地域コミュニティの力を活用した風水害対策の活動事例

(3) 静岡県伊東市宇佐美区自主防災連合会

地域の特色

 

宇佐美地区は、熱海市に隣接する伊東市の北部に位置し、海に面し、山を背にする風光明媚な地区である。市内には210数箇所の土砂災害危険箇所があるが、宇佐美地区は39箇所と土砂災害危険箇所が多い。10,583人、4,569世帯(平成18年3月現在)が居住している。宇佐美区自主防災連合会は、13区の地区が連合してできた自主防災組織である。

防災活動の状況

伊東市では、昭和50年代から東海地震に備えた対策をとってきており、近年は伊豆東部火山群対策等にも取り組んできている。毎年、7月の第1土曜日には津波危険地域における津波避難訓練、9月1日には総合防災訓練、12月の第1日曜日は「地域防災の日」として地域の防災訓練を実施している。宇佐美地区でも9月1日に総合防災訓練を実施するなどしており、各地区の指定された避難場所への避難訓練(集合〜点呼)、消火訓練等を行っている。

災害時の対応

平成16年10月に、台風第22号と第23号が続けて来襲した。台風第22号で伊東市では死者1名、軽傷者77名、全壊98棟、半壊182棟、床上浸水18棟、床下浸水52棟の被害が発生し、災害救助法の適用を受けた。宇佐美地区では、2地区の被害が大きく、浸水家屋が出たほか、風害による被害が大きかった。市は避難勧告等を出さなかったが、地域の活動拠点である宇佐美コミュニティセンターには、10月9日から被災した住民が避難し、コミュニティセンター職員、宇佐美女性の会、女性連盟、民宿おかみの会、市職員などが炊き出しを行った。


■台風第22号による伊東市内の被害発生状況(写真提供:静岡県)

台風第22号で避難していた人は10月18日には2名までに減っていたが、台風第23号が襲来する危険が迫った10月20日には、市が避難勧告を出し、広報車や消防団員が避難を呼びかけたこともあって、土砂災害危険のある地区に住んでいる人など148名が、再びコミュニティセンターに避難した。翌21日には、危険が去り、全員が退去した。10月9日から21日までに、宇佐美コミュニティセンターには、延べ517名が避難した。  宇佐美区自主防災連合会の役員等は、地域の被害状況を把握して市に報告、復旧活動等の支援にも力を注いだ。また、少し遅れて、伊東市社会福祉協議会(市ボランティアセンター)を通じて宇佐美コミュニティセンターに現地ボランティアセンターが設置され、10月12〜17日にかけて市内外からボランティアが集まり(延べ346名)、残材の処理、土砂除去等の活動にあたった。 宇佐美区自主防災連合会は、住民からのニーズの把握などに努め、復旧活動やこれらの活動の支援(まとめ役)にあたった。(平成17年静岡県自主防災活動知事褒賞を受賞)

今後の課題

13ある地区自主防災会のうち、町内会長(2年で交替)以外に防災担当者を置いている地区は2地区しかなく、水害を経験した役員が交代してしまうなど、経験が継承されない傾向にある。4〜5年は継続してほしいので、防災専任者を各町内会に置くことが課題である。 防災訓練については、訓練会場となるスペースがないため、津波危険地区内で消火訓練を行うなど、実態と異なる訓練を行っている面があり、改善の余地がある。また、要介護者を町内会で把握したいと思っているが、個人情報保護法の絡みで、情報が収集できなくなってきていることが問題となっている。

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