4−3 鉄道災害対策



4−3 鉄道災害対策

(1)鉄道災害の現況

我が国の鉄道災害は,安全対策を着実に実施してきた結果,列車の高速化・高密度化が進む中でも長期的には減少する傾向にあるが,一度事故が発生すると多数の死傷者を生じるおそれがある。近年(過去5年間)の主な鉄道事故としては,平成17年の土佐くろしお鉄道列車脱線事故(死者1人,負傷者10人),JR西日本福知山線列車脱線事故(死者107人,負傷者562人),JR東日本羽越線列車脱線事故(死者5人,負傷者33人)がある。また,平成19年には,JR北海道石北線列車脱線事故(負傷者52人)が発生した。

(2)鉄道災害対策

a 鉄軌道交通環境の整備

国土交通省が,施設の保守について鉄軌道事業者を指導している。

また,平成15年2月に発生した韓国テグ市の地下鉄火災を踏まえ,消防庁と国土交通省と共同で,「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し,我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を行った。

b 鉄軌道交通の安全のための情報の充実

気象庁は,鉄軌道交通の安全に係わる気象現象,予報,警報等の情報を適時・適切に発表している。

c 鉄軌道の安全な運行の確保

国土交通省において,迅速かつ的確な運行指令体制づくり,乗務員等に対する科学的な適性検査の定期的な実施について,鉄軌道事業者を指導している。

また,大阪市で発生した救助活動消防隊員の列車接触事故を受けて,消防庁は国土交通省と連携し各地域における消防機関と鉄道事業者との緊密な連携・協力体制の確保を図っている。

d 鉄軌道車両の安全性の確保

国土交通省において,車両の技術上の基準への適合性を確認するとともに,事故事例に応じた対策を鉄軌道事業者に指導している。

e 踏切道における交通の安全の確保

事故防止に関する知識を広く一般に普及するとともに,踏切道の立体交差化,踏切保安設備の整備等を計画的に推進している。

f 事故調査体制の整備

営団日比谷線列車脱線衝突事故等を背景として,鉄道事故の原因を究明するための調査及び鉄道事故の兆候(重大インシデント)についての調査を行うため,平成13年10月に従来の「航空事故調査委員会」に鉄道部門を加え「航空・鉄道事故調査委員会」として改組し,鉄道事故調査体制の整備を図ってきた。また,平成20年10月には,陸・海・空(鉄道,船舶,航空)の事故における原因究明機能の高度化及び再発防止機能の強化を図るため,「航空・鉄道事故調査委員会」と「海難審判庁」の原因究明機能を統合し,国土交通省の外局として「運輸安全委員会」を設置することを予定している。

g 近年の鉄道事故を踏まえた再発防止対策

(a) JR西日本福知山線列車脱線事故(平成17年4月25日)

国土交通省は,事故後,JR,大手民鉄及び公営事業者に対し,列車ダイヤ,ATS等鉄道施設及び車両に係る総点検の実施を指示した。また,この事故を契機に,急曲線における速度超過防止用ATS等の緊急整備,運転士の資質向上の検討,技術基準の見直し等法令改正も含めた鉄道輸送の安全性向上策を推進している。更に,事故調査委員会からの最終報告書を受けて,インシデント等の把握のための運行記録装置等の活用,走行中の交信内容の記録の原則禁止等について指導を行うとともに,検討委員会等において,インシデント等の総合的,効果的な活用,車両の安全性の向上方策等について検討を進めている。

(b) JR東日本羽越線列車脱線事故(平成17年12月25日)

国土交通省は,事故後,全国の鉄軌道事業者に対し,鉄道輸送の安全確保及び風速計に係る緊急総点検の実施を指示した。また,同事故の重大性にかんがみ,鉄道強風対策協議会を開催し,鉄道における気象観測,運転規制,防風対策のあり方等,強風対策についてソフト・ハードの両面から検討を進めている。平成18年9月には,中間的な取りまとめを行い,今後も検討の深度化を図ることとしている。


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