3−5 雪害対策



3−5 雪害対策

(1)雪害の現況

我が国は,急峻な山脈からなる弧状列島であり,冬季には,シベリア方面から冷たい季節風が吹き,日本海には南からの暖流があるため,日本海側で多量の降雪・積雪がもたらされる。そのため,屋根の雪下ろし中の転落,雪崩災害のほか,降積雪による都市機能の阻害,交通の障害といった雪害が毎年発生している。また,凍上現象により道路舗装面にひび割れなどが発生する凍上災が発生することもある。

気象庁が「平成18年豪雪」と命名した平成17年から18年にかけての冬においては,日本海側の各地は暴風を伴った大雪に見舞われ,気象庁が積雪を観測している339地点のうち,全国の23地点で,年間の最深積雪の記録を更新(観測開始以来の最も大きな値を記録)したほか,雪下ろし中の転落事故,屋根雪の落下,倒壊した家屋の下敷き等により,戦後2番目の記録となる死者152名が発生した。

(2)雪害対策の概要

雪崩は,その速度が極めて速く(概ね,表層雪崩で100〜200km/h,全層雪崩で40〜80km/h),衝撃力は場合によっては100t/m 2 (鉄筋コンクリートの建物を倒壊する力)に相当することもあり,一度集落を襲うと被害が甚大なものとなる。このため,集落を保全対象とした雪崩対策事業を推進するとともに,危険箇所の住民への周知徹底,警戒避難体制の強化,適正な土地利用への誘導等の総合的な雪崩対策を実施している。

住家,公共的建物などを含む集落を襲う雪崩が発生する可能性のある箇所(雪崩危険箇所)は,国土交通省の調査によれば20,000箇所以上あり,このほか,林野庁が林地を対象として行った調査によれば約7,000か所が報告されている。

なお,降積雪期には,雪降ろし中の転落事故や屋根雪の落下等による人身事故の防止,雪崩警戒体制の強化に取り組むこととしているほか,積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法に基づき道路の交通確保のため除雪事業を推進している。また,除排雪経費が著しく多額にのぼる地方公共団体については,所要経費,普通交付税措置額及び降雪量等を勘案の上,所要経費の一部を特別交付税で措置することとしている。

平成18年豪雪においては,特に長野,新潟,秋田,北海道,群馬,福島に対する自衛隊の災害派遣,新潟県の11市町,長野県の8市町村への災害救助法の適用,道府県管理道,市町村道の除雪費補助の緊急措置及び追加措置,特別交付税の繰り上げ交付,雪崩対策や融雪期の出水・土砂対策等のための科学技術振興調整費による緊急研究開発等の指定などの対策を行った。

(3)豪雪地帯対策の概要

降積雪が多く,産業の振興及び民生の安定向上のために総合的な対策を必要とする地域については,豪雪地帯対策特別措置法に基づき,豪雪地帯に指定されている。豪雪地帯では,全域指定が10道県,一部地域の指定が14府県であり,542市町村(平成21年4月1日現在)が指定されている。その面積は全国土面積の約51%にあたる約19万で,全国の人口の約16%にあたる約2,013万人が生活している。また,特に積雪量が多く,積雪により住民の生活に著しい支障が生ずるおそれのある地域は特別豪雪地帯に指定されている。現在,特別豪雪地帯は15道県の202市町村(平成21年4月1日現在)が指定されている(図2−3−82)。豪雪地帯では,豪雪地帯対策特別措置法に基づき豪雪地帯対策基本計画を策定し,各種の雪害対策を含む豪雪地帯対策が講じられている。

図2−3−82 豪雪地帯及び特別豪雪地帯指定地域 豪雪地帯及び特別豪雪地帯指定地域の図

a 交通,通信等の確保

交通基盤整備を推進し,除排雪,防雪対策及び消融雪を実施するほか,防雪施設等の維持・保全及び交通安全施設整備の充実を図る。

また,情報通信の高度化へ向けた基盤整備を推進する。

b 農林業等地域産業の振興

雪面黒化法等による消雪促進や,耐雪性の育苗等農業用施設,除雪機械,消融雪施設等の整備・拡充,ローカルエネルギー利用による消融雪の促進に努める。また,雪に強い品種の開発・導入や栽培管理技術の向上・普及に努める。

また,工場等の施設の耐雪耐寒構造化及び工場内消融雪施設の整備を推進する。

c 生活環境施設等の整備

教育,保健衛生,医療,介護・福祉サービス,消防防災等の各分野における施設等の整備と克雪住宅の普及・促進,克雪用水の確保,安定的な電力供給の確保やエネルギーの有効利用等に努める。

d 国土保全施設の整備及び環境保全

治山,治水,農地保全事業等を総合的に推進し,環境保全に配慮した施策の推進を図る。また,雪崩等の災害発生の予測・連絡・避難体制の確立・整備を図り,災害復旧体制の整備・強化に努める。

e 雪に関する調査研究の総合的な推進及び気象業務の整備・強化

総合的な調査研究体制の充実を図り,除雪機械,冬期道路交通の確保,克雪住宅や屋根雪処理等に関する理工学的,技術的な調査研究の推進に努める。

また,雪に関する気象状況を的確に把握し,適時・適切な予報・警報等の発表を通じて雪害の軽減に資する。


雪害については,平成18年豪雪の要因を見ると,屋根の雪下ろし等除雪作業中の死者が約4分の3を占め,65歳以上の高齢者の占める割合が3分の2に上り,また,平成19年度冬期においても,降雪量が平年並か少なかったにもかかわらず,47名の犠牲者が発生し,高齢者が無理することなく除雪できる体制の整備など被災者の目線に立って「何ができていれば犠牲が避けられたのか」という視点から,個々の災害の状況を十分検討した上で,きめ細やかな対策を講じる必要がある。

このため,平成20年4月に中央防災会議において報告された「自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すための総合プラン」を踏まえ,国としては関係省庁の連携のもと,平成20年9月には「雪害による犠牲者ゼロのための地域の防災力向上を目指す検討会」を設置し,平成19年度冬期の雪の事故原因について調査・分析して明らかになった課題,および市町村を中心とした多様な主体が連携した,共助による体制づくり,担い手の育成,安全な道具・機器の開発・普及等,雪処理に係る事故の効果的な対策について提言をまとめた。また,併せて雪の事故防止対策をまとめたパンフレットを作成し,市町村等関係機関へ配布した。


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