5.阪神・淡路大震災の教訓とそれを踏まえた災害対策について1


5.阪神・淡路大震災の教訓とそれを踏まえた災害対策について
1.阪神・淡路大震災の教訓(主なもの)
 
(1)予防対策
  死者の多くが家屋の倒壊や家具の転倒による圧迫死だった。
       死者の死因についてみると、「家屋、家具類等の倒壊による圧迫死と思われるもの」が全体の8割以上を占めている。
       
  老朽住宅が密集し、道路も狭隘な市街地において、延焼によって多くの被害が生じた。
       大規模火災へと延焼拡大した火災の多くは、古い木造家屋が密集している地域に発生した。道路をふさいだ倒壊家屋等も延焼拡大を助長したものと見られる。
       
  建物の被害は主として現行の建築基準法の基準を満たしていない建物(既存不適格建物)に起こった。
       被害は現行の耐震基準に改正された1981年以前の建物に多く、この年を境として建物の耐震性に大きな差があることが指摘された。
       
  道路橋では1980年以前に建設されたコンクリート橋脚が破壊、崩壊したほか多くの鋼製橋脚に座屈を生じた。
       昭和55年道路橋示方書耐震設計編以前の基準により建設されたコンクリート橋脚は、水平方向の鉄筋量が少なくじん性に乏しかったことが原因と見られる破壊、崩壊を起こした。
       
(2)応急対策
  官邸への情報連絡をはじめとして、国全体の情報連絡・初動体制が遅れをとった。
       関係省庁からの情報の集約を十分に行えなかったことから、情報が官邸に十分伝わらないという問題点が指摘された。
       
  大震災直後には被害の確定情報が迅速に収集できず、死者数や建物倒壊数等の被害規模の把握が困難であった。
       被害規模を即時的に推計し、それを初動対応にも活用できるような被害の早期評価システムを開発する必要性が認識された。
       
  地方公共団体相互の応援協定は一部についてはあったものの、要請・ 応援のシステムが円滑に作動しなかった。
       地方公共団体、その他の公共機関等の相互応援協定等、広域応援体制の整備・充実の必要性が認識された。
       
  道路の損壊及び車両の集中による極度の渋滞に加え、鉄道及び港湾の損壊も著しく、要員、物資等の緊急輸送に著しい支障が生じた。
       被災地内の激しい道路渋滞は、食料・物資の輸送を著しく困難にした。緊急輸送ルートの確保の重要性が再認識された。
       
  物資・食料の受入は、被災自治体の市役所・区役所などで行われた。保管場所・人手不足の中での物資積み卸しはたいへん混乱した。
       多数の避難住民に対する生活必需物資の提供のための事前の準備、特に物資の調達方法や輸送拠点の確保等の必要性が再認識された。
       
  被災地の医療機能が低下するなか、迅速な対応を要する負傷者の搬送活動が必ずしも十分に行われなかった。
       多くの医療施設が建物被害を受けたほか、建物被害を免れた医療機関も、ライフラインの寸断や医療機器破損などにより、医療機能は大きく低下した。また、病院外でのトリアージ(患者選別)がほとんど行われなかったため、医療機関には死者や軽傷者、重傷者などの患者が選別されずに殺到した。
       
  患者搬送にあたっては最も威力を発揮するヘリコプターは、震災直後には十分活用されなかった。
       緊急の患者搬送に最適なヘリコプター輸送は、初日には1件のみ、本格化したのは4日目以降であった。ヘリコプター活用が低調だった理由として、平常時における医療機関等の活用経験がほとんどなく関心が低かったことが挙げられる。
       
  被災地域では、消火栓が使用不能となり、防火水槽のほか、プール、河川、ビルの水槽等の水も使われた。
       防火水槽の中には被害を受けたり倒壊家屋によって使用不能となったところもあり、使用できたところも水はすぐに尽きた。このため河川やプールなど多様な水利が利用された。神戸市長田区では、海水を利用した消火活動が実施されたが、ホースは東西方向の通過車両に踏まれ、何度も破裂した。
       
  ボランティアによるきめ細やかな諸活動の有用性が明らかになったが、受付窓口の開設や業務の振り分けなどの体制の整備、医療や建築技術、福祉など専門技術を提供する専門ボランティアの重要性が指摘された。
       阪神・淡路大震災においては、地震発生直後から13か月間でおよそ140万人のボランティアが各地から駆けつけ、個別の住民ニーズに対してきめ細やかに対応した。
 一方で神戸市では、ボランティアの受付窓口を開設したが、申し込みが殺到して中止せざるを得なかった。
       
(3)復旧・復興対策
  災害弱者の生活再建や商店等の経営再建に困難が生じた。
       住宅の被災や復興の過程で、住民が分散転居したことによって、それまで地域コミュニティが担っていた相互扶助機能が失われ、高齢者等災害弱者の生活再建や小規模経営の企業・商店の経営再建に困難が生じた。
 

 
 
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