5.阪神・淡路大震災の教訓とそれを踏まえた災害対策について2


5.阪神・淡路大震災の教訓とそれを踏まえた災害対策について
2.阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた災害対策の充実
 
(1)災害に強いまちづくり
  直下の大規模地震にも耐えうるよう、各種施設等の耐震基準の見直しが進められた。
       新しい耐震基準においては、目標とする耐震性能を2種類設け、一つには供用期間中に1,2度程度発生する確率の地震動に対しては重大な機能障害が生じないこと、二つには発生確率は低いがさらに強い地震動に対しても人命に重大な危険を及ぼさないことを耐震性能の基本的目標とした。
       
  耐震改修法の制定、耐震診断・改修促進のための支援措置が設けられた。
       既存建築物の耐震改修を促進するため、平成7年に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が制定され、それを支援する助成措置等が設けられるとともに、一部の地方公共団体でも耐震診断・耐震改修促進のための支援措置が設けられた。
       
  防災上危険な密集市街地の防災化のための法律の制定、事業の推進
       建替えに対する補助や延焼等危険建築物に対する除却勧告、新たな地区計画制度を内容とする「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」が平成9年に制定された。例えば東京都では、早急に整備すべき市街地約6,000haを重点整備地域に指定し、積極的に事業展開している。
       
  避難地、避難路等の整備、小・中学校の耐震化等地震に強いまちづくりを総合的かつ計画的に実施するため、地震防災対策特別措置法が制定された。
       本法に基づき都道府県知事が地震防災上緊急を要する事業について五箇年計画を作成した場合には、計画に掲げられた事業の一部について、国庫補助率のかさ上げ措置が講じられた。
       
(2)災害応急対策
  初期情報の収集・連絡体制を充実するため、内閣情報集約センター、緊急参集チームが設立された。
       平成7年2月に内閣情報調査室を情報伝達窓口とするとともに、大規模地震等が発生した場合、関係省庁の局長等の幹部は緊急に総理大臣官邸に参集し、内閣としての初動措置を始動するため、情報の集約を行うこととした。さらに、平成8年5月には、内閣情報集約センターを設立して災害時における情報収集の24時間体制を整えた。
       
  被害規模を即時的に推計し、初動対応に活用するための被害の早期予測システムが整備された。
       内閣府においては、地震発生直後、概ね30分以内に被害の大まかな規模を把握する「地震被害早期評価システム」を整備し、平成8年度から運用し、現在も精度を高めるための検討を進めている。
       
  関係機関との連携を強化するため情報・通信基盤を整備している。
     
  • 被災した都道府県の災害対策本部と総理大臣官邸及び国の災害対策本部を直接結ぶ緊急連絡用回線
  • 立川広域防災基地内に設置されている9防災関係機関を結ぶ固定通信回線
  • 被災映像を総理大臣官邸、国の災害対策本部等に伝送することができる画像伝送回線
  • 地方の指定公共機関との間を結ぶ衛星通信回線
  • 総理大臣官邸、内閣府、防衛庁等との間で必要最小限の通信を確保する首都直下型地震対応衛星通信回線

の整備を推進している。

       
  被災地における機動的かつ迅速な災害応急活動の推進体制を確立するため、現地対策本部を法定化した。
       被害情報、被災地の対応状況等の把握を行い、これらの情報について非常(緊急)災害対策本部や関係機関等へ伝達するとともに、現地において地方公共団体等と連絡調整を行う現地対策本部を災害対策基本法の一部を改正し法定化した。
       
  全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備された。
       広域応援態勢の整備・充実の必要性が認識され、地方公共団体、その他の公共機関等が相互応援協定を積極的に締結している。また、警察庁及び都道府県警察における広域緊急援助隊、消防庁及び地方公共団体における緊急消防援助隊の整備が推進されている。
       
  医療・輸送等に即応できる体制の整備を推進している。
       地方公共団体等では災害時の人員・傷病者や緊急物資の輸送を行うヘリコプターの離着陸地点の選定や災害拠点病院の指定を行っている。また南関東地域の大規模震災時において発災直後から重篤患者を被災地外へ円滑に搬出するための活動計画を定めた医療搬送アクションプランを策定した。
       
(3)ボランティア活動を支援するための制度等の充実
       平成10年3月に制定した「特定非営利活動促進法」においては、災害救援活動を特定非営利活動と位置づけた。さらに、国及び地方公共団体等においては、「被災建築物応急危険度判定制度」や「砂防ボランティア制度」等の制度を創設した。
       
(4)災害復旧・復興
  激甚災害指定基準を38年ぶりに見直した。
       公共土木施設等について、平成12年3月に激甚災害指定基準を改正し、指定の要件となる被害額の標準税収入に対する割合を、約1/8(本激A基準)等に緩和した。
 平成12年10月には、中小企業関係について、一の都道府県の被害額が一定額を超える場合にも激甚災害として指定できるよう新たな基準を設けた。(本激B基準)
       
  被災者の生活の立ち上がりを迅速かつ確実に支援する被災者生活再建支援法が制定された。
       自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者で、経済的理由等により自立して生活を再建することが困難な被災者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給することにより、被災者の生活の立ち上がりを迅速かつ確実に支援する「被災者生活再建支援法」が平成10年5月に制定された。
       
  住宅再建の支援のあり方について検討を行った。
       被災者の住宅再建支援については、被災者生活再建支援法附則第2条を踏まえ、平成11年1月に国土庁(現:内閣府)に「被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会」を設置した。  自然災害により住宅が全半壊した世帯に対する住宅再建支援の在り方について、総合的見地から検討を行い、平成12年12月に報告書をまとめた。
       
  防災基本計画の修正を行った。
     

 我が国の災害対策の根幹をなす防災基本計画については、具体的かつ実践的な計画とすることを基本方針とし、

  1. 地震、風水害、火山災害など災害の種類別に構成すること
  2. 災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興の各段階で実施すべき措置、施策等の記述
  3. 国、公共機関、地方公共団体等各主体の責務の明確化

など、全面的な修正が行われた。

       
     
(出典:「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」(国土庁防災局)等より作成)
 

 
 
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