4 今後の方向性~ソーシャル・キャピタルと地域防災力の活性化~
このように地区防災計画等自助・共助による防災活動を強化することが、大規模広域災害に対処するためには不可欠である。
一方で、社会の変化に伴い、都市部においては、人間関係の希薄化等が進み、また、地方においては、人口減少や平均年齢の上昇等が進む等地域コミュニティの脆弱化が懸念されていることから、地域防災力を向上させるためには、地区防災計画に基づく防災活動が地区居住者等によってしっかり実施されるように、地域コミュニティそのものの強化や活性化が必要である。
また、地域コミュニティにおいて、<1>人的なネットワーク、<2>お互い様の意識(規範・互酬性)、<3>相互の信頼関係等が構築されている場合は、共助による活動が盛んであり、防災や復興にも良い影響があるともいわれており、このような<1>~<3>の要素を中心として、社会的な効率性を高めるものとして、「ソーシャル・キャピタル」という用語が学術的に使われることがあるが、第4章のコラムの事例等を踏まえると、地域コミュニティ内での防災に関する話し合い等をきっかけに、コミュニティ内でのメンバー同士のネットワークが形成されたり、お互い様の意識(規範・互酬性)や信頼関係が醸成されており、防災をきっかけに地域コミュニティの「ソーシャル・キャピタル」が活性化している。
このように、地域コミュニティの活性化と地域防災力は表裏一体の関係にあることから、地区防災計画制度が、地域防災力の向上だけでなく、地域コミュニティの活性化を通して、地区の実情に応じたきめ細かいまちづくりにも寄与する可能性がある。
今後、自助・共助による「ソフトパワー」を強化するとともに、地域コミュニティにおける「ソーシャル・キャピタル」を促進することによって、地域防災力の向上と地域コミュニティの活性化が促進されることが期待される(図表19)。