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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国地震被害軽減プログラム(NEHRP:The National Earthquake Hazards Reduction Program)の戦略プランについて
 

戦略計画の策定について
  米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)は、地震の危険性が高まっていることを危惧して、防災関係機関の科学的な目標および地震防災事業の戦略の見直しを行い、また2000-2005年までの 5年間の展望と優先事項の検討を行った。この見直しと検討の結果、新しい戦略計画が設定された。その新しい戦略計画は、地震安全性の高いコミュニティを作り出すには、いかにして効果的、長期的、かつ達成可能な戦略を策定すべきかを概説したものとなっている。それはまた、米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)の研究、開発、実施の間のバランスの必要性について触れ、同事業の継続である研究、開発、適用、実施という 4つの主要目標を中心に構成されている。これらの目標は、地震被害防止という地震防災事業の使命の基盤を成すものである。これら4つの目標は、いずれも順位は同一であり、また相互に依存しあうものである:

A. 効果的な地震防災対策と政策の採用を促す。地震防災活動を推進し、またそのような政策や方策の採用、実行、施行を行う組織を支援する。また、その効果を評価する手法を開発する。
B. 施設やシステムの地震脆弱性を低減する技術を向上させる。設計施工や土地利用計画を先導するツールを開発、改良、普及させ、専門技術を高める。
C. 地震危険度の識別手法、危険評価手法を向上させ、それらの使用を推進する。地震関連の危険度を正しく提示するツールを開発、改良、普及させ、また地震危険度を量的に評価する。
D. 地震とその影響および結果について理解を深める。地震に至るプロセスと関連の危険を理解するための研究、および工学的、社会的、経済的知識を進めるための研究を支援する。

 これらの目標は、単独で存在するものではなく、ある目標の下で得た知識が他の目標の下での研究、開発、実行に役立つというように、互いに深く入り組んでいる。そのため、地震防災を全体として成功に導くためには、上記 4つの分野の努力を適切に調整しバランスを取ることが必要となってくる。

 これらの主要目標とそれらの根底の各種の目的を達成するためには、それぞれどのような活動を成すべきか特定する必要がある。それらの活動は、地震防災事業のドラマチックな方向転換を意味するものではなく、それどころか、これまで行ってきた確立済みの活動に新しい戦略領域を加えて、継続的に活動を続けていくことの重要性を強調するものである。それらの新しい領域とは、最近の技術の進歩によってもたらされたものであり、それらによって、地震脆弱性の低減に通じるこれまで見られなかったほどの知識の急速な進展と現場への適用可能性が開けてきた。それらの中で特に将来性があると思われる領域は、次の5つである:

(1) 性能に基本を置く設計手法の開発;
(2) 先進の記録技術や通信技術を利用しての地震モニタリングネットワークの向上;
(3) 工学的シミュレーションおよび構造性能試験;
(4) GPSや衛星を利用しての地殻変動の測定;
(5) サンアンドレアス断層の物理的性質についての現場測定。

 米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)は、これらの研究開発プロジェクトに加えて、被害低減政策の向上、技術譲渡の向上、地震問題に関する教育の拡張、地震防災についての意識の向上などにも力を注いで行かなければならない。地震防災事業の研究開発努力を実際の被害低減に結びつけて行くためには、上記のような実際的な活動が不可欠である。

 米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)への現金の形での支援が、この事業が始まって以来、大幅に減少してきたことに注意を向けてほしい。そのため、同事業の関係機関は、今や最優先と見なされる継続的活動の遂行にも困難を感じている状態である。上に記した 5つの有望分野のいずれも、かなりの資金提供を受けなければ、研究がやっていけない分野である。明らかに、もし国が地震被害にめげない安全なコミュニティの創出を今後も望むのであれば、地震防災事業の今の資金不足は早急に取り組まなければならない課題である。

 戦略計画の運営は、地震防災事業に参加している 4つの機関が共同で行っている。各機関は、地震防災事業の使命にも向けられたそれぞれの組織の強味を持ち寄って、協力して戦略計画に示された色々な活動に専心している。それらの機関の協力が重要となる分野は、次の通りである。

・ 全てのレベルにおける省庁間の調整
・ 地震発生後の調査に関する調整
・ 情報の普及
・ 省庁間のインターネット活用
・ 省庁にまたがる活動の調整
・ 外部の利害関係者との調整

 戦略計画は、概念作成から、計画、実行、評価、改善、報告へと流れる一連のプロセスである。担当機関が 2年ごとに見直しを行って、戦略計画の実行状況を評価し、それまでの経験に基づき地震防災事業の焦点を洗練化させている。この 2年ごとの見直し作業は、地震防災事業が議会から求められている報告書の提出時期と一致している。さらに、5 年ごとに戦略計画の包括的見直しが行われ、結果によっては、同事業の活動内容が大幅に変更されることもある。戦略計画の策定と実行に責任を負う地震防災事業の省庁間調整協議会(ICC:Interagency Coordination Council)が、これらの2 年ごとおよび5 年ごとの見直し作業を先導する。

 

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