jishin

EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
東京ガスにおけるリアルタイム地震防災 -SIGNALを中心として-
 

3.2.2 地震動モニタリングシステム
 SIGNALは、首都圏356ヶ所に設置された地震センサーにより地震動モニタリングを行っている。図4は地震センサーの配置図である。地震センサーのデータは全て自営無線により送信されるため地震時にも輻しんが無く信頼性は高い。地震センサーの中核をなすのは、331ヶ所に設置したSIセンサーで、地震動のSI値と最大加速度を観測している。 また震源、マグニチュードを独自に推定するために、供給区域の外周部5ヶ所に基盤地震計を設置している。基盤地震計は地下20〜40mの工学的基盤に設置し、3方向成分の加速 度波形を連続的に測定、送信している。さらに地盤の液状化が、埋設導管の被害率を増大させるため、地盤の液状化の状態及ぴ程度を把握するために、液状化する可能性が高いと推定される地区20ケ所に液状化センサーを設置している。

(1)SI値とSIセンサー
 SIGNALの地震センサーの中で中核をなすSIセンサーについてその概要を説明する。地震動が構造物に及ぼす影響は、その地震動が構造物をどのくらい揺らす能力があるかに関わる。その能力を表すものの一つに速度応答スペクトルがある。ほとんどの構造物は固有周期が0.1から2.5秒の間にあり、その間の平均をとったスペクトル強度 (SI = Spectrum Intensity)をG.W.Housnerは、地震動強さを表す指標として定義している(図5参照)。また、図6に示すように、過去の地震動記録から、このSI値と被害の相関がかなり高いことが明らかになったことから、このSI値を測定するセンサー(SIセンサー)を東京大学生産研究所と共同で開発し2)、現在、331ケ所のSIGNALシステムのSI観測網に用いている。このSIセンサーはサーボ型加速度ピックアップをX、Yの2方向に配置し、簡易な近似計算を用いてSI値を計測するセンサーである。

  また、阪神大震災等における低圧ガス導管のネジ継手管被害率と被害地域のSI値の関係を図7に示す。これによればSI値が高くなるほど被害率が増加することが明らかで、被害推定を実施する際にSI値を測定する事が重要であると言える。

(2)液状化センサーの概要
 阪神大震災時にも海岸部で大規模な液状化が発生しているが、水道管やガス管などの地中埋設物は、地盤が液状化した場合は、しない場合に比べて数倍〜10倍の被害が発生することが、過去の地震被害から報告されている。つまり、SIGNALで地震後の導管被害を推定する際は、液状化の発生及びその程度を把握することが重要となる。さて、液状化現象は、砂粒の間の水圧(間隙水圧)の上昇で捕らえられることが明らかにされている。
間隙水圧を直接測定するセンサーは市販されており、測定精度も良いが、地中に埋設してしまうため長期の使用に耐えず、メンテナンス性に問題があるため、常時地震待ちの測定 には不適である。そこで、メンテナンス性の良好な計測装置の開発が必要となった。液状化センサーは、間隙水圧の変化を中空パイプの中の空気室の圧力と水位の変化に置き換えて観測することで全ての測定器を地上部に設置可能となりメンテナンス性の改善を図ったものである3)。

3.2.3被害推定システム
 過去の地震発生時の導管被害を分析した結果、被害率とSI値の間に極めて良好な相関があることを利用してSIセンサーからのデータを基に図8に示すように埋設管の被害を地震発災後10分以内に推定する。被害推定は、まず331ヶ所で測定されるSI値を入力値としてメッシュ毎の標準被害率を求めることから始める。地盤ゾーニングの結果を用いて、メッシュのSI値は同種地盤に設置された至近のSIセンサーの値を入力値としている。標準被害率は、過去の地震による被害事例から求めたSI値を関数とする経験式により算出しており、液状化が発生した際はその程度に応じた被害の増加率を標準被害率に乗じて液状化を考慮した被害率を求める。最後に管種、口径の補正を行った後、埋設管延長を被害率に乗じてメッシュ毎の被害数が求まる。このメッシュ毎の被害数の合計で例えばある地域での被害数を求め、供給停止等の緊急措置の必要性を表1のように判断することになる。また、地震発災直後にガス管の被害の全体像が把握できるため、効率的かつ迅速な復旧計画の立案が可能である。

 

前へ】【一覧へ】【次へ


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.