平成14年6月28日9時,トラック諸島近海で発生した熱帯低気圧は,同海域で29日9時に台風第6号となった。台風は発達しながら北西寄りに進み,7月9日に南大東島近海を通過し,10日には四国の南海上から関東の南海上へ進み,11日0時過ぎ,千葉県南部(館山市付近)に上陸,三陸沖を通り,同日21時頃,北海道東部(釧路市付近)に再上陸した後,12日0時にオホーツク沿岸で温帯低気圧に変わった。
3−2 台風第6号
(1)災害の状況
この台風と梅雨前線の影響で,7月9日から11日にかけて西日本の太平洋側,紀伊半島,東海地方から東北地方にかけてと北海道東部の広い範囲で大雨となった。この期間の総降水量は,岐阜県では500mm,静岡県と関東甲信地方でも400mmを超え,岐阜県根尾村では日降水量495mmを記録した。
この台風により,死者6名,行方不明者1名,負傷者30名,住家の全壊21棟,半壊29棟,一部破損210棟,床上浸水2,382棟,床下浸水7,936棟の被害が発生したほか,青森県から岐阜県にかけて延べ約19万人に避難指示・勧告が出された。
ライフライン関係においては,北海道・東北・東京・中部・北陸・関西電力管内で延べ約58,700戸が停電となったほか,28戸にガスの供給停止が生じた。また上水道についても岩手県で9,585戸が断水したのをはじめ,全国で11,673戸が断水となった。携帯電話基地局は,7局が停波した。
土砂災害については,がけ崩れ,地すべり,土石流等が合わせて全国で175件発生し,法面崩壊等により高速自動車国道,一般国道,都道府県道,有料道路で1,355か所が通行止めとなった。
鉄道関係では,JR大船渡線の一部区間が7月11日から22日まで,長良川鉄道越美南線の一部区間が7月10日から29日まで運休となったほか,全国の各線で線路点検等のため運休となった。
農林水産業関係では,農地6,956か所,農業用施設7,181か所,林地638か所,治山施設49か所,林道3,663か所,漁港等3か所及び水稲,野菜を中心とした農作物等に約620億円の被害が発生した。
(2)国等の対応状況
内閣府においては,7月10日9時20分情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁に情報連絡を行った。また,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を,岐阜県大垣市,岩手県釜石市及び東山町に適用した。
消防庁では,7月9日全都道府県に対して台風警戒情報を送付し,警戒を要請し,10日8時30分第1次応急体制をとった。
警察庁では,7月11日0時30分「災害警備連絡室」を設置した。
防衛庁は,岩手県からの災害派遣要請を受け,同県東山町の孤立住民の救出支援,給水支援,二戸市の給水支援,滝沢村の土のう積支援等を実施した。
文部科学省では,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,臨時休校等適切な対応をとるよう要請した。
厚生労働省では,岐阜県大垣市及び岩手県東山町に対し,災害救助法に基づき,避難所の設置,食品の給与等を支援した。
中小企業庁は,災害救助法の適用に伴い,政府系中小企業金融三機関や日本商工会議所・全国商工連合会に対し,災害に係る相談窓口の設置等を指示した。
国土交通省では,7月9日18時20分注意体制,10日6時30分警戒体制,13時非常体制をとり,災害査定官等を岐阜県,岩手県及び群馬県等に派遣した。
政府は,7月12日15時から,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,情報の共有を図り,復旧に万全を期すこと,接近しつつある台風第7号に対して引き続き警戒することを確認した。
また,政府はこの災害について「平成14年7月8日から同月12日までの間の豪雨及び暴風雨による災害」として激甚災害の指定を行い,公共土木施設等の災害復旧事業の財政援助措置等が講じられた。