1 地方都市等における地震防災の在り方


1 地方都市等における地震防災の在り方

日本全国には陸域に約2,000箇所の活断層があると推定されており,近年,新潟県中越地震(平成16年10月),福岡県西方沖を震源とする地震(平成17年3月),能登半島地震(平成19年3月),新潟県中越沖地震(平成19年7月),岩手・宮城内陸地震(平成20年6月)等,主として地方都市等が被災する地震が頻発している。人的・物的な被害に加えて,土砂災害に伴う交通の寸断や情報通信の途絶による孤立集落の発生等大きな被害に見舞われた地域が多い。また,地方公共団体は地震災害対応に不慣れな場合も多く,対応に混乱が生じている事例も見られ,事前の備えや災害時の円滑な対応等様々な対策の充実を図ることが喫緊の課題となっている。

これらの地震による被害を詳細に見ると,とりわけ高齢化や過疎化といった地方都市等に特有の課題が地震発生時の被害や復旧・復興対策等に大きな影響を与えていることが明らかになっており,それらを踏まえつつ,充実・強化すべき対策や支援方策について検討を行うことが必要である。

このため,平成22年1月に,中央防災会議に「地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会」を設置のうえ検討を行い,平成24年3月に報告書を取りまとめた(図表2-1-1)。

図表2-1-1 「地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会」報告概要 図表2-1-1 「地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会」報告概要の図表

本専門調査会では,比較的被災範囲の狭い直下型地震災害を対象に,近年発生した地震災害における各地域での教訓や対応を踏まえつつ,地震防災の在り方について検討してきた。東日本大震災の教訓のうち,例えば,避難所における環境改善等は,被害の大きさや被災範囲にかかわらず,本専門調査会で対象とする地震に対しても有効な教訓となることから,これらの事例等も検証した。

なお,災害事象は異なるが,近年頻発する水害や土砂災害等に対しても,本専門調査会の報告書で取りまとめられた対策は有効であるといえる。

また,報告書と併せて,地方公共団体における災害対策の検討や地震発生時の災害応急対応等に活用できるように,「地方都市等における地震対応のチェックリスト(例)」と「地震対応の事例集」を取りまとめた。

このチェックリストは,災害発生時に必要となる基本的な対応を事前に確認しておく等災害発生前に対策を講ずるとともに,災害発生時には対応状況(指示及び確認)を確認することによって,災害対応の効率化・円滑化を図ることを目的としている。災害対応の各段階(準備,初動,応急,復旧及び復興)において,地方公共団体が実施すべき対応(18の対策項目)をチェックリスト形式で取りまとめていることが特徴である。

「地震対応の事例集」は,過去の地震発生時に講じられた災害対応の事例・ノウハウを蓄積し,広く共有することによって,地方公共団体等の災害対応能力の向上を図ることを目的としている。各地方公共団体が講じた災害対応等を報告書の項目毎に掲載していることが特徴である。

地方公共団体においては,これらを活用し,地域防災計画や災害対応体制の見直し,訓練や研修等の実施,発災時の対応の効率化・円滑化,周辺の地方公共団体や民間企業等との連携,住民と連携した防災教育の促進及び地震災害対策の充実・強化に取り組むことが期待される。


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