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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
津波浸水早期評価システム
 

2-2 作成手法
 これまでの津波浸水予測図の作成にあたっては、想定する津波を過去の経験によって設定することが多かったが、発生頻度が少ない津波に対しては過去の経験だけでは必ずしも十分ではないという問題点があった。

 そこで、国土庁では、気象庁、消防庁とともに、近年の津波に関する研究結果や、コンピュータに関する技術の進歩を踏まえ、地震断層モデルと津波の挙動のシミュレーション技術を活用した津波浸水予測図作成手法を、「津波災害予測マニュアル」としてとりまとめた。この度、国土庁で作成した津波浸水予測図の作成手法は、この「津波災害予測マニュアル」によっており、その概略は図−2に示すとおりである。
(1)計算領域の設定
 1回の計算で対象とする範囲(領域)の設定を行った。1領域の大きさは一辺30〜50㎞程度の長方形とし、各領域は後述する気象庁の新しい津波予報の予測地点に対応させた。日本全国の海岸(有人の離島も含む)を領域設定の対象とし、全部で412領域を設定した。

 また、各領域にとって最も大きな津波を発生させると考えられる地震断層モデルを設定した。

(2)過去の津波事例の調査
 計算結果の妥当性を検証するために、過去に発生した代表的な津波における各地の浸水深さ、地震断層モデル等の資料を収集した。

(3)計算各子の設定
 計算の精度、費用等を考慮して、計算格子を100mに設定した。

(4)地形のデジタル化
 地形図および海底地形図を用いて、地形のデジタル化を行った。ここで、河川は幅員200m以上の区間のみを、湖は海と接している幅が200m以上のもののみを考慮の対象とした。また、防波堤や水門等の防災施設による効果 は、考慮していない。

(5)津波波形の設定
 各領域において、津波の高さが2、4、6、8、10mの5通りとなるよう、津波波形の設定を行った。ただし、地震断層モデルから想定される最大津波高さが10m未満の領域では、その津波高さを最大としてそれ以上の津波高さは設定しなかった。

(6)計算条件の設定
 摩擦係数(海底および陸上)、計算時間間隔等の計算条件を設定した。

(7)数値計算の実行
 「津波災害予測マニュアル」に示される計算方法に従って、数値計算を実行した。

(8)計算結果の吟味
 設定した津波の高さや地形から浸水域と深さが妥当であるかどうかの検討を行った。過去の津波事例が得られている領域では、計算結果 をそれと比較することによって、その妥当性を検証した。

(9)津波浸水予測図の作成
 計算結果を1/25,000地図上に表現した。計算結果は100m格子のデータであるが、これを1m間隔の等浸水深線として表現し、色分けを行った。

(10)計算結果のファイル化
 計算結果をファイル化し、データベースとして利用できるようにした。

 

3. 津波浸水早期評価システム
3-1 概要

 津波浸水早期評価システムは、津波浸水予測図作成の際の計算結果のデータベースを活用して、気象庁の新しい津波予報において発表される予報区と具体的な津波高さをもとに、津波浸水予測データベースの中から該当する個所を検索して画面 上に表示するというものである。これによって、地震発生直後(概ね30分以内)に津波による浸水域やその中に含まれる建物棟数や人口等の概略を評価することができ、政府の初動対応が迅速化することが期待される。

 

3-2 新しい津波予報
 気象庁が平成11年度から運用を開始した新しい津波予報では、図−3に示す予報区ごとに、予想される津波の高さが具体的な数値(0.5m、1m、2m、3m、4m、6m、8m、10m以上の8段階)で発表される。

 気象庁では、日本周辺の沿岸から約600㎞以内の海域に約4000点の震央を想定し、その海域に発生する標準的な地震断層モデルを設定し、マグニチュードと断層の深さを変えながら津波の数値シミュレーションを実施して計算結果 のデータベース化(約10万件)を行っている。地震発生時にはその震源やマグニチュードに対応する計算結果 をデータベースから検索し、上記のような津波予報を発表するのである。

 気象庁のデータベースでは海岸線に沿って20〜30㎞おきに設定された予測地点ごとにデータをもっている。1つの予報区には複数の予測地点が含まれるが、津波予報で発表される津波高さは、このうちの最大値である。

 

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