平成26年版 防災白書|第1部 第1章 第3節 3-3 被災者支援対策


3-3 被災者支援対策

(1)避難行動要支援者の避難支援等

平成25年6月に成立した「災害対策基本法等の一部を改正する法律」により、「災害対策基本法」に、当該市町村に居住する、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要するもの(「要配慮者」(第8条第2項第15号))のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(「避難行動要支援者」)に対する実効性のある避難支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置(「避難支援等」)がなされるよう、

  • 避難行動要支援者名簿の作成を市町村に義務付けるとともに、その作成に際し必要な個人情報を利用できること(第49条の10)
  • 避難行動要支援者本人からの同意を得て、平常時から消防機関や民生委員等の避難支援等関係者に情報提供すること(第49条の11)
  • 現に災害が発生、または発生のおそれが生じた場合には、本人の同意の有無に関わらず、名簿情報を避難支援等関係者その他の者に提供できること(第49条の11)
  • 名簿情報の提供を受けた者に守秘義務を課すとともに、市町村においては、名簿情報の漏えいの防止のため必要な措置を講ずること(第49条の12及び第49条の13)
などを規定した。

また、上記の法改正を受け、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月)を全面的に改定し、避難行動要支援者名簿の作成・活用に係る具体的手順等を盛り込んだ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(取組指針)を平成25年8月に策定・公表した。同指針は大きく二部構成からなり、第I部は「災害対策基本法」の改正により法的に位置付けられた事務をどのように進めていくかについてまとめ、第II部は法的に位置付けられているものではないものの、個別計画の作成や平常時からの共助力を向上させる取組など、避難支援等の実効性を高める観点から、取り組むことが望ましい事項についてまとめている。

これらを踏まえ、平成25年10月~11月にかけ全国9ヵ所でブロック会議を開催し、都道府県・市町村の防災担当者や福祉担当者に対し、改正災対法及び取組指針の周知徹底に努めた。

(2)被災者台帳

東日本大震災において、被災者支援のための総合的な台帳を作成し、制度の適用を行った地方公共団体があった。これらの地方公共団体においては、被災者台帳を用いることにより、被災者の現状やニーズとともに、支援の状況等を一元管理し、被災者一人一人の状況に応じた適時・効果的な支援を行うことができ、その有用性が確認された。

このことから、「被災者に対する国の支援のあり方に関する検討会中間整理(平成24年3月)」において、「被災者台帳についても、法的に位置づけ、個人情報保護法との関係を整理していくことが考えられるのではないか。引き続き検討する必要がある。」とされたところである。

また、これを受けて、「防災対策推進検討会議最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~(平成24年7月31日 中央防災会議 防災対策推進検討会議)」において、「被災者を支える基盤づくり」として、以下の報告がなされた。

  • 個々の被災者を支援するためにまず必要となる罹災証明について災害対策法制に位置付けるべきである。また、現在国会に提出中のマイナンバー法案において導入することとしている社会保障・税番号との関係を一層明確化し、同番号の活用による住民負担の軽減を図るべきである。
  • 被災者台帳についても災害対策法制に位置付け、前述の社会保障・税番号との関係を明確化すべきである。
  • 地方公共団体において、平時に被災者支援の仕組を担当する部局が必ずしも明らかでない場合が多いことから、これを明確化し、仕組の整備等を着実に進めるようにすべきである。その際には、女性や若者も含めた住民による避難所の運営主体も予め組織しておくことも検討すべきである。また、被災者情報を一元的に管理するシステム等の活用を、平常時から検討しておくべきである。
  • 災害時における地方公共団体が保有する個人情報の取扱いについて、個人情報保護法制との関係を整理すべきである。

これらを踏まえて、「災害対策基本法等の一部を改正する法律」(平成25年6月)において、被災者支援について「支援漏れ」や「手続の重複」をなくし、中長期にわたる被災者支援を総合的かつ効率的に実施するため、個々の被災者の被害状況や支援状況、配慮事項等を一元的に集約する被災者台帳の制度を創設した。なお、本制度は、平成25年10月1日に施行された。

(3)避難所における良好な生活環境の確保等

東日本大震災では、多数の被災者が長期の避難所生活を余儀なくされる中、発災直後から、物資の不足や避難所等でのバリアフリーへの対応等が課題となったほか、避難生活が長期化するにつれ、心身の健康確保等に関する取組も課題となった。また、ライフラインが途絶し、食料等も不足する中、支援物資の到着や分配に係る情報など必要な情報が在宅の避難者には知らされず、支援物資が在宅の避難者に行き渡らないなど、避難所以外の場所での生活を余儀なくされた被災者も困難な状況に陥った。

このような教訓を踏まえ、平成25年6月に災害対策基本法を改正し、避難所における生活環境の整備等に関しては同法第86条の6に、避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮に関しては同法第86条の7に、それぞれ地方公共団体を含めた災害応急対策責任者が配慮すべき事項を規定したところである。

この法改正を受け、具体的に取り組む事項について参考となるよう、主に市町村を対象とした「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を同年8月に策定・公表した。同指針は大きく二つの構成に分かれており、第1部は平常時の対応として、避難所の組織体制と応援体制の整備、避難所の指定・周知、避難所における備蓄等に関して取り組むことが望ましい事項についてまとめている。第2部は発災後の対応として、避難所の設置と機能整備、避難所の運営、避難者への情報提供や相談窓口の設置等に関して取り組むことが望ましい事項についてまとめている。

これらを受け、前述の避難行動要支援者の避難行動支援等とあわせ、平成25年10月から11月にかけて、全国9か所で開催したブロック会議において、都道府県・市町村の防災担当者や福祉担当者を対象として、改正後の災害対策基本法及び同取組指針の内容について周知し、市町村における取組が徹底されるよう働きかけた。

(4)災害救助法、災害弔慰金の支給等

「災害救助法」は、一定規模以上の災害に際して、都道府県知事が、応急的に必要な救助(避難所の設置、応急仮設住宅の供与、炊出し等による食品の給与、飲料水の供給、医療及び助産等)を被災者に対して行うものである。また、災害により被害を受けた場合に、市町村が「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、

  • 災害により死亡した方の遺族には災害弔慰金を支給
  • 災害により著しい障害を受けた者には災害障害見舞金を支給
  • 災害により負傷又は住居、家財の損害を受けた者には生活再建に必要な資金の貸し付け
を行う。
(5)被災者生活再建支援法

<1> 被災者生活再建支援法

「被災者生活再建支援法」は、平成7年に発生した阪神・淡路大震災が契機となって平成10年に制定された法律であり、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、被災者生活再建支援金を支給することにより、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としている。

具体的には、一定規模以上の自然災害により住宅が全壊する等の被害を受けた世帯に対し、住宅の被害状況に応じて、基礎支援金(最高額100万円)及び住宅の再建方法に応じた加算支援金(最高額200万円)が支給される。平成25年度における「被災者生活再建支援法」の適用災害は図表1-1-30のとおりである。なお、この制度に基づく支援金の支給状況は、附属資料59のとおりである。

図表1-1-30 平成25年度における被災者生活再建支援制度の適用災害図表1-1-30 平成25年度における被災者生活再建支援制度の適用災害

<2> 災害に係る住家の被害認定等

災害により被災した住宅については、余震等による倒壊の危険性を判定する被災建築物応急危険度判定により、二次災害の防止が図られるとともに、全壊、半壊等の被害の程度を判定する住家被害認定により、被害規模の把握及び罹災証明書の交付が行われる。罹災証明書に記載される被害の程度に応じて、「被災者生活再建支援法」による支援金の支給をはじめとする様々な被災者支援措置が講じられる。

住家被害認定調査は、「災害の被害認定基準」(平成13年6月28日付内閣府政策統括官(防災担当)通知)(図表1-1-31)により、市町村により実施される。内閣府においては、被害認定調査の標準的な調査・判定方法を示す「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を平成21年6月及び平成25年6月に一部改定し、より迅速に被害の実態に即した認定が行えるよう運用の見直しを行ったところである。

図表1-1-31 災害の被害認定基準図表1-1-31 災害の被害認定基準
(6)被災者支援に向けた今後の取組

被災者支援については、東日本大震災を受けてより重点的に取り組んでいくことが求められ、中央防災会議や有識者検討会での検討結果等を踏まえ、平成25年6月に「災害対策基本法」の一部改正が行われたほか、同年10月に、これまで厚生労働省が所管していた「災害救助法」等が内閣府に移管された。

(参考)平成25年6月の「災害対策基本法」の一部改正により、同法に、被災者支援に関する以下の規定が新たに盛り込まれた。
  • 被災者支援に関する「基本理念」
  • 避難行動要支援者名簿の作成
  • 避難所における生活環境の整備
  • 罹災証明書の交付
  • 被災者台帳の整備 等

また、最近、集中豪雨や竜巻などに伴う気象災害が相次いで発生しており、住宅などに被害を受けた被災者への支援に関する関心も高まってきている。

こうした法整備や国民の関心の高まりを受け、「災害救助法」に基づく応急仮設住宅のあり方や被災者への情報提供のあり方なども含めた被災者支援の在り方全般について幅広く検討するため、平成25年10月に新たな有識者検討会(被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会)を設置し、審議が行われているところである。

この有識者検討会では、最近我が国で竜巻が相次いで発生し、甚大な被害がもたらされていることを受け、まずこの竜巻等突風被害を受けた被災者への支援方策等について優先的に審議が行われ、平成25年12月に提言が取りまとめられた。この提言を受け、自助・共助の推進のための積極的な広報・周知の実施、被災者生活再建支援制度の推進、「災害救助法」の的確な運用、被災者向けの総合的な相談体制の推進・充実等に取り組んでいるところである。

また、この有識者検討会では、平成26年1月以降、以下の課題等について審議が行われている。

  • 地震保険等の民間保険・共済の推進方策
  • 災害時における公平で効果的な住まいの確保策のあり方(様々な課題が指摘されている応急仮設住宅等のあり方)
  • 今後発生するおそれがある首都直下地震等に対応できるよう、被災者が必要とする情報に迅速にアクセスできる仕組みづくり

この審議結果も踏まえ、今後、必要な施策を実施し、被災者支援施策の一層の推進に取り組んでいくこととしている。


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