3 地域を取り巻く状況



3 地域を取り巻く状況

様々な民間主体による防災活動が広がりを見せる一方,少子高齢化や過疎化など社会経済情勢が変化し,地域社会が変容する中で,従来から地域の防災力の主要な担い手であった消防団については,団員数が減少し,近年は90万人を割る状況となっているとともに,団員の高年齢化が進んでいる(図表4,5)。

図表4 消防団員数の推移 図表2 家具固定の推移の図表
図表5 消防団員の年齢構成の推移 図表3 自主防災活動や災害援助活動への貢献希望の推移の図表

かつての日本社会では,一つの地域コミュニティの中で,仕事をし,学校に通い,買い物をするということが一般的であり,地域コミュニティと生活圏はほぼ一致していた。

しかしながら,高度成長による都市化の進展と交通網の発達に伴い,住宅地が都市の外延部に広がりを見せる一方で,通勤,通学,買い物等の生活圏が拡大し,地域コミュニティと生活圏の乖離が拡大してきた。これに伴い,従来からの地縁に基づいた地域コミュニティが変化してきているといえる。

例えば,平日の昼間,大都市に大地震が発生すると仮定したとき,都心では通勤者や買い物客等を中心に大量の帰宅困難者が発生することが見込まれ,「首都直下地震避難対策等専門調査会報告」では,東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した場合,最大で約650万人の帰宅困難者の発生を予測している。他方,住宅地では平日の昼間は,働き手が働きに出て不在となっているため,残された主婦,子供,老人などを中心に対応をとらなくてはならない。

また,中山間地域等の過疎地域においては別の課題が生じている。過疎地域においては,都市部への人口流入による人口減少や高齢化の進行により,住民相互の助け合いが困難となってきており,中山間地域で高齢化が進んだ地域では,災害により道路等の交通網が寸断され集落が孤立した場合などにおいて問題が生じることが懸念される。さらに,働き手不足から,農地,林地の維持管理も困難となり,土砂災害を引き起こしてしまう危険性もある。

このような現状に対しては,これまでも,地域の特性に応じて,地域が自らの防災力を維持または向上させていくための各種取組が行われてきた。例えば,上で見たように全国の消防団員数が減少している中,消防団員数が増加している市町村もあり,佐賀県唐津市では,昼間の火災に対応するため,消防団員・消防職員のOBを支援団員として採用しているほか,奈良県奈良市では女性団員による広報指導分団を設立しているなど,創意工夫ある取組により消防団員の増加につなげている。また,中山間地で孤立可能性のある集落においても,徐々にではあるが,避難施設(65.7%)や情報通信手段(44.7%)などの整備を進めている(数値はいずれも内閣府調査(平成22年1月12日発表)に基づく。)

こうした取組に加え,地域防災力の向上には次のような視点も必要と考えられる。まず,都市部においては,居住者を対象とした行政区域単位で考える従来の防災対策に加え,そこで働く人,学ぶ人などその地域と何らかの関係を有する人々を対象とした現実の都市生活に立脚した防災対策を構築することが必要と考えられる。他方で,過疎地域のような地方部においては,都市居住者との交流・連携を図るなど自分たちだけでなく外部の力も借りた防災対策を構築していくことなどが必要になってきていると考えられる。

この場合,行政は,自らの行政区域の住民を対象とした取組を行うことがその責務であるため,現代の実生活の動きに対応できない面がでてくることは必然であり,行政区域等に縛られることなく柔軟に対応することができるボランティアなどへの期待は自ずと大きくなってくると考えられる。


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