2-5 指定緊急避難場所と指定避難所の確保
「指定緊急避難場所」は、津波、洪水等による危険が切迫した状況において、住民等の生命の安全の確保を目的として住民等が緊急に避難する施設又は場所を位置付けるものであり、「指定避難所」は、避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設となっている。
東日本大震災時においては、避難場所と避難所が必ずしも明確に区別されておらず、そのことが被害拡大の一因ともなった。そのため、内閣府は平成25年に災害対策基本法を改正し、市町村長は指定緊急避難場所及び指定避難所を区別してあらかじめ指定し、その内容を住民に周知(公示)しなければならないこととした。平成30年4月1日現在の指定緊急避難場所の指定状況は図表2-5-1の通りとなっている。
内閣府は、消防庁とともに、地方公共団体に対して指定緊急避難場所の速やかな指定等を促しているところである。また、災害の種類ごとに指定緊急避難場所を指定することとなっているため、避難者が明確に判断できるよう、「災害種別避難誘導標識システム(JIS Z 9098)(平成28年3月制定)」による案内板等の整備(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/zukigo/index.html)について、早急に着手するように全国の地方公共団体に呼びかけている(図表2-5-2)。
また、災害対策基本法第49条の7に基づく指定避難所の指定状況については、指定制度が創設された平成26年4月以降、指定を終えていない市町村(特別区を含む。)に対し、速やかに指定を終えるように促していることもあり、平成26年10月1日現在には48,014箇所であったが、平成30年10月1日現在には75,895箇所に増加した。福祉避難所については、同年10月1日現在、福祉避難所として指定している施設は8,064箇所であったが、協定を締結するなど確保している施設も含めると、福祉避難所として確保している施設は22,579箇所であった。
近年の災害における状況等を受け、避難所の生活環境の確保に関する様々な問題や、避難所のトイレの改善に関する課題などが指摘された。災害時に避難所において不自由な生活を強いられる状況下においても、生活の質を向上させ、良好な生活環境の確保を図ることが重要と考えられる。このため、内閣府では、市町村における避難所や福祉避難所の指定の推進、避難所のトイレの改善、要配慮者への支援体制や相談対応の整備等に係る課題について幅広く検討し、必要な対策を講じていくため、平成27年7月以降「避難所の確保と質の向上に関する検討会」を開催し、検討を重ねてきた。
本検討会での議論を踏まえ、平成28年4月に「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(平成25年8月内閣府策定・公表)」の一部改訂を行うとともに、本取組指針に基づき、「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」の3つのガイドラインを公表した(図表2-5-3)。
また、避難所運営ガイドライン等を補完するものとして、平成29年度に「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」、平成30年度に「指定避難所等における良好な生活環境を確保するための推進策検討調査報告書」を作成して公表した(図表2-5-3)。
(参照:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/index.html)