第5節 復旧・復興対策
5-1 被災者の住まいの確保策の検討
(1)被災者の住まいの確保の現状
被災者の住まいの確保については、現行制度においては、災害発生後、自宅が全壊した被災者は、避難所等における避難生活を経て、仮住まいとして既存公営住宅等の空室や応急仮設住宅に一時的に入居し、その後、個々の被災者において、自宅の再建・購入、民間賃貸住宅、災害公営住宅等への入居等により必要な住宅を確保することとなる。
また、自宅が半壊した被災者については、災害救助法に基づく住宅の応急修理制度を利用することにより、応急仮設住宅へ入居せずに自宅を補修して住み続けたり、さらに、避難所から二次避難所としての旅館・ホテルを経由し自宅を再建したり、新たに購入して住まいを確保するなど、住家被害の程度や被災者の状況に応じ様々な住まいの確保の仕方がある。
(2)被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会
東日本大震災においては、発災から間もない時期では、このような被災から恒久的な住まいの確保に至るまでの過程が被災者にとって不明確であったとの指摘がある。また、応急仮設住宅の目的が、災害救助法の応急的一時的な救助という制度本来の仕組みと乖離してきており、改めてそのあり方について検討する必要があるのではないか等の指摘がされている。
このため、内閣府では、東日本大震災での教訓等も踏まえ、被災者支援の課題や在り方について幅広く検討するため、平成25年10月に「被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会」を設置した。
本検討会では、被災者支援の在り方全般について審議が進められるとともに、災害時における効率的・効果的な住まいの確保策について専門家によるワーキンググループを設置した上で検討が行われ、平成26年8月に「中間とりまとめ」がとりまとめられた。
この「中間取りまとめ」では、災害時の住まいの確保策の検討について、
- 応急仮設住宅の位置付けや「現物給付」の在り方
- 資力要件や他の施策(低所得者対策等)とのバランス
- 恒久住宅への移行の在り方
- 住宅の応急修理の在り方
など、根本的かつ広範な内容を対象としており、被災者に与える影響も少なくないと考えられることから、今後、各界各層における幅広い議論を喚起し、法制度面を含めてさらなる検討を行うことにより、応急仮設住宅等の在り方を見直し、恒久住宅への円滑な移行に向けた「総合的な支援」を実施すべきであるとされた。
また、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念されることから、その際の膨大な応急住宅需要に対応するため、次の事項について早急に推進すべきであるとされた。
- 平常時における取組の充実
- 民間賃貸住宅の積極的な活用と災害の特性等に応じた供与方法の選択
- 民間事業者等との積極的な連携の推進
- 被災者の住まいの確保に関する相談・情報提供体制の構築
(3)被災者の住まいの確保に向けた取組の充実
これらの「早急に推進すべき」とされた事項について、平成27年3月に、大規模災害発生時及び大規模災害の発生に備えた平常時における取組に係る留意点等を全国の都道府県に対し通知するとともに、「被災者の住まいの確保に関する取組事例集」を作成し、周知した。
「被災者の住まいの確保に関する取組事例集」では、応急仮設住宅の供与や住宅の応急修理、恒久住宅への移行に向けた支援を円滑に進めるため、応急建設住宅に係る候補地の選定や関係団体との協定の締結などの事前準備、応急仮設住宅の供与方法や仕様等の基準、住宅の応急修理に係る具体的な運用、被災者に対する相談・情報提供体制の構築等について、東日本大震災以降に発生した災害における事例を紹介している。
また、民間賃貸住宅等の空き家・空室が存在する地域における比較的規模の小さい災害や、応急建設住宅のみでは対応できないような大規模災害の発生時には、応急借上げ住宅を積極的に活用することが考えられることから、賃貸住宅関連団体との協力により、応急借上げ住宅を活用する際に実務上必要と考えられる事項を行政担当者向けのガイドブックとしてまとめ、周知した(図表1-1-20)。