平成27年版 防災白書|特集 第3章 第4節 4-3 政府間の様々な防災協力


4-3 政府間の様々な防災協力

(1)防災体制に係る協力

<1> 内閣府と米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)との連携

内閣府は、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA:Federal Emergency Management Agency)のワシントン本部や訓練施設への訪問、ニューヨークにおけるFEMAの地方機関からのブリーフィング、APEC防災担当高級事務者フォーラムなどの機会を利用して、我が国の東日本大震災、米国のハリケーン・サンディ災害など日米の過去の災害経験や教訓、防災組織体制、人材育成・研修等について意見交換を行ってきた。

両機関の災害対策における協力を促進し、情報共有と知識交換の枠組の構築を目指すことを目的として、平成26年12月に内閣府とFEMAとの間で協力の覚書が署名された。さらに、平成27年1月の国際復興フォーラムにおいて、赤澤内閣府副大臣がFEMAジマーマン副長官と対談し、また、同年5月には山谷内閣府特命担当大臣(防災)がFEMAフューゲート長官と対談するなど、政策対話を図っている。

山谷大臣とFEMAフューゲート長官の対談の様子山谷大臣とFEMAフューゲート長官の対談の様子

<2> 日中韓防災担当閣僚級会合

平成20年の「第1回日中韓首脳会議」における「三国間防災協力に関する共同発表」に基づき、2年に1度、日中韓三か国が持ち回りで「防災担当閣僚級会合」を開催しており、平成21年に我が国で第1回会合を開始したのを皮切りに、第2回会合を平成23年に中国で、第3回会合を平成25年11月に韓国で開催した。

第3回会合においては、我が国からは、内閣府副大臣、中国からは民政部副部長、韓国からは消防防災庁長官が出席した。同会合では、内閣府副大臣から、三国間の災害に関する経験や知識の共有等の重要性等について発言するとともに、防災における技術と情報の共有、教育と訓練等の協力体制の強化を確認する共同声明がとりまとめられた。また、第3回国連防災世界会議の成功に向けて、両国の閣僚級の出席等、協力を依頼した。次回会合は平成27年に日本で開催される予定である。

また、本枠組の下、三国相互の支援提供・受入れ能力の向上のために、日中韓三国防災机上演習を実施している。第1回演習を韓国で実施した後、第2回演習は、平成26年3月に東京で実施し、日中韓各国政府の関係機関が参加し、東京で大規模地震が発生したとの想定シナリオの下で、三国間の効果的・効率的な支援・受援の方法について議論を行った。本演習を通じて、平時からの三国間での防災協力の推進や関係者間のネットワークの強化等の重要性が確認された。第3回演習は、平成27年4月に、中国・北京で実施し、中国で大規模な災害が発生したという想定の下、机上演習を行った。

<3> 国土交通省とEU防災総局との協力

平成25年3月の国土交通省とEU防災総局間の書簡の交換に基づき、双方の防災体制の充実を目的として、専門家・実務者による知識・経験に係る情報交換を実施している。情報交換の対象は、防災に係る統治システム、リスク評価・早期警戒・警報、応急対応、人材育成や啓発、大規模災害時の応急対応等、防災に係る幅広い分野をカバーしている。これまでに、2回の閣僚級会合及び3回の専門家・実務者による会合を開催するとともに、相互の防災訓練等への人員派遣等の交流を実施している。

<4> アジア国際消防防災フォーラムの開催

近年アジア諸国では、経済発展・都市化などが進み、消防防災体制の拡充の必要性が高まっている。消防庁では、そのアジア圏内各国を対象に、その国の消防防災能力の向上に資するため、我が国の消防技術・制度・体制等を広く紹介する国際消防防災フォーラムを平成19年度から開催している。平成26年度は、9月にカンボジア王国プノンペン市において本フォーラムを開催し、消防力の強化、消防職員の人材育成や火災予防制度等について情報共有や活発な意見交換を行うとともに、我が国の消防防災インフラシステムの海外展開を推進する取組の一つとして、日本の企業による消防製品の紹介・展示を行った。

(2)我が国の防災技術の海外展開の促進(防災協働対話)

国土交通省では、我が国の防災に関する優れた技術や知見を活かし、アジアを中心とする新興国等の防災機能の向上に寄与するとともに、我が国の防災技術の海外展開を図ることを目的として、両国の産官学が一体となった継続的な協力体制の構築を平成25年より実施している(現時点の対象国は、ベトナム、タイ、ミャンマー、インドネシア、トルコ、南アフリカ)。各国における現地調査や個別打合せ等によるニーズ把握、ワークショップ等による継続的な意見交換を踏まえ、パッケージ型のソリューションを提案することを目指している。

また、国内の産学官の連携・調整の強化のため、産学官が参画した「日本防災プラットフォーム(JBP:Japan Bosai Platform)」と連携しつつ活動を進めている。

(3)地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)

文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)及び外務省・JICAは、我が国の優れた科学技術とODAとの連携により、開発途上国における地球規模課題の解決につながる国際共同研究を推進するSATREPS(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)を実施しており、防災分野では15カ国との間で16件の共同研究を実施している。具体的には、チリにおいて同国政府機関等との協力の下、実施している「津波に強い地域づくり技術の向上に関する研究」では、津波被害予測手法・早期警報手法等の開発及び市民などに対する東日本大震災の教訓に基づく啓蒙活動等に取り組んでおり、平成26年4月にチリにおいて発生したマグニチュード8.2のイキケ沖地震に伴う津波の際には、住民の早期避難が実現している。さらに、平成26年7月の安倍総理のチリ訪問時には、研究を総括する独立行政法人港湾空港技術研究所とチリ国の関係5機関との間で、中南米全体を視野に入れた研究を推進するための覚書に署名した。

(4)開発途上国における森林の防災・減災機能に着目した森林管理の推進

農林水産省では、開発途上国において適用可能な森林の有する土壌保全機能や水源涵養機能等の効率的な評価手法を確立することにより、災害への強靱性の向上、安定的な水資源の確保等が図られるよう、国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)への拠出を通じたフィールド・プロジェクトを平成25年度より実施している。今回開発された評価手法を森林管理の現場に普及させるため、ネパール、ベトナム、メキシコの3カ国においてワークショップを開催した。

(5)原子力防災における国際協力:日中韓の原子力防災訓練への参加協力

日本、中国、韓国の原子力規制機関が、原子力安全に関する共通の課題や技術の向上のために有益な情報交換や意見交換等を行うため、「日中韓上級規制者会合(TRM:Top Regulators Meeting)」が設立された。TRMの取組の一環として、日本、中国、韓国が自国で原子力防災訓練を実施するときは、他の二国をオブザーバーとして招待し、訓練について意見交換を行うこととしており、平成26年11月に韓国の古里原子力発電所で実施された防災訓練に日本の原子力規制庁と中国の規制機関の担当者が参加した。また、緊急時に三国間で情報を共有する体制の構築も進めている。

(6)移動式ICTユニット(MDRU)を用いたITUとの共同プロジェクト

東日本大震災での教訓を踏まえて、総務省は、災害時に被災地へ搬入して通信を迅速に応急復旧させることが可能な通信設備「移動式ICTユニット(MDRU:Movable and Deployable ICT Resource Unit)」の研究開発を実施した。

平成26年度から、総務省は、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)及びフィリピン科学技術省と協力して、大規模な台風の被災地であるフィリピン・セブ島の市庁舎等にMDRUを設置して、無線LANのネットワークを利用した通話やデータ通信等を行う実証実験を実施している。

コラム:地方自治体による国際防災協力の取組~兵庫県の事例

兵庫県は、阪神・淡路大震災からの復興にあたり、単に震災前の状態に回復するだけではなく、21世紀の成熟社会を拓く「創造的復興」を目指した施策や事業を展開してきた。

その中で、震災時に海外から多くの支援をいただいたこともあり、震災の経験、教訓の内外への発信や地方自治体レベルの国際防災協力に重点的に取り組んでいる。

(人と防災未来センターの整備・運営)

震災の経験や教訓を内外に発信する拠点として、人と防災未来センターを国と協力して整備・運営しており、海外からも多くの来館者を受け入れている。同センターは震災資料の収集、保存、展示を行う震災博物館機能に加え、実践的な防災研究を行う調査研究機能、災害対策専門人材の育成・研修機能、災害時に現地支援を行うアドバイス機能を有しており、センターの研究員を国内外の被災地に派遣することにより、震災の経験と教訓を災害対策の現場に活かすなど、防災・減災に関する国際的な拠点となっている。

人と防災未来センター人と防災未来センター

(国際防災・人道支援拠点の形成)

国連人道問題調整事務所(OCHA)、国連国際防災戦略(ISDR)、世界保健機関(WHO)、国際復興支援プラットフォーム(IRP)、アジア防災センター(ADRC)、JICA等の国際防災関係機関を誘致し、人と防災未来センターを中心に国際防災・人道支援協議会(DRA:Disaster Reduction Alliance)を組織して連携強化を図っている。また、これらの国際防災関係機関と協力して、海外の被災地への復旧・復興の専門人材派遣や海外からの研修員受入れなどを実施しており、トルコ・ブルサ県に人と防災未来センターをモデルとした防災教育施設「ブルサ防災館」が整備されるなど、震災の教訓や復興の取組が広く海外で活用されている。

(被災経験に基づく国際防災協力)

トルコ地震(1999年)や台湾北部地震(1999年)、中国・四川大地震(2008年)などの被災地に災害対応の経験者を派遣したほか、フィリピンの台風災害(2013年)では、ほ乳瓶やおむつを提供するなど、震災を経験した自治体ならではの支援を行っている。また、県で募集した被災地への義援金を育英資金の給付や学校・病院再建など、被災地ニーズに合った特定の目的に使用する「義援金プロジェクト」を通じて海外被災地との交流を深めている。

(国連を通じた防災協力)

2005年に神戸に第2回国連防災世界会議を誘致し、国際的な防災指針として兵庫行動枠組(HFA)が採択された。2010年に始まった国連世界防災キャンペーン「災害に強い都市の構築」においては、兵庫県は世界で最初の「ロールモデル(模範都市)」に認定され、井戸知事も、災害リスク軽減の重要性の普及・推進等、顕著な活動を行っている指導者として、「チャンピオン(防災・減災リーダー)」に任命されている。第3回国連防災世界会議では、日本で唯一の「チャンピオン」として、阪神・淡路大震災から20年にわたる復興の取組から得た教訓を発信するとともに、新たな防災枠組に向けて、「創造的復興の推進」、「地方自治体による国際防災協力の推進」、「自治体レベルの防災力の強化」などの提言を行った。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.