3−2 住宅地



3−2 住宅地

 いわゆる新興住宅地においては,長時間の通勤を伴う生活スタイル等に起因して,地域コミュニティの形成は十分とは言えない。しかしながら,このような新興住宅地においても,旧住民を中心とした自治会,分譲マンションの管理組合,学校のPTA等の地域の核があり,そこを拠点として,人のつながりを育て,コミュニティを育成していく試みがなされている。
 他方,都心部周縁の密集市街地においては,高齢化が進み衰退しつつあるものの,昔からの地域コミュニティが息づいている。また,出火・延焼等に関する防災意識も比較的高く,阪神・淡路大震災を契機として,防災活動に活発に取り組んでいる例も多い。

(1)共通の課題に取り組むコミュニティ活動
 住宅地においては,住民の共通の課題に取り組む以下のようなコミュニティ活動が行われてきているが,そのような活動は,地域の人の絆を強化し生活を豊かにするのみならず,災害時における「助け合い」の上からも大切である。
a 谷中学校
 東京都台東区谷中においては,江戸のあるまち谷中のほっとする環境を守り育てることを目的とした谷中学校(やなかがっこう)という組織をつくり,町歩き案内,ワークショップ・シンポジウムなどの各種イベント,案内マップの作成販売,建物の保存・再生のコーディネートなど,多岐にわたる活動を行っている( http://www2.yanesen.net/yanakagakko/index.htm別ウインドウで開きます )。
b FUSION長池
 東京都八王子市多摩ニュータウン南西部の長池公園を中心とした地区においては,FUSION長池というNPOが「自由に自立した人々が創る街」を実現するため,メーリングリストとホームページを利用して地域のコミュニティを創造していこうという考えの下,地域社会のポータルサイトを立ち上げ,様々なコミュニティ活動に対し,暮らしの支援事業を行っている( ../../../../../../tolink/out1073.html )。

(2)「防災」を手がかりとした地域活動
 防災意識が高い住宅地においては,自主防災組織,自治会等を核として,「防災」を手がかりとした,以下のようなコミュニティ活動が進められてきている。
a 自主防災組織等による活動
 東京都葛飾区堀切においては,阪神・淡路大震災における密集市街地(神戸市長田区等)における建物倒壊や火災を教訓として,自主防災組織が,「わが町の防災マニュアル」の作成,防災ニュースの定期刊行等を行っている( http://matsubara.com/bousai/menu.html別ウインドウで開きます )。
 また,東京都荒川区では,救助資機材を有するレスキュー隊が住民により組織されている。高齢者等が多い地区であることから,自力で避難が困難な高齢者や障害者等の要救護者の救護をレスキュー隊と地域住民が協力して行う避難体制(「おんぶ作戦」)が昭和59年頃から整備(平成15年4月現在,58隊)されている( http://www.jah.ne.jp/%7Ebousai-c/frame_c2.htm )。
b 江戸川区なぎさニュータウンの「避難完了ステッカー」
 東京都江戸川区のなぎさニュータウンにおいては,「マンションの各棟各階ごとのフロア会が,マンション全戸にマグネット式の“避難完了ステッカー”を配布し,住民は,被災時には,当該“避難完了ステッカー”を玄関扉に貼って避難する」という仕組みを構築している。
 これにより,住民の避難状況が一目で把握でき,災害時における救助隊の捜索時間を大幅に短縮することが可能となる。
c 国分寺市「市民防災まちづくり学校」を修了した市民の活動事例
 東京都国分寺市では「防災都市づくり」を進めているが,昭和53年,防災まちづくりに取り組む人,災害に強い市民層を育てることを目的として,「市民防災まちづくり学校」が創設された。
 この学校に,国分寺市の高木町自治会の有志が参加し,高木町の問題点や長所を学び,昭和56年には市と高木町との間で「防災まちづくり推進地区の第一号モデル地区」の協定を結んでいる。この協定に基づき,高木町は,問題点の分析等の専門分野について行政のサポートを受けながら,自主的に防災まちづくりに取り組んでいる。
 この結果,高木町では,各家庭の塀の生け垣化,セットバックの推進,農地を災害時の避難場所に活用する等の多くの実績をあげている。

(3)学校を核としたまちづくり
 住宅地の子供が通う小中学校は,災害時には避難所として活用される地域の防災の拠点である。
 他方,小中学校は,平常時においては,PTA等を核にした保護者と先生の交流の場であり,また,「開かれた学校」のコンセプトにより,週末の住民のスポーツ活動,NPOの講座等のために学校を開放することも多く,学校は住宅地における地域活動の交差点ともいえる存在である。
 更に,防災意識の高い地域では,学校の「総合的な学習の時間」のテーマとして防災が取り上げられることが多いが,その場合,親,地域の大人等を巻き込んだ地域ぐるみのものとなるケースも多く,それを通じ,地域コミュニティの防災力がアップする。
 このような防災をテーマとした「総合的な学習の時間」に対して,国土交通省等においては,学習プログラムや教材の試作・提供,学習指導者用パンフレットの作成・配布,学習指導者に対するアドバイスを行うための専門家の派遣等について支援を行っている。
 以下,学校を核とした地域活動,防災まちづくり学習の具体例を紹介する。
a 秋津コミュニティ
 習志野市立秋津小学校区には,「秋津コミュニティ」という団体がある。
 「秋津コミュニティ」は,「秋津小学校区に居住・勤務している方々すべてを対象に,一人ひとりの趣味やスポーツ・文化的な楽しみを,継続的に行えるように応援する,地域の諸団体で構成された任意団体」である。秋津コミュニティでは,約20年前から学校と地域社会の連携の取り組みを進めてきている。
 秋津コミュニティの代表は,地域の人を学校に誘い,それぞれの能力をうまく引き出しながら,余裕教室を活用した「無料インターネット教室」や地域の社会教育サークルによる「学校ビオトープ(自然観察園)づくり」等の多彩な活動を繰り広げている。
 また,防災訓練を兼ねた幼稚園園庭でのワンディ・キャンプなど,防災関連の活動も行われている。
b 防災まちづくり学習
 神戸市立灘小学校では,3年生が家族やまちづくり協議会の人たちの話を聞きながら,校区内の避難地・避難路や建物の状況を調査し,防災マップとして作成する総合的な学習を行っている。
 また,高知市立大津小学校の総合的学習では,単に知識を覚えさせるのではなく,「生きる力」を最大限に引き出すために,高齢者に取材して過去の災害の状況を調査したり,防災に対する関係機関の取り組みを見学したりするなど,「自分の頭で考え判断できる力,自己評価を通じて向上する術(すべ)」を身につけていくことに主眼をおいた学習を行っており,大きな成果をあげている。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.