平成28年版 防災白書|第2部 第2章 2 地震災害対策


2 地震災害対策

2-1 地震に関する調査研究

(1)地震調査研究推進本部

政府の地震調査研究を一元的に推進する地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣。以下「地震本部」という。)は、「新たな地震調査研究の推進について―地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策―」(平成24年9月改訂)等の方針に基づき、地震調査研究を推進した。文部科学省においては、地震本部の方針等に基づき、活断層調査の総合的推進などを行った。

(平成26年度決算額 1,532百万円)

(2)地震・津波観測監視システム

文部科学省においては、南海トラフの地震の想定震源域において、地震・津波の発生メカニズムの解明や、地震・津波に関する正確かつ迅速な情報の提供等を目的として、狙いを定めた稠密な観測が可能な海底ネットワークシステムを整備・運用した。なお、紀伊半島沖のシステムについてはすでに運用を開始しており、平成27年度中に紀伊水道沖のシステムを含めた全体の運用を開始する予定である(後掲 第2章3-1(1))。

(平成26年度決算額 247百万円)

(3)日本海溝海底地震津波観測網の整備

文部科学省においては、北海道沖から房総沖までの日本海溝沿いにおいて、地震・津波の発生メカニズムの解明や、地震・津波に関する正確かつ迅速な情報の提供等を目的として、広域かつ稠密に整備できるケーブル式観測網(地震計・水圧計)を平成27年度からの運用開始を目指して整備した(後掲 第2章3-1(2))。

(平成26年度決算額 1,826百万円)

(4)地震の発生及びその災害誘因の予測に関する基礎的研究の推進

文部科学省においては、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について(建議)」(平成26~30年度)に基づき、国立大学法人等における地震発生や活動予測及び、地震の発生よって災害をもたらす津波や強震動など(災害誘因)の予測に関する基礎的研究を推進した。

(5)地球内部ダイナミクス研究

独立行政法人海洋研究開発機構においては、地震・火山活動の原因、島弧・大陸地殻の進化、地球環境変遷等についての知見を蓄積するため、地球表層から地球中心核に至る固体地球の諸現象について、その動的挙動(ダイナミクス)に関する研究を行い、大陸生成の新しい仮説を提唱した。

(平成26年度決算額 運営費交付金 33,512百万円の内数)

(6)海底地震総合観測システム等の運用

独立行政法人海洋研究開発機構においては、釧路・十勝沖、室戸岬沖に設置した海底地震総合観測システム並びに相模湾初島沖に設置した深海底総合観測ステーションの運用及び観測研究を行った。

(平成26年度決算額 運営費交付金 33,512百万円の内数)

(7)深海地球ドリリング計画推進

独立行政法人海洋研究開発機構においては、南海トラフ地震発生帯掘削計画の技術的課題や掘削計画の妥当性について検討を行い、今後の計画推進の方針について結論を得た。また、予定していた長期孔内観測装置の設置については、日印協力に基づく業務の受託に伴い計画を変更し、平成27年度以降実施する予定である。

(平成26年度決算額 運営費交付金 33,512百万円の内数)

(8)地震防災研究戦略プロジェクト

文部科学省においては、今後30年以内の地震発生確率が高い地域や、発生した際に甚大な被害が見込まれる地域を対象とし、地震被害の軽減を図るため、「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」や「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」等を実施した。

(平成26年度決算額 1,573百万円)

(9)活断層評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては、全国の主要活断層として陸域で6断層帯、海域2断層帯の合計8断層帯の分布形状や活動履歴に関する調査を行った。

(10)海溝型地震評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては、東南海・南海地震域において観測点の運用・整備を行い、地下水位(水圧)、地下水温、地殻歪(ひずみ)や地震波の測定を実施した。また、北海道、青森県、岩手県、千葉県、静岡県、三重県、和歌山県、高知県の各沿岸において津波堆積物調査を行い、津波履歴解明を目的とする研究を行った(後掲 第2章3-1(3))。

(11)地震災害予測の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては、石狩低地帯南部沿岸域の総合的な地質情報をとりまとめ、海陸シームレス地質情報集を出版した。

(12)地震予知研究の推進

地震予知連絡会(事務局:国土地理院)においては、全国の地震予知観測研究に関する情報交換と学術的見地での検討を行った。また、国土地理院においては、同連絡会に報告された観測データ等を地震予知連絡会会報として編集した。

(平成26年度決算額 8百万円)

(13)測地的方法による地殻変動調査

国土地理院においては、電子基準点等によるGNSS連続観測、人工衛星レーダーを用いたSAR干渉解析、潮位の連続観測、水準測量等により地殻変動の監視を行い、得られた地殻変動情報を災害対策の判断に資する資料として防災関係機関等へ提供した。

(平成26年度決算額 1,431百万円)

(14)地殻活動総合解析

国土地理院においては、GNSS等の地殻変動観測データ等各種データを総合解析して、地殻変動の詳細な分析を行い、地震調査委員会等に報告した。

(平成26年度決算額 2百万円)

(15)ひずみ集中帯の地殻変動特性に関する研究

国土地理院においては、新潟―神戸ひずみ集中帯の新潟県中部において、稠密地殻変動観測によりひずみ集中帯内部の地殻変動分布を把握し、数値シミュレーション等によるモデリングを通して、地殻の変形過程に関する知見を得て、内陸地震の長期予測に資する基礎データを提供した。

(平成26年度決算額 6百万円)

(16)地殻変動監視能力向上のための電子基準点誤差分析の高度化に関する研究

国土地理院においては、中長期的な地殻変動の監視において通常とは異なるシグナルが検出された際、今後推移を見守るべき変動かどうかの判断を下すための判断材料を提供するため、電子基準点観測データに含まれる誤差特性情報を総合的に分析するシステムを構築した。

(平成26年度決算額 7百万円)

(17)地震ハザードマップ作成のための土地の脆弱性情報の効率的整備に関する研究

国土地理院においては、前年度に体系化した地震ハザードマップ(液状化ハザードマップ、地震防災マップ)の作成に必要な土地の脆弱性情報(地形・地盤情報)の整備手法について、モデル地区において試作・検証を行い、効率的な手法を確立した。

(平成26年度決算額 11百万円)

(18)衛星干渉SARによる高度な地盤変動監視のための電離層補正技術に関する研究

国土地理院においては、前年度に試作したSAR電離層補正手法について、実際のSAR干渉解析を用いた補正効果の評価に基づき手法を改良し、安定的に電離層補正が可能な手法を構築した。

(平成26年度決算額 9百万円)

(19)広域地殻変動データに基づくプレート境界の固着とすべりのモニタリングシステムの開発

国土地理院においては、マイクロプレート運動と海底地殻変動データを取り入れる手法の開発と、そのために必要な入力データの作成及び陸域と海域のデータを統合解析するための装置を整備した。

(平成26年度決算額 15百万円)

(20)干渉SAR時系列解析による国土の地盤変動の時間的推移の面的検出に関する研究

国土地理院においては、数値気象モデルによる誤差低減処理技術の干渉SAR時系列解析への組み込みに着手した。また、干渉SAR時系列解析における植生の影響について調査を行った。

(平成26年度決算額 12百万円)

(21)GNSSによる地殻変動推定における時間分解能向上のための技術開発

国土地理院においては、GNSS解析技術を高度化し、GNSS時系列のばらつきを低減する技術の開発を行うとともに、地殻変動抽出技術について検討を行った。

(平成26年度決算額 6百万円)

(22)地震に関する調査研究

気象庁においては、気象研究所を中心に地震に関する研究を推進した。また、巨大地震の発生が想定される東海地域等における異常な地震活動・地殻変動現象の検知能力を向上させるため、監視技術及び地震発生シミュレーション技術の高度化に関する研究を行った。

(平成26年度決算額 30百万円)

(23)地震観測等

気象庁においては、全国における地震観測、地殻岩石ひずみ観測、地磁気観測を行った。また、関係機関の地震に関する基盤的調査観測網のデータを収集し、その成果を防災情報等に活用するとともに、地震調査研究推進本部地震調査委員会に提供した。(後掲 第3章2-3(20)3-3(5)

(平成26年度決算額 1,789百万円の内数)

(24)海底地殻変動観測等

海上保安庁においては、巨大地震の発生が懸念されるプレート境界域における地形・活断層調査、海底基準局を用いた海底地殻変動観測、DGPS及び験潮所による地殻変動監視観測、人工衛星レーザー測距観測を実施し、プレート運動の把握等を行った。

(平成26年度決算額 236百万円)


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