2 防災施策の効果の検証事例
(1)湾口防波堤の津波に対する効果(チリ中部沿岸を震源とする地震による津波)
チリ中部沿岸を震源とする地震による津波により,岩手県,宮城県等の海面養殖施設に大きな被害が発生した(参考:全国における養殖施設の被害額は,25億1,500万円(平成22年4月15日時点))。
三陸沿岸は,地理的に津波被害を受けやすい条件(沖合で津波を伴う海溝型地震が繰り返し発生,リアス式海岸の地形による津波の増幅)にあることから,従来から湾口防波堤の整備が行われてきた。
湾口防波堤には,開口部分を狭めること等によって,港内へ流入する津波の浸入を抑制し,津波高を低減させる効果がある。東北地方整備局では,現時点で整備が完了している大船渡港及び釜石港を対象に来襲した津波を減衰する効果があるとされる湾口防波堤の実際の効果がどれだけあったかについて検証を実施した(平成22年4月16日発表)。
その結果,以下の効果があったことが判明した。
<1>大船渡港と釜石港の湾口防波堤は,津波の高さをそれぞれ約5割と約2割に低減したこと。
<2>大船渡港では約6割の大幅な流速低減効果があり,漁業被害の拡大防止に大きな効果を発揮したこと(被害を受けた漁業養殖施設は,津波の流速が約1ノット(秒速0.5メートル)以上だった場所とほぼ一致している)。
(2)建築物の耐震基準と全壊率
昭和56年に導入された現行の耐震基準(新耐震基準)は,中規模の地震(震度5強程度)に対してはほとんど損傷を生じず,稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7に達する程度)に対しては人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目安としたものである。
この点について,阪神・淡路大震災等の過去の大規模地震の際のデータを用いて,木造及び非木造の建物それぞれについて,築造年に応じた一定区域(○町△丁目など)内の全壊率を分析した。
以上より,昭和56年以前に建築された建築物(木造建物・非木造建築物とも)に比べて,昭和57年以降に建築された建築物の全壊率は大きく減少している。このことから,昭和56年に強化された建築物の耐震基準の効果をうかがい知ることができる。