平成27年版 防災白書|特集 第2章 第2節 2-3 成果文書について


2-3 成果文書について

3月18日の深夜、全体会合の成果文書採択セッションが行われ、起草委員会で直前にまとまった、「仙台防災枠組2015-2030」及び「仙台宣言」の草案が同委員会共同議長から報告され、山谷議長はこれらの文書を全体会合に諮り、両文書とも全会一致で採択された。

山谷議長は閉会挨拶において、会議参加者や会議の運営にあたった全ての者に感謝の意を表するとともに、「仙台防災枠組」の下、地方、国、地域、グローバルレベルで災害リスク削減の取組を強化していくこと、新たな開発アジェンダや気候変動枠組に防災の視点が取り込まれるよう働きかけていくことを表明した。また、自助・共助の取組促進についても言及し、日本では、11月5日は「津波防災の日」として制定されており、国際的な津波防災の日の制定が、世界中の防災意識向上に資する旨提案した。

また、ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)からは、今後15年間、仙台防災枠組を実施していくためには強力なコミットメントと政治的リーダーシップが必要と述べ、本会議の準備段階においてなされた88のコミットメントに加え、本会議を通じて、関係者によって新たに120の自発的コミットメントがなされたと述べた。

成果文書採択に向けた起草委員会の様子(1)成果文書採択に向けた起草委員会の様子(1)
成果文書採択に向けた起草委員会の様子(2)成果文書採択に向けた起草委員会の様子(2)
成果文書採択セッションの様子成果文書採択セッションの様子
閉会式の様子閉会式の様子
(1)仙台防災枠組2015-2030

「兵庫行動枠組(HFA)2005-2015」の後継枠組として、期待される成果と目標、指導原則、優先行動、関係者の役割や国際協力等を規定した「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。

仙台防災枠組は、期待される成果として、今後15年間において「人命・暮らし・健康と、個人・企業・コミュニティ・国の経済的・物理的・社会的・文化的・環境的資産に対する災害リスク及び損失を大幅に削減する」ことを掲げ、これを実現するために、「ハザードへの暴露と災害に対する脆弱性を予防・削減し、応急対応及び復旧への備えを強化し、もって強靱性を強化する、統合されかつ包摂的な、経済的・構造的・法律的・社会的・健康的・文化的・教育的・環境的・技術的・政治的・制度的な施策を通じて、新たな災害リスクを防止し、既存の災害リスクを削減する」ことをゴールとして追求することとしている。

これらの成果とゴールの達成に向けた取組の進捗状況の評価を促進するため、7つのグローバルターゲットが設定された。具体的には、2030年までに<1>死亡者数、<2>被災者数、<3>直接的経済損失、<4>重要インフラの損害を大幅に減少させること、2020年までに<5> 防災戦略採用国を、2030年までに<6> 開発途上国への国際協力、<7> 早期警戒及び災害リスク情報へのアクセスを、大幅に増加させることである。こうしたターゲットが設定されたことにより、本年秋に策定されるポスト2015年開発アジェンダへの防災の明確な位置づけにもつながることが期待される。

また、兵庫行動枠組(HFA)の5つの優先行動に代わるものとして、<1>災害リスクの理解、<2>災害リスクを管理する災害リスク・ガバナンスの強化、<3>強靱性のための災害リスク削減への投資、<4>効果的な災害対応への備えの向上と、復旧・復興過程における「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」の4つの優先行動が規定された。

さらに、様々な関係者(ステークホルダー)の参加や連携を促すための独立した章が設けられ、市民社会、学術・科学研究機関、民間企業、メディア等の果たすべき役割も規定されている。

総じてみると、仙台防災枠組には、我が国が本枠組策定の交渉段階から主張してきた、事前防災投資、より良い復興及び多様な主体の参画を得たガバナンスの重要性が十分に反映されており、かつ、兵庫行動枠組(HFA)の取組の課題であった、潜在的なリスク要因を削減するための取組が補強されており、評価できる内容となっている。

図表13 仙台防災枠組2015-2030 構成図表13 仙台防災枠組2015-2030 構成
(2)仙台宣言

仙台防災枠組の推進に向けて、各国の防災に対する政治的コミットメントを表明した、仙台宣言が採択された。

仙台宣言(仮訳)
  1. 我々、第3回国連防災世界会議に参加した首脳、閣僚及び代表団は、2015年3月 14日から18日の間、2011年3月の東日本大震災から力強い復興を遂げた日本の宮城県仙台市に集った。
    世界の多くの地域において増大する災害の影響とその複雑な問題を認識し、世界中で災害により失われる生命及び財産を減らすべく、我々は防災のための努力を強化する決意をここに宣言する。
  2. 我々は兵庫行動枠組 2005-2015:災害に強い国・コミュニティの構築が過去 10年間に果たした重要な役割を高く評価する。その実施を通じて得られた経験の評価とレビュー及び検討を踏まえ、ここに仙台防災枠組 2015-2030を採択する。我々は、今後の我々の努力を強化するための指針として、新枠組の実施に強くコミットする。
  3. 新枠組の実現は我々及び将来の世代のために数十年後の世界を災害のリスクからより安全なものにしようとする我々の不断の努力にかかっていることを心に留め、我々は全てのステークホルダーに対し行動を起こすことを求める。
  4. 我々は、第3回国連防災世界会議の開催について日本の人々、政府並びに仙台市に謝意を表明すると共に、グローバルな開発アジェンダの中で防災を推し進める日本のコミットメントに対し感謝する。
コラム:第3回国連防災世界会議における障害者に関する取組

日本政府は、仙台市、日本財団、国連ISDRとともに、第3回国連防災世界会議を「アクセシブル・カンファレンス(障害者も苦労することなく会議に参加できる会議)」とすることを目指して、様々な取組を行った。

具体的な取組としては、施設のバリアフリー化、各セッションにおける日本語及び国際手話通訳、スクリーンへの日本語と英語字幕の表示、福祉車両や福祉バスの提供等を実施した。これらの取組により、本世界会議には約200名以上の障害者が参加し、関係者からは、今後の国連会議のスタンダードとすべきとの賞賛の声があるなど高い評価が得られた。

また、障害者に関する会議以外の一般的な国連の会議においては、これまで障害者グループの代表にステートメントの機会がなかったが、今回初めて全体会合において発言機会が確保され、全盲のタイの国会議員であるモンティアン・ブンタン氏がステートメントを行った。ブンタン議員は、各国が取り組む防災の行動枠組が障害者を含めインクルーシブなものであること、障害者にも平等なアクセスの保障や、障害者の防災政策への積極的関与の重要性に関する主張がなされた。

さらに、本体会議におけるワーキングセッションでは、「障害者の積極的参加~あらゆる主体の参加」をテーマに議論がなされたほか、関連事業においても障害者をテーマにしたシンポジウム等が開催された。

会議最終日に採択された「仙台防災枠組2015-2030」においても、障害者の重要性について明記され、今後の防災における障害者の取組を推進する上で、大きな成果が得られた会議となった。

全体会合におけるブンタン氏のステートメントの様子全体会合におけるブンタン氏のステートメントの様子
手話通訳の様子手話通訳の様子

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