5. その後の観測データの蓄積や新たな知見について


5. その後の観測データの蓄積や新たな知見について
 
2-3 GPSデータによるバックスリップ分布の推定
 
 鷺谷(1998)は1997年1年間のGPS観測による変位速度データを用い、測地データのインバージョン解析を行い、東海地域下のプレート境界面におけるバックスリップ分布を推定した。その結果が図2-2である。
 これによると、バックスリップの大きな領域は御前崎周辺から遠州灘の沖合いにかけて存在していることがわかる。また、バックスリップの方向は、駿河湾周辺では北北西向きであるが、計算領域の西では北西方向に向きを変えている。このことはフィリピン海プレートの沈み込み方向が場所により変化していることを示唆している。
 
図2-2 鷺谷(1998)により推定されたプレート境界面におけるバックスリップ分布
 
2-4 バックスリップ分布と微小地震による固着域との違いに ついて
 
 鷺谷(1998)によるバックスリップ分布から推定されるプレート間のカップリング領域は松村(1996)による固着域と異なっているように見える。これに対して、松村(1999)は有限要素法によるモデル計算結果から、地表の地殻変動から解析されるバックスリップ分布は、本来の固着域を含みそれよりもさらにトラフ側への広がりを見せることは自然であるという考えを述べている。

《文献》
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