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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
津波に対抗する地域社会について
 

 ワシントン州危機管理部が担当している別の多州間プロジェクトとして、米国地質調査所(USGS)のブライアン・アトウォーター氏や他のスタッフとの連携プロジェクトがある。それは "津波に打ち勝つには − チリ、ハワイ、日本からの教訓"(Atwater, B., et al.) という評判の良い小冊子であり、これにはいつの日にか自分を守るために必要となるかも知れない、沿岸地域の住民のための教訓が記されている。1994年には、沿岸地域の多くの住民が、世界各地で津波がどのような猛威を振るっているのかほとんど知っていなかった。2000年になると、この小冊子によって、世界の人々が実際にどのような被害を受けたか、またどのような被害を受ける可能性があるのかが分かり、さらに最も役立つものとして、津波に襲われた人々の経験を通 じて実際にどうすれば各種状況下で津波から身を守れるのか、現実的なアドバイスを得られるようになった。

 カリフォルニア州は、最近 "建造物と土地の使用についての地域的津波防災要綱(Local Tsunami Hazard Mitigation Guidance for Buildings and Land Use)"と呼ばれる多州間プロジェクトを完成させた。オレゴン州危機管理部は、現在、"津波警報システムと発令要綱(Tsunami Warning System and Procedures Guidance)" の最終草案を作成中である。この草案は、津波防災事業の承認を得た後に、各州共同のワークショップにおいて各地域の危機管理担当者に提示されて、知識の確保や訓練のために使用される。1994年には、地元地域の危機管理担当者のためのこのようなツールは存在していなかった。2000年になると、彼らは、これらのツールを使って地域の津波安全性を高められるようになった。

 1999年までに考案されたツールや活動の写真や詳細な内容は、"1997-1999年の津波防災小委員会の活動:運営委員会に対する報告(1997-1999 Activities of the Tsunami Mitigation Subcommittee:A Report to the Steering Committee)" の中に収められている。それらは、戦略計画の分野と州ごとに分類されて、活動マトリクスの中にまとめられている。それには、各州の津波防災事業が詳細に述べられ、また州ごとのケーススタディも含まれている。よく利用されている多くの教育資料の写 真や詳細な図なども含められている。それぞれのツールについてもっと詳しく知りたい場合の連絡先も記されている。

 

1994 年ほとんど無防備から、2000 年の大幅な防備増加へ
 1994 年の西海岸を再度訪れて、なぜこのような活動やツールが開発されるに至ったのか、今一度その経緯を見てみることとする。1994年の津波警報の後の各コミュニティの遅れを取ったとの思いは、地域の意志決定者達と話してみれば、すぐに分かることであった。それから数日の間に、私は、西海岸の 14 のコミュニティ、米国内の他の地域の 11 のコミュニティ、カナダの 3つのコミュニティにおいて調査を行った。この報告では、米国内の 11 のコミュニティに対して行った調査の結果を報告する。津波警報に対する対応は、似たような地域のコミュニティでも違いがあったように見受けられたので、そのような対応の違いの有無を調べた結果 、違いがあったことが確認された。米国内の 11 のコミュニティのうち、

45%のコミュニティでは、警報の情報が不明確であった。
64%は、地域にどのような危険があるのか不明確であった。
64%は、情報が遅すぎた。
36%は、地域の津波専門家と協議した。
73%は、津波被害を受けそうな重要施設を持っていた。
73%は、市としての津波防災計画を持っていた。
27%は、数分内に歩いていけて津波を避けられそうな高い場所を持っていなかった。
36%は、地震を併発した場合、避難ルートに地滑りの危険があった。
64%は、避難ルートに強度が不十分な橋があった。
54%は、津波警報を鳴らせるようサイレンをセットしていた。安全な避難に要した時間は、平均で2 時間であった(30 分から 6 時間までの差があった)。しかし観光客がピークに達する時期であったなら、コミュニティによっては、その時間は 2 倍から 3 倍にもなっていたと思われる。
82%は、対応レベルを決めるのにハワイに達する津波の高さを使っていた。
18%は、市として避難を始めていた。
18%は、幾つかの施設から人々を撤退させていた。
64%は、待機態勢を取っていた(中には、不安を感じながら待機していた地域もあった)。

これらの調査の結果、コミュニティには幾つか切実なニーズが有ることが分かった。1994 年の調査の結果は、次の通りであった:

1)警報情報システムを向上させる必要がある
2)津波脆弱性と防災体制のレベルは、コミュニティによって色々な違いがある
3)10 月 4 日の津波警報に対する反応は、コミュニティによって大きな違いがあった(Jonientz-Trisler, C. 1994)

上記結論から引き出された今後への要望は、次の通りであった:

1)情報をもっとタイムリーで使いやすいものとする
2)科学者と津波対策担当者の間のコミュニケーションを円滑にして、科学者は津波対策担当者のニーズをくみ取り、対策担当者は科学的ツールの限界を理解することとする
3)地元に及ぶリスクの識別、専門知識、訓練、警報設備など、コミュニティが必要としているニーズを満たす
4)コミュニティに対するメッセージやコミュニティの対応に一貫性を持たせるべく、地域的戦略を立てる
5)10 月 4 日の経験を遠くで起こった津波と近くで起こった津波に対する対応例として今後に活かしていく

 これらの要望は、津波に強いコミュニティを作っていくための方法として、コミュニティから出された考え方でもある。

 

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