し、現在はその普及と、ガイドライン第三版に沿った事業継続ガイドラインの策定を推奨している。
内閣府では、BCPの策定割合を始めとした民間企業の取組に関する実態調査を隔年度おきに継続調査しており、令和2年2月に実施した「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の調査結果は、BCPを策定した企業は大企業68.4%(前回調査は64.0%)、中堅企業34.4%(前回調査は31.8%)とともに増加しており、策定中を含めると大企業は約83%、中堅企業は約53%が取り組んでいる(図表1-7-2、図表1-7-3)。
また、内閣府は、「新型コロナ禍における企業の対応事例と課題抽出調査」を令和3年1月から2月に実施した。主な調査結果は以下のとおりである(図表1-7-4~図表1-7-9)。