2−3 防災訓練



2−3 防災訓練

 大規模地震の発災時等には,政府,地方公共団体をはじめとする防災関係機関,地域住民等が緊密な連携のもと,情報の収集・伝達,救急・救助,医療,消火等の災害応急活動を迅速かつ適切に実施する必要がある。
 災害は多くの場合,その発生を予測できず,しかも防災に係わる関係機関は多岐にわたっていることから,防災体制の実効性を確認・検証し,多くの関係職員に防災業務を習得させるためには,常日頃から実践的な防災訓練が不可欠となる。
 防災体制を実効性のあるものとし,地域全体の災害対応力を高めるためには,防災関係機関だけでなく,事業所・ボランティア等も連携・協力し一体となって防災訓練を実施することが求められている。また,防災訓練の実施に当たっては,テレビ,広報誌等を通じた事前広報を行い,国民一人一人が,日常及び災害発生時において「自らが何をするべきか」を考え,災害に対して十分な準備を行えるよう,その意識の高揚と知識の向上を図る絶好の機会とすることが重要である。
 このような防災訓練の重要性にかんがみ,災害対策基本法第48条では指定行政機関の長,地方公共団体の長等の災害予防責任者は,法令又は防災計画の定めるところにより,それぞれ又は他の災害予防責任者と共同して,防災訓練を行わなければならない旨規定している。
 中央防災会議では,毎年度,訓練を実施する際の基本的な考え方と,政府,地方公共団体等が連携・協力して行う総合防災訓練の概要等を示した「総合防災訓練大綱」を決定し,政府,地方公共団体等の各防災関係機関は,この大綱に基づいて各種訓練の推進を図っている。
 平成17年度において実施された主な防災訓練の概要は,以下のとおりである。
(1)政府における総合防災訓練
 政府においては,これまで毎年9月1日の「防災の日」に,災害発生時の応急対策に関する準備の検証・確認と,国民の防災意識の高揚を図ることなどを目的として,首都直下地震及び東海地震を想定して,関係地方公共団体等との連携により,総合防災訓練を実施している。
a 防災の日における総合防災訓練
(a)首都直下地震対応訓練
 平成17年9月1日(木),東京湾を震源とした,マグニチュード7.3,最大震度6強の地震が発生したという想定のもと,首都直下地震対応訓練を実施した。各閣僚,緊急参集チームが総理官邸に参集したのに続き,内閣総理大臣をはじめ,各閣僚の出席の下,閣僚協議・閣議,緊急災害対策本部会議等の政府本部の運営訓練を実施した。
 また,現地訓練として,千葉市に内閣府副大臣(防災担当)以下を派遣し,千葉市災害対策本部との合同連絡調整会議に出席し,内閣総理大臣(官邸)と内閣府副大臣(防災担当),千葉市長との間でテレビ会議が実施された。
 また,千葉市(蘇我スポーツ公園予定地)において実施された八都県市合同防災訓練に連携して,警察,消防,海上保安庁及び自衛隊による広域的な地震災害応急対策訓練を実施したほか,専門のトレーニングを受けた災害派遣医療チーム(DMAT)が初参加し,関係機関の連携による広域医療搬送訓練の全行程を実施した。
 さらに,千葉市に内閣総理大臣を団長とし,防災担当大臣・国家公安委員会委員長,総務大臣,防衛庁長官他からなる政府調査団を派遣した。

 


(b)東海地震対応訓練
 静岡県中部を震源とする,地震の規模がマグニチュード8.0,最大震度7の地震が発生したという想定のもと,地震防災基本計画に基づく情報(東海地震観測情報,東海地震注意情報,東海地震予知情報)が気象庁から発表され,内閣府防災担当から関係省庁への情報伝達訓練を実施した。
 また,現地訓練として,静岡県焼津市(焼津市総合運動場ほか)に内閣府事務次官を団長とする政府調査団を派遣した。
b 政府図上訓練
(a)南関東地域直下(首都直下)地震対応図上訓練
 平成17年5月19日(木),南関東地域直下(首都直下)の地震対応政府図上訓練を総理大臣官邸内で関係省庁等からの災害対策要員により実施した。(本訓練は,もともと平成16年度の訓練として,1月に予定していたところを新潟県中越地震への対応のため平成17年度に延期して実施された。)
 本訓練は,事前に訓練シナリオを訓練参加者(プレーヤー)には知らせず,時間を追って訓練の進行を統括するコントロ−ラーから与えられる状況に従い,参加者自身が情報収集,状況判断,対応等の検討を行うというロールプレイング方式の図上訓練の手法により実施した。
 訓練は,八都県市(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,横浜市,川崎市,さいたま市,千葉市)と共同して実施するとともに,日本赤十字社,国立病院機構災害医療センター等関係機関の支援を得て実施した。
 本訓練においては,南関東地域直下(首都直下)の被害想定に基づき,政府と地方公共団体との連携等に重点を置いて,政府の初動体制と災害応急対策立案のための状況判断等を実施した。
 実施後,政府事務局の活動の実効性について評価を行い,今後改善を要する事項を明らかにした。
(b)東海地震対応図上訓練
 政府は,平成18年1月17日,静岡県にて,関係地方公共団体と連携し,東海地震を想定した図上訓練を実施した。
 本訓練は,現地警戒本部及び現地対策本部の開設・運営及び調整の能力を高め,災害応急対策業務の実践的な対応能力の向上を図ることを目的に,前述の南関東地域直下(首都直下)地震対応図上訓練と同様,ロールプレイング方式の図上訓練の手法により実施した。
 訓練参加者は内閣官房,内閣府等14機関の職員と関係9都県市(東京都,神奈川県,静岡県,愛知県,長野県,山梨県,岐阜県,三重県,名古屋市)の職員の参加を得て行われ,現地本部の訓練としては,今までに例をみない広域的かつ大規模な訓練となった。
 本訓練においては,現地警戒本部及び現地警戒対策本部の設置等の現地活動体制の確立,関係機関等地方公共団体との調整・連携等に重点が置かれ,関係都県の幹部職員も参加した合同対策本部会議における災害応急対策の活動方針のとりまとめやテレビ会議システムを使用しての政府本部への報告等を実施した。
 今後は,訓練で得た教訓的な内容に基づき,所要の改善を図り,より実効性ある体制を整備していくこととしている。

 


c 津波防災訓練
 平成17年7月23日(土)午前9時に南海トラフでプレート境界型地震(東南海・南海地震)が発生し,和歌山県御坊市で地震発生後25分に最大10mの津波が到来する想定のもと現地訓練を実施した。訓練は,和歌山県はじめ約40機関が参加し,津波情報の伝達,漁船等避難,水門等閉鎖,道路閉鎖,海上漂流者等救助,施設被害状況点検・被災施設の点検・応急復旧,道路啓開,被災者救出・救護,広域医療搬送,物資輸送など地震発生後の時間経過に合わせた訓練を実施した。
 また,内閣府官房審議官を団長とする政府調査団を派遣した。

 


d 原子力防災訓練
 原子力災害対策特別措置法に基づき,平成17年11月9日(水)及び10日(木)に,東京電力㈱柏崎刈羽原子力発電所4号機を対象として,国,地方公共団体,指定公共機関,原子力事業者等関係者約2,600人(住民約420人を含む。)が参加して,平成17年度原子力総合防災訓練を実施した。平成17年は,内閣総理大臣をはじめとする関係閣僚が参加した官邸における原子力災害対策本部会議運営訓練,経済産業省緊急時対応センターにおける国の関係省庁職員による原子力災害対策本部事務局の各機能班運営訓練,現地の緊急事態応急対策拠点施設(新潟県柏崎刈羽原子力防災センター)における国,地方公共団体,原子力事業者等の関係者による原子力災害合同対策協議会の運営訓練や,現地訓練としての住民退避・避難訓練等,初動対応に係る訓練から事後処理に係る訓練まで,原子力災害が発生した場合における一連の災害対応の流れに従って訓練を実施した。
(2)地方公共団体等における防災訓練
 大規模地震に係る訓練をはじめ,台風等風水害,原子力災害,火山災害など地域の実情に即して各種の災害を想定した防災訓練が実施され,平成16年度においては47都道府県,2,625市町村,約5万3千団体,328万人が参加して地震災害等を想定した総合防災訓練が計画・実施された(消防庁調べ)。
 また,後述のような都道府県の区域を越えたブロック単位の広域防災訓練も積極的に取り組まれており,広域的な応援体制や防災関係機関相互の連携協力体制の強化を図るとともに,地域住民の防災意識,連帯意識の醸成に寄与した。
a 八都県市合同防災訓練
 首都圏にあって政治・経済などの中枢機能が集積し,各般において広域的に関わり合う八都県市(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,横浜市,川崎市,さいたま市,千葉市)が,国,防災関係機関等と連携し,一体となった訓練を実施している。
 平成17年9月1日,26回目となる本訓練は,幹事市の千葉県千葉市において南関東地域における地震及び東海地震を想定して,「八都県市災害時相互応援に関する協定」等に基づく広域的な協力応援体制を生かした合同防災訓練を実施した。
b 近畿府県合同防災訓練
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,平成7年度から実施されている近畿府県合同防災訓練が,平成17年10月28日と29日の両日,「近畿2府7県(大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,和歌山県,福井県,三重県,徳島県及び滋賀県)震災時等の相互応援に関する協定」等に基づき,和歌山県和歌山市,田辺市を中心に実施された。
 この訓練では,関西で初めて多数の防災関係機関の参加を得て,災害対応の要員や物資等に係る広域応援を中心とした本格的な図上訓練が行われるとともに,模擬建物等の使用を抑制し,現実の災害に即して,実在する建物や道路等を使った市街地活用型の実動訓練が行われた。
(3)平成18年度における防災訓練
 平成18年度総合防災訓練大綱(平成18年4月21日中央防災会議決定)では,訓練の目的を防災関係機関の災害発生時の応急対策に関する準備の検証・確認と国民に対する防災意識の高揚とし,訓練を実施する際の基本方針として,
  ①実践的,実効的な訓練の推進と訓練の評価
  ②国の積極的訓練支援等
  ③災害被害を軽減する国民運動に寄与する防災訓練の工夫・充実
  ④年度を通じた計画的訓練の推進
 を掲げている。
 特にポイントとなるのは,首都直下地震応急対策活動要領等の新たな活動要領に基づく訓練の実施,災害被害を軽減する国民運動に寄与する訓練の実施,災害時要援護者の避難訓練の充実である。
 政府においては,9月1日の「防災の日」に,政府本部運営訓練として,新たに策定した「首都直下地震応急対策活動要領」に基づき,首都中枢機能の継続性の確保等の地震災害応急対策の実施体制の確保を図るとともに,八都県市合同防災訓練と連携して現地訓練を行うこととしている。平成19年1月に,政府総合図上訓練として,東海地震(突発的に東海地震が発生した場合)を想定し,主に政府本部事務局の業務について訓練を実施してその業務遂行能力の向上を図るとともに,併せて現地本部を通じた関係地方公共団体との連携について検証を行うこととしている。このほか,7月には,津波防災総合訓練,10月下旬には,原子力災害を想定した原子力防災訓練を実施する予定としている。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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