3−11 台風第23号



3−11 台風第23号

(1)災害の状況
 台風第23号は,10月13日9時にグァム島近海で発生し,北西に進みながら超大型で強い勢力に発達し,19日には進路を北北東に変えて南西諸島沿いに進み,広い暴風域を維持したまま,20日13時頃,高知県土佐清水市付近に上陸した。その後,台風は近畿,中部,関東地方を通過して,21日6時に鹿島灘へ抜け,9時に関東の東海上で温帯低気圧に変わった。この台風は暴風域が広く,また本州付近に停滞していた前線の活動が活発になったため,西日本から東北地方の広い範囲で暴風,大雨,高波となった。20日には,京都府舞鶴市でこれまでの記録を上回る51.9mの最大瞬間風速を記録し,また,九州から関東にかけての多くの地点でこれまでの日降水量の記録を上回る降水量を観測した。
 この台風により,死者95名,行方不明者3名,負傷者552名,住家全壊893棟,住家半壊7,762棟,住家一部破損10,834棟,床上浸水14,289棟,床下浸水41,120棟の被害が発生したほか,合計で少なくとも892,370人に避難指示・勧告が出された。
 土砂災害については,土石流179件,地すべり127件,がけ崩れ494件発生した。
 河川については,円山川水系の円山川,出石川等7水系9河川で計画高水位を超えたほか,多数の河川で警戒水位を超え,一部は危険水位に達し,各地で浸水被害等が発生した。兵庫県豊岡市及びその近傍においては,円山川水系の円山川及び出石川の破堤による浸水被害が発生した。
 また,高知県室戸市の菜生海岸で,越波で海岸堤防が部分損壊し,住家被害が発生した。
 ライフライン関係においては,東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄電力管内で延べ約1,700,000戸が停電となったほか,都市ガスについては約3,600戸で供給停止し,上水道については82,585戸が断水した。電気通信関係では,西日本において約5,820回線の電話が不通となったほか,携帯電話基地局1,107局が停波した。
 道路については,高速自動車国道,一般国道,都道府県道,有料道路等2,626か所で通行規制が行われ,鉄道については,全国各線で雨量規制等のために運休が発生した。
 また,10月20日,京都府舞鶴市の国道175号において,由良川の増水に伴う道路冠水のため,観光バス等が立ち往生した。
 公共土木施設では,河川9,824か所,海岸94か所,砂防施設等1,038か所,道路(橋梁を含む)8,642か所,港湾108か所,下水道39か所,公園124か所で被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地29,674か所,農業用施設21,825か所,林地荒廃等3,111か所,林道等8,066か所,漁港286か所に被害が発生した。
 文教施設等では,国立学校施設36校,公立学校施設826校,私立学校施設213校,社会教育・体育,文化施設等356施設,文化財等150件,研究施設等2施設に被害が発生した。
 社会福祉施設等では,老人福祉施設52か所,児童福祉施設108か所,障害者施設19か所,その他福祉施設6か所に被害が発生した。
 医療施設関係では30施設に被害が発生した。

(2)国等の対応状況
 10月20日19時30分より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,災害対策に万全を期すことを確認した。
 10月21日には災害対策基本法に基づく非常災害対策本部(平成16年(2004年)台風第23号非常災害対策本部,本部長:村田防災担当大臣)を設置し,10月21日17時30分に第1回本部会議を開催,政府調査団を派遣することを決定するとともに,下記の点からなる災害応急対策に関する基本方針を決定し,これに沿って対策を実施していくこととした。
[1]行方不明者の捜索救助に全力をあげること。
[2]引き続き迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,情報の共有化を図ること。
[3]関係地方公共団体とも連携し,応急対策・復旧等につき,政府一体となった対応を行うこと。
 10月22日,村田防災担当大臣を団長とする政府調査団を兵庫県・京都府へ派遣,林田内閣府副大臣を団長とする政府調査団を香川県・岡山県へ,岩永農林水産副大臣を広島県へ,北側国土交通大臣を兵庫県へ,蓮実国土交通副大臣を高知県へ,10月23日に常田農林水産副大臣を京都府,兵庫県下へ派遣した。
 さらに,10月27日には小泉内閣総理大臣による現地視察を実施した。
 10月20日には,岐阜県が高山市に,京都府が舞鶴市,宮津市,大江町,伊根町,加悦町,京丹後市及び福知山市に,兵庫県が洲本市,西脇市,城崎町,日高町,出石町,西淡町,養父市,黒田庄町,氷上町,津名町,三原町,一宮町,五色町,和田山町,小野市,南淡町,豊岡市及び但東町に,徳島県が鳴門市,徳島市,小松島市及び吉野川市に,香川県が高松市,坂出市,さぬき市,東かがわ市,国分寺町,三木町,綾上町,綾南町及び飯山町に,宮崎県が北川町に,それぞれ災害救助法を適用した。
 また,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を,適用日を10月20日として岐阜県高山市,京都府舞鶴市,宮津市,大江町,加悦町,伊根町,京丹後市及び福知山市,兵庫県全域,岡山県玉野市,徳島県徳島市,鳴門市,小松島市及び吉野川市,香川県高松市,坂出市,さぬき市,東かがわ市,三木町,綾上町,綾南町,国分寺町及び飯山町に適用した。10月28には,内閣府から,家屋の浸水被害の状況等を踏まえ住宅被害の認定にかかる法の弾力的な運用について各都道府県知事等あてに通知を行い,当制度の積極的な活用を図った。
 さらに,この災害について,11月26日閣議決定・12月1日公布・施行の「平成十六年十月十八日から同月二十一日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」により激甚災害として指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特例措置等を適用するとともに京都府宮津市,加佐郡大江町及び与謝郡加悦町並びに兵庫県洲本市,豊岡市,西脇市,城崎郡城崎町及び日高町並びに出石郡出石町の区域に係る激甚災害については,中小企業信用保険法による災害関係保証の特例等を適用した。
 内閣官房は,官邸危機管理センターにおいて24時間体制で事態を監視し,10月21日0時20分,官邸連絡室を設置し,関係省庁との情報連絡を行った。
 内閣府は,10月20日8時30分,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡を行った。
 警察庁においては,10月20日8時,「災害警備連絡室」を設置,10月21日18時には「非常災害警備本部」を設置して,関係情報の収集,関係機関との連絡調整及び警察広域緊急援助隊の派遣調整等に当たった。また,機動警察通信隊は関係機関への映像配信等に当たった。
 防衛庁は,10月20日14時30分,災害対策連絡室を設置,21日19時35分には防衛会議を開催,岐阜県,京都府,兵庫県,岡山県,香川県及び宮崎県の各知事からの災害派遣要請を受け,10月20日から26日までに人員約4,200名,車両約810両,航空機18機により,孤立者の救出活動,行方不明者の捜索活動,防疫活動,道路啓開作業及び給水支援等を実施した。
 消防庁は,10月20日8時30分,災害対策室を設置,さらに10月21日6時00分,災害対策本部を設置し,関係機関との連絡調整に当たるとともに,緊急消防援助隊の兵庫県への出動を要請した。同隊は延べ人員564名,ボート84隻,航空機2機により孤立住民等の救助活動,情報収集活動を実施した。
 海上保安庁では,20日23時15分,台風第23号に伴う伏木富山港海難対策室を設置,伏木富山港において座礁した海王丸から乗組員・実習生等を航空機等により救助し,排出油防除活動等を行った。また,京都府において,由良川氾濫のため孤立したバスの運転手等救助,孤立者の捜索を航空機により行った。
 総務省は,11月11日以降,京都府京丹後市,宮津市,舞鶴市,福知山市,兵庫県洲本市,豊岡市,香川県さぬき市において,関係行政機関等の協力を得て,特別総合行政相談所を開設した。また,京都府福知山市,宮津市,兵庫県洲本市,豊岡市,西脇市,養父市,城崎町,日高町,出石町,津名町,一宮町(津名郡),西淡町,香川県坂出市,さぬき市,東かがわ市及び大分県津久見市に対し,11月11日,11月に定例交付すべき普通交付税の一部を繰上げて交付した。
 財務省は,11月4日,兵庫県の一部の地域における国税の申告期限等の延長を告示した。
 文部科学省は,10月20日9時,災害情報連絡室を設置,10月21日17時30分に非常災害対策本部を設置した。
 厚生労働省は,10月20日8時40分,省内関係局庁の連絡体制を整備し,災害による事業所の休業による一時的な離職を余儀なくされた者に雇用保険の基本手当を支給する等の特別措置を実施,また,被災した事業場について,申請に基づき労働保険料の納付を猶予した。
 農林水産省は,10月19日16時,省内関係局庁連絡会議を開催した。10月28日,被害農林漁業者に対する経営資金等の融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるように関係金融機関に依頼した。
 経済産業省は,10月21日17時30分,平成16年台風第23号経済産業省非常災害対策本部を設置した。
 資源エネルギー庁は,電気料金及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。
 中小企業庁は,10月21日,徳島県,宮崎県,岐阜県(10月22日追加),兵庫県(10月22日追加),香川県(10月22日追加)及び京都府(10月25日追加)の政府系中小企業金融機関,信用保証協会,主要商工会議所,商工会連合会及び四国,九州,中部(10月22日追加),近畿(10月22日追加)の各経済産業局に対し,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融機関に災害復旧貸付の適用,政府系中小企業金融機関及び信用保証協会に既往債務の条件緩和等に関する企業の実情に応じた対応を指示した。また,11月19日,岐阜県1市,京都府7市町,兵庫県18市町,徳島県4市,香川県9市町,宮崎県1町を,信用保証協会のセーフティネット保証(4号)の対象として指定(官報告示)した。
 国土交通省は,10月19日7時21分に警戒体制をとり,ヘリコプターの活用等による情報収集を実施,排水ポンプ車,照明車,衛星通信車を現地に派遣した。
 気象庁は,防災関係機関や住民に対して適宜適切に防災気象情報を提供した。

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