平成25年版 防災白書|第1部 特集 4 (1)自主防災組織等の取組例


(1)自主防災組織等の取組例

○ 防災福祉コミュニティの概要(兵庫県神戸市)

兵庫県神戸市の「防災福祉コミュニティ」とは,災害発生時においても地域の強い連帯感のもとに,市民が主体となり適切な防災活動及び福祉活動を展開できるよう,平常時から防災活動や福祉活動など地域活動に積極的に取り組むコミュニティで,平成20年度に市内全域で全191地区で結成された。

神戸市の地域への活動支援として,<1>新規結成時の防災資機材の配備,<2>活動経費の一部助成,<3>市民防災リーダーの養成などを行っており,平成18年度は全市の防災福祉コミュニティで543回の訓練等が行われた。平成24年度には,その回数は896回に増加している。

各地域の特徴的な活動の例としては,東灘区の魚崎地区で,「地域みんなでお助け隊」という,地域内の高齢者など災害時要援護者の避難支援に関する取組がある。これは,あらかじめ本人の同意により登録された名前や住所等の要援護者情報を「要援護者登録票」として各自治会の特定の役員と支援者のみで共有し,いざという時の救出や避難支援活動に役立てようとするもので,この要援護者のデータをもとに毎年繰り返し避難支援訓練を行っている。

また,兵庫区の明親地区においては,防災福祉コミュニティ・消防団・事業所・行政機関が連携して,中学校1年生を対象とした防災教育に,年間を通じて取り組んでいる。さらに,南海トラフの巨大地震対策として,小中学生と共に津波表示板や津波緊急待避所を確認する「まち歩き」などにより,津波からの避難の意識啓発を行っている。

このように,阪神・淡路大震災の教訓である「自助」「共助」の精神で,それぞれの地区の災害リスクに応じた活動に,地域と行政が協働で取り組んでいる。

防災訓練の模様(1) 防災訓練の模様(1)の写真
防災訓練の模様(2) 防災訓練の模様(2)の写真

○ 「気付きを生む」京都市での取組(京都府京都市)

「人が足りない!あと5人連れてきて。」,「車からジャッキを持って来い!」

町中で突如始まった訓練。周辺の家屋には,「火災発生!消火器5本による消火活動が必要」,「建物倒壊!救出には10人とジャッキ2台が必要」などの災害想定が書かれたプラカードが掲げられており,それぞれの災害想定に対応すべく,地域住民が緊迫した表情で活動している。

これは,「地域の集合場所」での訓練の様子である。

「地域の集合場所?」聞き慣れない言葉であるが,京都市においては地域防災のキーワードであり,近所の公園やガレージなどが「地域の集合場所」として選定されている。木造住宅の密集地域が多くある京都市で大地震が発生した場合,地域住民による初期消火や救出救護活動は必要不可欠であり,そうした活動を実施するにはたくさんの人手が必要となる。地震時,少しでも早く,そして少しでも多くの人手を集めるために,あらかじめ地域住民が選定している集合場所,それが「地域の集合場所」である。

京都市では,おおむね町内を単位として結成されている約6,300の自主防災組織それぞれが,町内版の防災計画である「身近な地域の市民防災行動計画」を策定しており,その中で「地域の集合場所」を定めている。また,「地域の集合場所」を周知するためのシール(消防局作成)を全戸配布するなど,地域と行政が連携しながら周知に努めている。

身近な場所で,身近な人たちと訓練に取り組むからこそ,多くの気付きがある。「町有の消火器が少ない」,「いざという時に人が集まるか不安」といった気付きがある一方で,「自動車整備工場から器材を借りられる」,「学生マンションの学生たちに参加を呼び掛ける」といった気付きもある。まずは,それぞれの地域にある強み,弱みを認識することが地域の災害対応力向上への第一歩であると考える。

地域の集合場所周知用シール 地域の集合場所周知用シールの写真
防災訓練の模様 防災訓練の模様の写真
災害想定の書かれたプラカード(1) 災害想定の書かれたプラカード(1)の写真
災害想定の書かれたプラカード(2) 災害想定の書かれたプラカード(2)の写真

○ 地域住民が主体となった防災訓練(静岡県富士市富士南地区まちづくり推進会)

静岡県富士市内では,地域の防災力を高めるため,地域住民が主体となった自主防災組織による防災活動を推進している。

そのうち,富士川の東,最も海寄りに位置し,約2万人が居住する富士南地区では,災害時に避難所の開設・運営がスムーズに行えるよう,避難所運営マニュアルを策定し,訓練を実施している。

同地区では,初めての避難所開設・運営訓練を平成24年3月11日に実施した。同訓練では,参加住民が500人に上ったが,参加者側からは,見学型中心の訓練であったため,訓練に参加した実感を得ることが難しく,手持ち無沙汰になった等の指摘があった。

そして,初回の訓練の反省を踏まえ,平成25年3月10日に,第2回の避難所開設・運営訓練を実施した。

訓練を実施するに当たり,参加者が,避難所開設・運営の流れを体験することに主眼を置き,企画段階から,ワークショップ形式により,本部,総務班,施設管理班,保健・衛生班など6つの活動班に分かれて,訓練内容,役割分担等の協議を行った。

また,訓練当日には,地区内外から約400名の住民が参加し,各活動班に所属して,避難所開設・運営の訓練を行った。

さらに,第2回の訓練では,地域の公共的団体である郵便局,富士商工会議所等と連携して訓練に取り組んだところであり,例えば,郵便局との連携により,段ボールで作成した臨時郵便ポストが設置されたほか,東日本大震災時の郵便局の取組などがパネルで展示された。

訓練後には,訓練を振り返るワークショップが開催され,参加者が訓練中に気づいたことを記入した模造紙等をもとに,課題,問題点が抽出され,避難所運営マニュアルに反映すべき点等が整理された。

郵便局によって設置された臨時郵便ポスト 郵便局によって設置された臨時郵便ポストの写真
体育館で受付・班分けを行う様子 体育館で受付・班分けを行う様子の写真
備蓄倉庫の飲料水を運搬する参加者 備蓄倉庫の飲料水を運搬する参加者の写真
訓練中に気づいたことを記入した模造紙 訓練中に気づいたことを記入した模造紙の写真

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