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平成30年版 防災白書|第1部 第2章 第3節 3-1 地域防災計画・避難計画の策定と支援


第3節 地域の原子力防災体制の充実・強化

3-1 地域防災計画・避難計画の策定と支援

地方公共団体は、災害対策基本法に基づき地域防災計画(原子力災害対策編)(以下、「地域防災計画」という。)を作成し、都道府県及び市町村が原子力災害対応においてとるべき基本的な対応を定めることとなっている。

現在、防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づき、原子力発電所から概ね30km圏内の関係地方公共団体により地域防災計画が策定されている(図表3-1-1)。地域防災計画は、内容の具体性や実効性が重要であり、避難計画や要配慮者対策の具体化等を進めるに当たって、自治体のみでは解決が困難な対策について、国が積極的に支援することとしている。

図表3-1-1 地域防災計画・避難計画の策定状況(平成30年3月31日現在)
図表3-1-1 地域防災計画・避難計画の策定状況(平成30年3月31日現在)

内閣府は、「地域防災計画の充実に向けた今後の対応」(平成25年9月原子力防災会議決定)に基づき、道府県や市町村が作成する地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化を支援するため、平成27年3月、原子力発電所の所在する地域ごとに課題を解決するためのワーキングチームとして「地域原子力防災協議会」(以下、「協議会」という。)を設置し、その下に作業部会を置いた。各地域の作業部会では、避難計画の策定支援や広域調整、国の実動組織の支援等について検討し、国と関係地方公共団体が一体となって地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化に取り組んでいる(図表3-1-2)。

地域防災計画及び避難計画の具体化・充実化が図られた地域については、避難計画を含む緊急時対応をとりまとめ、協議会において、それが原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的なものであることを確認している。また、内閣府は原子力防災会議の了承を求めるため、協議会における確認結果を原子力防災会議に報告することとしている。緊急時対応の確認を行った地域については、緊急時対応の具体化・充実化の支援及び緊急時対応の確認(Plan)に加え、協議会において確認した緊急時対応に基づき訓練を行い(Do)、訓練結果から反省点を抽出し(Check)、その反省点を踏まえて当該地域における緊急時対応の改善を図る(Action)というPDCAサイクルを導入し、継続的に地域の原子力防災体制の充実・強化を図っている。

図表3-1-2 地域防災計画・避難計画の策定と支援体制
図表3-1-2 地域防災計画・避難計画の策定と支援体制

各地域の緊急時対応について、平成29年度には、福井エリア地域原子力防災協議会(第3回)において「大飯地域の緊急時対応」が確認され、原子力防災会議でその確認結果が了承された(図表3-1-3)。また、それに先立ち、同協議会(第2回)において「高浜地域の緊急時対応」が改定された。さらに、泊地域原子力防災協議会において「泊地域の緊急時対応」が、川内地域原子力防災協議会において「川内地域の緊急時対応」が改定された(図表3-1-4)。

図表3-1-3 平成29年度原子力防災会議で緊急時対応を了承した地域の一覧
図表3-1-3 平成29年度原子力防災会議で緊急時対応を了承した地域の一覧
図表3-1-4 「緊急時対応」の取りまとめ状況
図表3-1-4 「緊急時対応」の取りまとめ状況

福井エリアについては、敦賀、美浜、大飯、高浜の各地域に分科会を設置し、各地域に特化して具体的に解決すべき課題について検討することとしている。

(1)大飯地域

大飯地域については、福井エリア地域原子力防災協議会作業部会の下に大飯地域分科会を設置し、平成28年1月から平成29年9月までの間に14回開催し、原子力災害が発生した際の緊急時における対応について検討を実施した。平成29年10月25日に開催された福井エリア地域原子力防災協議会において「大飯地域の緊急時対応」をとりまとめた。(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/keikaku/02_fukui.html

  • 「大飯地域の緊急時対応」のポイントとしては、以下の3点が挙げられる。
  • <1> 半島部や中山間地域において、自然災害等により住民が孤立した場合は、ヘリポート適地や漁港を活用し、空路や海路により一時移転等を実施。避難体制が整うまでは、放射線防護施設を含む屋内退避施設にて屋内退避を実施。
  • <2> PAZ(Precautionary Action Zone:予防的防護措置を準備する区域、発電所から概ね5km圏内、人口約1千人)は、全面緊急事態で即時避難を実施。福井県内2市に加え、県内避難が出来ない場合に備えて兵庫県内2市にも避難先を確保。無理に避難すると健康リスクが高まる要支援者のために放射線防護施設3施設をPAZ内に整備。
  • <3> UPZ(Urgent Protective Action Planning Zone:緊急防護措置を準備する区域、発電所から概ね5~30km圏内、人口約15万8千人)は、全面緊急事態で屋内退避を実施。緊急時モニタリングの結果、一定の放射線量率を超える区域は一週間程度内に一時移転等を実施。府県内14市町に加え、府県内避難ができない場合に備えて、府県外37市町に避難先を確保。

また、「大飯地域の緊急時対応」の策定に当たっては、平成28年8月に高浜地域を対象として、国、関係自治体等が合同で実施した訓練での教訓事項等も踏まえて策定した。(高浜地域を対象として、国、関係自治体等が合同で実施した訓練の詳細については後述の「高浜地域の緊急時対応」の主な改定のポイントを参照。)

福井エリア地域原子力防災協議会(第3回)では、福井県、京都府及び滋賀県より、広域的訓練の実施により継続的な充実・強化を図る旨表明され、国は、今後も同協議会を通じて支援を行う旨、警察、消防、海上保安庁及び自衛隊の実動組織関係4省庁からは、不測の事態には、関係自治体からの要請により、必要な支援を行う旨表明した。また、関西電力株式会社は、福祉車両の確保、避難退域時検査の要員や機材の提供等、事業者として実施すべきことに確実に対応する旨表明した。以上により、福井県、京都府、滋賀県等の関係自治体、関係府省庁等の対応が具体的であるとともに、原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的であることを確認した。

(2)高浜地域

高浜地域については、平成27年12月に福井エリア地域原子力防災協議会において「高浜地域の緊急時対応」を確認し、同月に原子力防災会議においてその確認結果の報告及び了承がなされた。その後、この緊急時対応の実効性の検証を目的として、平成28年8月に国、関係自治体等が合同で訓練を実施した。その上で、平成29年2月にとりまとめた訓練実施成果報告書における訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図るため、同年10月25日の福井エリア地域原子力防災協議会において「高浜地域の緊急時対応」を改定した。(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/keikaku/02_fukui.html

  • 「高浜地域の緊急時対応」の主な改定のポイントとしては、以下の5点が挙げられる。
  • <1> 地震などの複合災害により家屋にて屋内退避が困難となる場合の対応に係る考え方の具体化
  • <2> 観光客等一時滞在者に対する情報伝達の方法及びタイミングの具体化(警戒事態の段階での一時滞在者に対する帰宅の呼びかけ)
  • <3> 自然災害等により半島等が孤立した場合の、放射線防護施設以外の屋内退避施設の活用
  • <4> UPZ内での一時移転等における福祉車両等の確保策の具体化
  • <5> 暴風雪や大雪時などにおける防護措置の具体化

そのほか、住民が屋内退避するための放射線防護施設の充実(5施設を新たに整備)、渋滞対策・避難状況把握のための対策の強化(ヘリによる映像配信を活用した誘導)などについて改定した。

福井エリア地域原子力防災協議会(第2回)では、福井県、京都府及び滋賀県より「防災対策に終わりなし」との認識の下、緊急時対応の改定を踏まえた府県の広域避難計画の修正や訓練の積み重ねにより、継続的な充実強化を図る旨表明され、国は、今後も福井エリア地域原子力防災協議会を通じて支援を行うとともに、警察、消防、海上保安庁及び自衛隊の実動組織関係4省庁は、不測の事態には、関係自治体からの要請により、必要な支援を行う旨確認した。また、関西電力株式会社は、福祉車両の確保、避難退域時検査の要員や機材の提供等、事業者として実施すべきことに確実に対応する旨表明した。以上により、平成28年度に、国、関係自治体等が合同で実施した訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図ったものであることを確認した。

(3)泊地域

泊地域については、平成28年9月に泊地域原子力防災協議会において「泊地域の緊急時対応」を確認し、同年10月に原子力防災会議においてその確認結果の報告及び了承がなされた。その後、この緊急時対応の実効性の検証を目的として、平成28年11月及び平成29年2月に国の原子力総合防災訓練を実施した。その上で平成29年5月にとりまとめた「原子力総合防災訓練実施成果報告書」における訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図るため、同年12月21日の泊地域原子力防災協議会において「泊地域の緊急時対応」を改定した。(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/keikaku/02_tomari.html

  • 「泊地域の緊急時対応」の主な改定のポイントとしては、訓練を踏まえたものとして、以下の4点が挙げられる。
  • <1> 津波との複合災害時における防護措置の明確化(津波警報等の発表時には津波に対する避難行動を優先)
  • <2> 地震などの複合災害により家屋にて屋内退避が困難となる場合の対応に係る考え方の具体化
  • <3> バス避難時における避難誘導の円滑化
  • <4> 住民を安全かつ円滑に避難させるための情報共有

そのほか、UPZ内における福祉車両の確保や緊急時モニタリング体制の強化などについて改定した。

泊地域原子力防災協議会では、北海道より「原子力防災体制の整備に終わりはない」との認識の下、関係町村や防災関係機関等と連携して、その充実・強化に努める旨が表明され、国は、泊地域の緊急時の対応については、今後も泊地域原子力防災協議会を通じて、訓練の実施、その結果を踏まえたより一層の具体化・充実化を関係自治体と政府が一体となって行っていく旨を表明した。以上により、平成28年度原子力総合防災訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図ったものであることを確認した。

(4)川内地域

川内地域については、平成26年9月に川内地域ワーキングチーム(特別会合)において「川内地域の緊急時対応」を確認し、同年9月に原子力防災会議においてその確認結果の報告及び了承がなされた。その後、鹿児島県がこれまでに実施した原子力防災訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図るため、平成30年3月26日の川内地域原子力防災協議会において「川内地域の緊急時対応」を改定した。(参照:https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/keikaku/02_sendai.html

  • 「川内地域の緊急時対応」の主な改定のポイントとしては、以下の5点が挙げられる。
  • <1> 地震などの複合災害により家屋にて屋内退避が困難となる場合の対応に係る考え方の具体化
  • <2> 台風との複合災害時における防護措置の明確化(暴風警報等の発表時には無理に避難せず屋内退避を優先)
  • <3> 観光客等一時滞在者に対する情報伝達の方法及びタイミングの具体化(警戒事態の段階での一時滞在者に対する帰宅の呼びかけ)
  • <4> UPZ内に位置する自治体の主な避難経路等の明確化
  • <5> 避難経路沿いに避難退域時検査場所候補地を明記

そのほか、避難経路の複数化や、住民が屋内退避するための放射線防護施設の充実(9施設を新たに整備)、離島(甑島)の島外避難等防護措置の明確化などについて改定した。

川内地域原子力防災協議会では、鹿児島県より、県民の安心・安全を確保する観点から、避難計画や防災訓練の不断の見直しを行い、引き続き関係町村や防災関係機関等と連携して、防災対策の充実・強化に努める旨が表明された。続いて、国は、川内地域の緊急時の対応については、今後も川内地域原子力防災協議会を通じて、訓練の実施、その結果を踏まえたより一層の具体化・充実化を関係自治体と政府が一体となって行っていく旨を表明した。以上により、鹿児島県原子力防災訓練の教訓事項等を踏まえ、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図ったものであることを確認した。


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