第1部 災害の状況と対策
序章 変化する災害リスクを正しく認識し,災害被害を軽減へ
はじめに
我が国では,毎年のように自然災害による被害が発生しており,これまでに多くの人命や財産が失われてきた。平成20年においても,岩手・宮城内陸地震,岩手県沿岸北部を震源とする地震,夏に頻発した短時間の局地的な大雨など多くの自然災害に見舞われ,これにより各地で被害が発生したところである。自然災害による被害については,各種自然災害を契機とした防災対策の充実・強化により,長期的に見れば減少傾向にあるものの,近年には,短時間強雨の発生頻度の増加などによりこれまで想定してこなかった新たな防災上の課題が生じてきていることも事実である。
こうした状況を踏まえ,本章では,災害被害軽減のために我が国が講じてきたこれまでの防災対策を振り返るとともに,気象変化,高齢化,都市化などによる近年の自然災害を取り巻く環境変化,その変化に対する国民の意識などを明らかにし,今後求められる防災対策の方向性を提示する。