4−5 原子力災害対策



4−5 原子力災害対策

(1)災害の現況

平成11年,茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(JCO)のウラン加工施設において,我が国初の臨界事故が発生し,3名が重篤な被ばくを受け,そのうち2名が死亡したほか,作業員,防災業務関係者,周辺住民など319人(うち周辺住民130人)が,一般人の年間実効線量当量限度である1ミリシーベルトを超える放射線を浴びたと推定され,また,周辺住民の避難や屋内退避を招くという重大な原子力災害が発生した。

(2)原子力災害対策

上記臨界事故では,原子力安全規制の抜本的強化の必要性や,国・自治体の連携や緊急時対応体制の強化の必要性などの課題が顕在化した。

これを受け,同年12月,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正により,原子力事業者に関して,保安規定の遵守状況定期検査制度の創設等がなされた。また,以下の事項を大きな柱とする「原子力災害対策特別措置法」が制定されるとともに,中央防災会議は,平成12年,防災基本計画原子力災害対策編の修正を行った。

[1] 迅速な初期体制の確保

[2] 国と地方公共団体との有機的な連携の強化

[3] 国の緊急時対応体制の強化

[4] 原子力事業者の責務の明確化

a 災害対応体制の整備

中央省庁再編に伴い,発電炉等の安全規制は経済産業省原子力安全・保安院が,試験研究炉等の安全規制は文部科学省が担当することとなった。これらの体制整備により,上記臨界事故以降は,万が一,原子力災害が発生した場合には,事故時の情報連絡など迅速・的確な対応が行われることとなっており,原子力災害対策特別措置法に基づき,内閣総理大臣が「原子力緊急事態」を宣言し,政府の災害対策を主導するほか,現地では,国,都道府県,市町村等の関係者がオフサイトセンターに一堂に会して原子力災害合同対策協議会を組織し,住民の避難,被災者の救助・救急等の各種対策を講ずることとしており,迅速・的確な事故対応が行われることとなっている。

なお,平成19年の新潟県中越沖地震の教訓を踏まえ,平成20年2月,防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い,原子力事業者の自衛消防体制を整備するとともに,周辺住民への迅速かつわかりやすい情報提供や在外公館を通じた情報提供の体制を強化することとしている。

b 防災訓練の実施

原子力災害対策特別措置法や防災基本計画に基づき,関係機関の協力の円滑化を図るとともに,平時からの防災体制の実効性を確認することを目的に,国,地方公共団体,原子力事業者等は共同して原子力総合防災訓練を毎年実施し,平成19年度は日本原燃株式会社再処理事業所(再処理施設)において国,地方公共団体,原子力事業者,住民等を含む総勢約1,800人の参加を得て行われた。

c 原子力施設の耐震安全性の向上

平成18年9月,最新の地震学,地震工学の知見を反映させ,原子力施設の耐震安全性を一層向上させることを目的に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」等の耐震安全性に係る安全審査指針類の改訂等を行い,地震動や津波等の地震随伴事象に対し,原子力施設の安全性の確保を図っている。国は,原子力発電所等の耐震安全性の一層の向上の観点から,稼働中・建設中の原子力発電所等についても,改訂された耐震指針に照らして耐震安全性を確認していく。

d 原子力艦の原子力災害

原子力艦の原子力災害については,原子力災害対策特別措置法は適用されず,災害対策基本法が適用されることになる。平成14年,原子力艦が我が国に寄港した際の原子力災害に備え,防災基本計画第10編原子力災害対策編に政府の活動体制や避難誘導,救助・救急等に係る関係機関の役割について記述するとともに,緊急被ばく医療に係る所要の修正を行った。

また,平成16年,関係省庁が連携し一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領をとりまとめた「原子力艦の原子力災害対策マニュアル」を策定した。政府においては,原子力艦の原子力災害の発生に備えるべく,関係機関・自治体との連携を深めつつ,更なる防災体制の強化を図っていくこととしている。


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