6−2 有珠山噴火災害の復興対策



6−2 有珠山噴火災害の復興対策

 平成12年3月31日の有珠山噴火災害では,最大で15,815人が避難指示・勧告の対象となったものの,同年3月29日には全国で初めて噴火前に国や地方公共団体,関係機関の41機関で構成する「有珠山現地連絡調整会議」(噴火後,「有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議」に変更)が設置される等行政の迅速な対応がとられたことや,火山噴火予知連絡会,火山学者等の的確な助言を受けて噴火前の迅速な避難が実施されたことにより,人的な被害はなかった。
 政府は,平成12年3月31日13時07分頃の最初の噴火後,直ちに関係閣僚会議を開催し,「平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害対策本部(本部長:国土庁長官,場所:国土庁)及び現地対策本部(本部長:国土総括政務次官,場所:伊達市)」の設置等を決定,その後の本部会議において決定した災害応急対策に関する基本方針に基づき,各種の応急対策が実施された。
 被災地の復興のため,北海道が平成12年12月に「2000年有珠山噴火災害復興方針」を,平成13年3月には,地元の市町が策定する復興計画の指針となる「2000年有珠山噴火災害復興計画基本方針」を策定し,復興の方向性と施策の概要が示された。これに基づき,同年7月には地元の伊達市,虻田町及び壮瞥町が,それぞれ「復興計画」を策定し,被災地域の本格的な復旧・復興対策が進められている。
 政府としても,平成13年6月23日に「タウンミーティングイン北海道」を虻田町で開催し安全性のPRを行うとともに,同年6月28日には,「有珠山噴火非常災害対策本部」の廃止に併せ,防災担当大臣を議長とする「有珠山噴火災害復旧・復興対策会議」を設置するなど,被災地の「火山との共生」を目指した復旧・復興への取組を支援している。
 なお,現在も引き続き行われている主な復興事業等については以下のとおりである。 
(1)砂防・治山事業
 砂防施設については,緊急泥流対策として,災害復旧事業による埋塞土除却や火山砂防事業による緊急導流堤を設置するとともに,大規模な土砂災害に対処するため,平成13年度から,火山砂防激甚災害対策特別緊急事業により,洞爺湖温泉街を流下する西山川等の6渓流において,遊砂地及び砂防堰堤の平成17年度の概成に向けた整備が進められている。
 さらに,洞爺湖温泉東側の山ろく崩壊などによる泥流被害の危険性の高い区域では,区域内の建物を解体撤去し,平成17年度から砂防事業に着手している。
 また,治山事業については,平成13年度から,国有林,民有林とも火山地域防災機能強化総合治山事業等により,新たな治山ダムの設置や既設ダム・導流工の嵩上げ等,土砂災害等に対する防災機能強化対策を5カ年計画で進めている。
(2)交通ネットワークの整備
 今回の噴火により,道央自動車道,国道230号及び37号等が長期にわたり寸断又は交通規制され,住民生活や地域の経済活動さらには道央と道南を結ぶ広域的な物流等にも大きな影響を与えたばかりでなく,避難に際して周辺道路が渋滞するという事態も発生した。このため,将来の災害発生時における避難路として7路線の整備が進められており,現在まで3路線の整備が終了している。また,道路上に噴火口が出現した虻田町本町地区と洞爺湖温泉を結ぶ町道泉公園線は平成15年11月に復旧し,同じく被災した国道230号についても新ルートによる整備が進められるなど,防災対策を考慮した道路ネットワークの構築が進められている。
(3)生活関連施設等の整備
 上下水道については,虻田町において恒久的な施設整備を行っており,上水道については平成14年4月から給水が開始され,下水道については新設される国道230号のトンネルを利用して現在整備が進められている。
 また,噴火により被災した学校,幼稚園などの施設については,平成13年3月にとうやこ幼稚園を虻田町高砂地区に整備したのをはじめ,平成14年11月には虻田町月浦地区に洞爺湖温泉小学校の新校舎を整備するなど安全な地域への移転を終了している。
 なお,地域の基幹病院であり地殻変動による被害を受けた洞爺協会病院については,虻田町高砂地区に移転改築し平成15年5月から診療業務を再開している。
(4)生活の再建支援
 災害により住家が全壊した世帯及び避難が長期化することが見込まれる世帯等に対して,被災者生活再建支援法に基づき,延べ262世帯に対し合計約2億1千万円の支援金を支給したのをはじめ,生活資金の貸付や給付において各種支援を行った。
(5)住宅対策
 住宅対策としては,噴火後,避難所やピーク時には832世帯,2,005人が応急仮設住宅に入居するなど不自由な生活を余儀なくされていたが,住家被害見舞金や災害義援金,住宅金融公庫による災害復興住宅融資など自力で住宅を再建する被災者への支援を行うとともに,被災した公営住宅などの復旧事業として平成13年度までに虻田町内5か所に公営住宅148戸を整備し,被災した居住者の優先的な入居を行った。また,砂防事業の実施に伴い,事業予定地内にある公営住宅の移転建て替えが行われ,平成16年度に新たに178戸が整備された。
(6)活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備地域の指定
 住民の安全を確保するためには,避難道路など避難施設の整備や土石流対策等を緊急に進めることが必要であることから,被災した伊達市,虻田町及び壮瞥町のうち火砕流及び火砕サージ,噴石,融雪型火山泥流,二次泥流の災害予想範囲を重ね合わせた最大範囲の地域( 表2−6−1 )を,平成13年12月26日に活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備地域に指定した。
 これを受け,平成14年4月18日に北海道知事が内閣総理大臣の同意を得て策定した避難施設緊急整備計画に基づき,現在,災害発生時の避難路として,国道230号を含む7路線の整備が進められている。

避難施設緊急整備地域に指定された有珠山周辺地域


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