1−2インドネシア・ジャワ島中部地震



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1−2インドネシア・ジャワ島中部地震

(1) 災害の発生と被害の概要

2006年5月27日午前6時頃(日本時間午前8時頃),ジャワ島ジョグジャカルタ南南西20km,深さ10kmを震源とするマグニチュード6.3の地震が発生した(米国地質調査所モーメントマグニチュード)。

インドネシア社会省によると,死者5,776名,負傷者38,814名,避難者2,310,549名,家屋倒壊329,899軒,家屋損壊276,785軒に上った(インドネシア社会省による)。

人的・物的被害とも,ジョグジャカルタ特別州南部のバントゥル県周辺で被害が最大であった。

震源断層直上に位置する集落では全壊率が8〜9割にも及んだが,死亡率は5%程度であった。これは,被災地域が農村であることなどから,地域住民の多くが午前4時半頃には起床して活動を開始していたためと考えられている(アジア防災センター調査による)。

(2) インドネシア政府の応急対応

インドネシア政府は,地震発生後,ただちにその事実を知り,地震発生当日にユドヨノ大統領が被災地入りし,翌日にはカッラ副大統領が3ヶ月間を緊急援助期として食料等の供給を最優先させるとする非常事態を宣言した。さらには,関係機関が野外病院の設置,医療チームの派遣,食事配給施設の設置,テント・食料品・毛布・マット・衣料品・発電機・炊飯器具等の物資の提供等の対応を行った。

29日夕,インドネシア政府は,医療関係者のニーズが依然として高いとして,諸外国の軍隊からのものを含む医療支援に関し要請を行った。国際社会はこれを受け,以後,医療を中心に支援を行うこととなった。

これら一連の対応は,2004年のスマトラ地震の教訓なども踏まえ,災害発生時の初動・応急体制などに意を払ってきた結果によるところが大きい。

(3) 国際社会の主な対応

イギリス,オーストラリア,アメリカ,欧州連合,中国,韓国,カナダ,ドイツ,イタリア,フランス等が資金・物資協力,医療部隊派遣,救助隊派遣,医薬品提供,航空輸送協力などを行った。

また,国際赤十字・赤新月社連盟,国際移住機関,国連人道問題調整事務所,国連児童基金,世界保健機関等の国際機関も要員派遣や物資輸送等の支援を行った。

(4) 我が国の主な対応

a 無償資金協力
 緊急支援として,被災直後に,国際機関を通じた協力及び二国間協力あわせて,500万ドルの無償支援を実施した。うち,100万ドルは,国際機関を通じた協力として国際赤十字・赤新月社連盟に対して供与した(緊急医療支援,水供給・衛生支援)。インドネシア政府に対しては400万ドルが供与された(学校用テント,家庭用テント,毛布,ビニールシート等)。
 緊急無償資金協力によって調達された学校用テント200張が,2006年6月8日,被災地に到着したことを受け,6月9日に,ジョグジャカルタ特別州バントゥル県において引渡式が行われ,最終的に計6,947張供与された。
 さらに,2006年7月,小学校・中学校,保健センターの再建を目的として8.9億円(約774万ドル)の防災・災害復興支援無償(プログラム型)の供与を決定した。

b 国際緊急援助隊の派遣
 2006年5月29日から6月10日の期間,医療チーム(計25名)を派遣し,約1,200名の診療にあたった。最も被害の大きかったジョグジャカルタ特別州バントゥル県のムハマディア病院前で医療活動に加え,周辺地域の巡回医療も実施した。
 なお,6月1日には現地入りしたユスフ・カッラ副大統領が医療チームを訪問し,支援活動への謝意を表明した。
 5月30日から6月21日の期間,自衛隊医療援助隊(計約150名)を派遣し,約3,800名の診療にあたった。
 派遣された自衛隊医療援助隊は,ジョグジャカルタ州東部を中心に,2カ所の救護所(ブンダル,プランバナン)と巡回により,6月16日まで,累計2,700余名を診療し,約1,500名に予防接種(破傷風,麻疹等)を行った。また,累計4,300平方メートルの地域の防疫を行った。
 このような自衛隊援助隊の活動は,インドネシア政府及び同国国軍をはじめ,現地州政府や被災者の方々からも繰り返し感謝が表明された。

c 緊急援助物資の供与
 約2,000万円相当のテント,浄水器,発電機,プラスチックシート,毛布,スリーピングマット,簡易水槽等が,2006年5月31日ジョグジャカルタ特別州バントゥル県において引渡式が行われた。

d NGO等の活動
 ジャパン・プラットフォーム(JPF)は,5月29日に初動対応ミッションの派遣を決定,30日に参加NGO団体3団体が出発した。
 調査結果などを踏まえ,JPF被災者支援事業の採択を受けた参加NGO団体は,物資配給,子供の保護活動,医療支援,心理ケア,教育支援,仮設住宅建設支援,公衆衛生支援(裨益者総数235,269人,事業費総計114,243,812円)が実施された。

e その他
 文部科学省では,6月15日に「2006年5月インドネシアジャワ島中部地震による被害に関する調査研究」(研究経費1,000万円)について,科学研究費補助金(特別研究促進費)の交付を決定した。研究組織は,北海道大学,東北大学,千葉大学,東京大学,東京工業大学,横浜国立大学,豊橋技術科学大学,京都大学,神戸大学,山口大学,九州大学,首都大学東京,中央大学,独立行政法人防災科学技術研究所の研究者(計22名)から構成した。7月1日から7月8日までの期間,調査団(豊橋技術科学大学,京都大学,東北大学大学院,東京大学地震研究所,東京大学生産技術研究所など8名)を派遣した。本調査団は,建物被害が顕著であった地域において現地調査を実施し,建物の構造計画,施行実態及び地盤状況などから地震被害の要因分析等などを行った。
 農林水産省は,農業生産施設やインフラなど農業分野の被害状況を把握し,復興支援も含めた支援ニーズや支援方策を調査することを目的とし,6月6日から6月13日までの期間,調査団(農林水産省職員3名)を派遣した。本調査団は,被害状況,食料,農業生産施設の状況,復興支援のニーズ・方策などを調査した。
 JICAは,被災地救援及び復旧援助の実施内容を調査するため,ニーズアセスメント調査団(JICA,外務省,国土交通省,独立行政法人建築研究所など12名で構成)を6月5日から6月14日までの日程でインドネシアに派遣した。
 本調査団は,緊急フェーズから復旧・復興フェーズへの切れ目のない支援,技術協力・有償・無償各スキームの一体的な実施などを基本的な方針とし,①ジョグジャカルタ特別州バントゥル県を始めとする被災地の現況,インドネシア側関係機関の活動状況,他ドナーの支援活動状況の把握,②復旧・復興に対するニーズを把握し,我が国の復旧・復興支援の枠組の検討,③インドネシア側関係機関に対する,二次災害防止に関する提言などを行った。
 本調査の結果を受けて,19日から24日までの日程で概略設計調査団をインドネシアに派遣,7月28日に防災・災害復興支援無償・プログラム型(小学校2校及び中学校7校の整備,保健センター5か所(基礎医療機器の機材支援も含む)の整備を具体的内容とする)の供与されたものである(上記(4)a参照)。
 アジア防災センター(ADRC)は,5月30日から6月4日までの期間,調査団(主任研究員1名(日本人),研究員(日本人),客員研究員・和光大学助教授1名(インドネシア人))を派遣し,ジャワ島中部地震による被災状況(人的,物的被害)を把握するとともに,被害の特徴,今後の災害対応への課題,対応策について検討した。また,インドネシア政府当局者との協議を通じて,同国の中長期的な防災体制等の構築・強化について,助言を行うこととした。
 この調査は,防災の専門家によるジャワ島中部地震に関する調査としては,我が国で最も早い時期に行われたものであり,帰国後,関係省庁,関係機関から多数の参加者をえて,報告会が行われ,被災直後に得られた貴重な情報の共有が図られた。


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