5 各区域における被災者支援関係の取組


5 各区域における被災者支援関係の取組

原子力災害対策本部は,上述の通り,被災者等の安全確保や原子力事故の収束に取り組んでいるが,併せて,5月17日には,同本部は「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」等を策定し,事故による被災者及び被災自治体への対応に係る当面の課題とその取組方針をとりまとめた。その中で,原子力事故周辺の各区域においては,円滑な避難の実現と被災者の生活支援のため,以下のような対策を講じている。

(1)避難区域に係る取組

(a) 避難状況等

原子力災害対策本部長から避難指示が出された区域(東京電力福島第一原子力発電所から半径20km 圏内及び福島第二原子力発電所から半径8km 圏内)における人口は,約78,000人となっている。

福島県,市町村等が連携し,避難区域の住民の避難が実施されたが,5月下旬時点で,依然として,福島県内の約110箇所の一次避難所施設に約6,300人が生活している。また,福島県外にも約36,000人が避難している。他方,避難所生活の長期化を回避し,被災者の住環境を改善するため,応急仮設住宅等の用地確保及び建設,公営・公団住宅等の活用,民間賃貸住宅の借上げにより,二次避難先の確保を進めている。

また,避難区域内の障害者施設の入所者については,福島県の要請を踏まえ,他県で継続的な受入れを行える施設への避難を完了した。さらに,区域内の介護施設入所者についても,他県での受入れ可能状況を福島県へ提供するとともに,要援護者の受入れの仕組みを構築し,県外への避難を完了した。

(b) 一時立入の実施

避難区域内の被災者は,事故発生時に緊急に避難したため,必要な物資を持ち出せなかった者が大半であり,自宅への一時立入の強い要望がある。このため,対象市町村 それぞれの対象者数見込みや準備状況を勘案し,5月10日から,地方公共団体や警察の協力の下,一時立入を開始した。

一時立入の実施にあたっては,原子力安全委員会の放射線防護の観点から被ばくの程度を低減させるための留意事項についての助言を踏まえ,以下のような安全確保策が取られた。

・ 安全確保に万全を期す観点から,特別の例外を除いて一世帯当たり一名で,バスを利用し集団で行動することを原則とする。

・ 警戒区域への入域に際しては,線量計やトランシーバー等を携帯し,帰る際にはスクリーニングを確実に実施する。この結果,必要と認められる場合には除染を実施する。また,在宅時間は最大2時間程度とする。

 大熊町,葛尾村,川内村,田村市,富岡町,浪江町,楢葉町,双葉町及び南相馬市(50音順)

一時立入の実施 一時立入の実施 写真1
(2)計画的避難区域に係る取組

東京電力福島第一原子力発電所から半径20km 以遠の周辺地域において,事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある地域については,4月22日に,概ね1ヶ月を目途に区域外への避難を求める「計画的避難区域」が設定されたが,この区域(飯舘村(全域),葛尾村(半径20km 圏外),浪江町(半径20km 圏外),川俣町(一部)及び南相馬市(一部))における人口は,約10,000人となっている。この区域では,計画的避難の円滑な実施に向け,飯舘村及び川俣町に管理職級を含む関係省庁の職員9名が常駐した現地政府対策室を発足させ(4月22日),地元市町村,福島県と密接に連携しながら,避難への対応や生活支援等を行っている。

避難先の確保については,特に,飯舘村,川俣町については,追加的な避難先が必要となることから,応急仮設住宅,公営住宅,雇用促進住宅や民間賃貸住宅等の活用を含めて,円滑な避難が出来るよう,必要な措置を講じている。

加えて,市町村の基盤となる雇用の維持等の観点から,住民の健康や安全の確保を前提に,市町村の責任の下,一定の条件を付した上で,区域内で事業を継続することを認めている。

(3)緊急時避難準備区域に係る取組

東京電力福島第一原子力発電所から半径20km から30km 圏内の区域のうち,計画的避難区域を除く区域については,緊急時の屋内退避や避難が可能な準備を求める「緊急時避難準備区域」が設定された。この区域(広野町(全域),楢葉町(半径20km 圏外),川内村(半径20km 圏外),田村市(一部)及び南相馬市(一部))における人口は,約58,500人となっている。緊急時避難準備区域では,原則として,住民の生活や事業者の活動が継続されることとなるため,原子力災害対策本部としても,緊急時避難準備区域内の生活基盤の確保に取り組んでいる。区域内の郵便物等集配業務及び郵便局業務については,局舎が倒壊した郵便局を除いて,4月25日に再開したほか,地域医療再生基金を活用した医療施設の整備等も実施している。

(4)各区域内における治安維持

住民の安心と安全を確保するため,警察による警戒区域周辺の道路における検問や各区域内での警戒・警らの強化等,関係地方公共団体等とも連携しながら各区域内の治安維持に取り組んでいる。


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