2 平成22年梅雨前線による大雨


2 平成22年梅雨前線による大雨

(1)災害の状況

6月中旬から7月中旬にかけて,梅雨前線は九州から本州付近に停滞し,断続的に活動が活発となった九州から東北地方にかけての広い範囲で大雨となった。この大雨では局地的に1時間に80ミリを超える猛烈な雨が観測された。1時間の降水量では鹿児島県の南大隅町で116ミリの観測史上1位の値を更新した。24時間の降水量では宮崎県のえびの市で441ミリを観測した。また,6月11日からの総降水量では宮崎県えびの市で2,226ミリを観測した。このほか,九州南部では,この間の総雨量が1,500ミリから2,000ミリに達し,平年の2倍を超える雨量となった。

この災害により,死者16名,行方不明者5名及び負傷者31名の人的被害が発生した。特に,岐阜県の可児市では鉄道高架下に車5台が取り残されて死者1名,行方不明者2名が,広島県では土石流により死者5名が発生している。また,住家被害としては,広島県及び山口県を中心とした37都道府県で,住家全壊42棟,住家半壊74棟,住家一部破損208棟,床上浸水1,786棟及び床下浸水5,702棟等の被害が発生した。

避難指示・勧告は,215,643世帯に出された。

土砂災害については,42道府県の200市町村で576件発生した。

河川については,筑後川水系城原川で計画高水位を越えたほか,延べ7水系10河川ではん濫危険水位(危険水位),延べ9水系11河川で避難判断水位(特別警戒水位)を超え,各地で浸水被害等が発生した。

ライフライン関係については,東北電力,中部電力,関西電力及び中国電力の各管内で延べ約10万6千戸が停電となったほか,都市ガスは福岡県の福岡市及び北九州市並びに山口県の宇部市及び下関市で一時供給に支障が生じ,上水道は山口県等で約1万6千戸が断水した。通信関係では,携帯電話の基地局が停波した。

道路については,広島県庄原市川北町の県道445号線中迫川北線において土石流等により交通が寸断されて住民が孤立状態になるなどし,被災により,延べ高速道路5区間,直轄国道6区間,都道府県管理国道52区間及び都道府県道242区間で通行止めが発生した。

鉄道については,多くの路線が運転休止となった。

公共土木施設では,河川2,836箇所,海岸2箇所,砂防(地すべり及び急傾斜地含む)267箇所,道路(橋梁含む)2,342箇所,港湾5箇所,下水道1箇所及び公園17箇所で被害が発生した。

農林水産施設等では,農地10,765箇所,農業用施設8,724箇所,林地荒廃1,142箇所,治山施設50箇所及び林道施設2,890箇所で被害が発生した。

文教施設等では,国立学校施設9校,公立学校施設76校,社会教育・体育,文化施設等33施設及び文化財等47件で被害が発生した。

社会福祉施設では,22施設で被害が発生した。

(2)国等の対応状況

6月9日に関係省庁連絡会議を開催し,梅雨期及び台風期に際しての国の災害即応態勢の充実を図るとともに,都道府県及び市町村の防災態勢の強化に係る各省庁の取組について情報共有と意見交換を行った。

梅雨期に入り,内閣官房や内閣府,災害対策関係省庁は情報収集体制を強化するとともに,被害状況と都道府県等の対応状況に応じた国としての災害応急対策を迅速に講じられるよう備えた。その後,7月9日に再び関係省庁連絡会議を開催し,これまでの降雨状況,今後の気象状況の見通し,被害状況及び各省庁の対応状況について,情報共有と意見交換を行った。

7月16日に総理大臣より指示があり,同日に総理官邸に情報連絡室を設置して気象状況について厳重な監視を行うなどの更なる情報収集体制等の強化を図った。また,7月17日に内閣府特命担当大臣(防災)が広島県において,7月18日に総理大臣が岐阜県において,国土交通大臣が8月8日広島県及び8月18日に鹿児島県においてそれぞれ現地調査を実施した。

自衛隊は,岐阜県知事,山口県知事,福岡県知事及び宮崎県知事からの災害派遣要請を受け,行方不明者の捜索(岐阜県八百津市及び宮崎県都城市),孤立住民の救助(山口県下関市及び宮崎県都城市),捜索救助(山口県下関市),人命救助(避難誘導含む。山口県山陽小野田市),避難誘導支援(福岡県北九州市),水防活動(土嚢作成含む。山口県下関市),土嚢作成(福岡県北九州市)及び給水支援(山口県山陽小野田市)等を行った。

広島県は,7月14日に世羅町と呉市に続き7月16日に庄原市に,山口県は7月15日に山陽小野田市に,それぞれ災害救助法を適用した。

また,被災者生活再建支援法に基づく支援金支給制度について,今回の梅雨前線による大雨の被害にかんがみて,甚大な住宅被害が広域的に散在している場合にも対応できるようにするため,被災者生活再建支援法施行令を改正(8月31日閣議決定,9月3日公布・施行)して適用要件を拡充した。

これにより,広島県庄原市(7月16日付適用)及び山口県山陽小野田市(7月15日)に加え,新たに,長野県飯田市(7月14日),岐阜県八百津町(7月15日),広島県呉市(7月14日),山口県美祢市(7月15日)及び鹿児島県曽於市(7月3日)においても支援金支給制度が適用された。

なお,この災害を「平成22年6月11日から7月19日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(8月20日閣議決定,8月25日公布・施行)により激甚災害に指定し,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置等を適用した。

また,この災害を契機に,局地的豪雨が増える傾向にある中,過疎地域等財政規模の小さな市町村を中心に局地的ではあるものの大きな被害が発生していること等を踏まえて,局地激甚災害指定基準の見直しの検討が行われた。これにより,平成23年1月13日に,一定の条件(標準税収入が50億円以下であり,かつ,査定事業費が2.5億円超)を備える市町村は,査定事業費が標準税収入割合の20%を超えていれば,局激指定対象に追加する等の局地激甚災害指定基準改正が中央防災会議で決定された。

各府省の対応は,参考資料18のとおり。


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