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ボランティア活動を担う人材育成及びボランティア活動の経験の地元での活かし方

司会:菅磨志保(人と防災未来センター研究員)

(以下、司会者は「司会」、敬称略)

【午前の部】

司会

 分科会D「ボランティア活動を担う人材育成及びボランティア活動の経験の地元での活かし方について」を開催いたします。私は司会をさせていいだく「人と防災未来センター」の研究員の菅と申します。よろしくお願いいたします。

 この分科会を私なりに解釈した所、他の3つは災害の対応について検討される分科会と思いますが、この分科会は被災直後のボランティア活動などの経験を活かすため、日常からどんなことをすれば良いのか、特に人材育成の観点から議論していきたいと考えています。

 これからの4時間の分科会の進め方について、5点ほどお願いしたいことがあります。

 まず1点目として、ここには内閣府の担当者や政府関係者もオブザーバーとして参加していますが、この「つどい」は政府の意見や見解を求める場ではありませんので、ご理解をお願いします。ボランティア関係者の意見をなるべく多くお聞きするように時間を割きたいと思っています。

 次に、時間割、時間の使い方ですが、午前中は12時半まで、これから1時間半を使って分科会の前半の議論を行いたいと思います。昼休みの1時間を挟んで、1時半から後半の議論に入りたいと思います。その後、全体会において分科会の議論の内容を報告することになっています。そこでは10分程度報告することになっていますが、私以外にも、お願いできる方にお手伝いいただいて、一緒に報告ができたらと思います。

 3点目、発言に関してですが、予め申し込みの際に10分程度の発言を希望する人を募っています。ただ、この分科会Dは参加者が多く、10分間フルを使っての報告だと、それだけで時間が終わってしまいます。そこで5分から7分位でお話を伺い、他の方にもご意見を伺いたいと思います。事前申込みしている以外の方からもお話を聞きたいと思っていますので、できるだけ手短にお話するよう、ご協力をお願いします。

 4点目ですが、この会の様子を録音して記録します。発言の前に氏名と所属を発表して下さい。2度目の発言に際しても同様にして下さい。また、マスコミにも公開しています。議論の内容について参加できなかった方々の関心も高いと思います。後日、事務局の方から発言者に確認を取った上で内閣府のHPに公開する予定でいます。

 最後ですが、記録を確認するために、これから回覧する座席表にフルネームで記入し、お隣に回して下さい。よろしくお願いします。以上、駆け足でしたが、これからの会議の進め方として確認させていただきました。

 それでは順次、発表と意見交換を行ってまいります。事前にいただいているペーパーから指名させていただく形でお願いします。この分科会は人材育成がテーマとなっています。また、新潟県中越地震や台風災害の援助に行かれた方々が多くいると思いますが、そこでの活動報告ではなく、その中で得られた人材育成に関することを中心にお話していただければと思います。それでは最初に、「湖西市災害ボランティア」の前田様からお願いします。

前田(湖西市災害ボランティア) 

 人材育成の話は私からは無理だと思います。私自身が育成されている過程で、これからも勉強や経験を積まなければと思っています。新潟県中越地震を経験した点から自分たちの住んでいる地域の人々の心構え、団体との関係作りを作らないとだめだと認識しました。自分たちが震災にあった場合、自分たちは何ができるのかを考えた場合、自分たちには不備な点がたくさんあることに気付きました。地域の人々に、震災に見舞われるとどのような状況になるのかを、知らせることが大事なことだと思います。

 私の住んでいる浜松では地震が少なく、「東海地震」と言われて久しいけれど住民はピンと来ていない。何だか人事のようにのんきに考えています。地域住民の心構えを築くための具体案として、行政と協働してお話をする場を作りたいと考えています。同時に12月5日の突発地震を想定した防災訓練なども、訓練の仕方そのものを変えなければと思っています。炊出しや初期消火など事後の対策も良いけれど、予防的な考え、行動をする必要があると思います。私自身は、小さな市ですが、勉強会を開いたり、実際に体験コーナーなどを作ったりして、皆さんといっしょに活動を行っていますが、もう少しそうことが広範囲にできるような体制を、周辺の市町村ともいっしょになって、人材の養成などをやっていきたいと思っています。

司会

 どうもありがとうございました。事後の対応より、予防にどう取り組むかというお話しだったと思います。それでは、次に「NVN日本沼津災害救援ボランティアの会」の石川様にお願いいたします。

石川(NVN日本沼津災害救援ボランティアの会)

 「NVN日本沼津災害救援ボランティアの会」の事務局の石川です。よろしくお願いいたします。NVNでは青少年の育成に力を注いでいます。

 今回の新潟県中越地震では、第4陣目のボランティアとして中高生のボランティアバスを募集しました。そうしましたら、20名の募集に35名の応募がありました。残念ながら15名は乗車出来ずに大変申し訳けなく感じています。

 今回の地震でも、中高生たちから電話がかかってくるんです!。『募金はしました。励ましの手紙は書きました。でも、現地の様子を直接知りたい! 現地に行かせてほしい!』、と言うんです。災害地にはそれほど簡単には行けないと言うことで、第3陣までは大学生を連れて行っていたのですが…

どうして中高生たちからそういう声があがってくるか?と言うと、あの阪神・淡路大震災以来、ボランティア元年と言われておりますが…全国の学校教育のなかでもボランティアがいろいろ取り上げられ言われていて「誰かのために何かをしてあげたい」という気持ちがあるわけです。そのような経緯からNVNはそれをどのような形で具体化してあげられるかを考え今回実践したわけです。

 日常的に当会では「NVNクラブ」という青少年組織を作っていまして、年間を前期と後期に分けおよそ20名くらいで月に2回、防災と福祉の活動をやっています。例えば、防災カルタを作ろうとか通学路DIGとかで、このNVNクラブのテーマは「楽しく、おいしく、美しく」を、モットーに活動しています。

 現在は小中高校生から大学生そして大人では85歳のお年寄りまでが沼津市青少年センターに集います。…実は今日もあったのですが、この集いのために延期にしました。

 私たちは「東海地震」が襲ってくると言われている静岡県沼津市に住んでいますので、子どもたちに防災意識をしっかりと植え付けたい!青少年が楽しく学ぶことは大事だけれども、楽しく学ぶにはどうするか?を一緒に考えながら活動しています。毎年学校でも訓練があります、地域でもまた防災訓練がありますが、そういうところになるべく積極的に参加していこう!…と進めて、活動しています。

 また子供たちを公の場に出すことも必要だと思って、この7日に沼津市秋の教養講座で私が講演をすることになっているのですが、新潟県中越地震で現地川口町などにボランティアに行った青少年を市民80人から100人ほどの前に立たせて話してもらうよう頼んでいます。

 また、弱者と呼ばれる身障者の方々とも交流をしていますが…しかし実際に震災に見舞われたらすべての人が災害弱者になる可能性が高いわけで、その時は青少年が自発的に若い力を存分に地域のために注いでもらいたいと考えています。

 毎年夏には箱根でキャンプを行なっていますが、大人になった青少年たちも参加し今の小中高校生たちと交流をしています。この約10年の活動をしていて今回一番嬉しいことは、子どもたちが自発的に後方支援でも良いから新潟の人のために何かをしてあげたいと言ってきたことです。今後の10年は、日本全国隣組の助け合いという形での展開ができればと考えております。

司会

 なかなか防災というテーマで楽しく取り組んでいくというのは難しいと思いますが、でもそこをやらないと広がっていかないということもあると思います。またいろいろノウハウ等を教えていただければと思います。それでは次に山形市の斉藤様にお願いいたします。

斎藤(山形市役所)

 「山形市役所」というのは表の看板ですが、実はNPO法人の理事長をしていまして、2枚看板でやっています。山形市は過去に大きな災害がなくて、600年ほど大きな地震が起きていません。石でできた鳥居が一度も壊れたことがないということですが、もうそろそろ危ないんじゃないか、将来7%くらいの確率で地震が起こるのではないかと言われています。

 人材育成の面では、市ではボランティアなどの活動や組織づくりが課題となっています。しかし、自分たちが当事者にならないとわからないこと、さらに、自分自身が行政マンとしても実際に経験をしていないので、山形市で作っている防災計画の中にもボランティアセンターやボランティアという言葉がほとんど出てこないのが現状です。行政としてボランティアの育成は急務なことと思うし、自身も新潟に出向いて曲がりなりにも活動をしていますが、行政の中の職員同士で意識の変革が起こせればと思っています。そのため、今回は勉強ができればと思いお伺いいたしました。

司会

 どうもありがとうございました。もうお一人、山形からいらっしゃっているということなので、どうぞご発言ください。

千川原(NPO法人ディー・コレクティブ)

 山形から来ました千川原と申します。斎藤と一緒に新潟に入り、いろいろと勉強させていだただきました。斎藤が言った通り、山形では災害がほとんどありませんが、災害が発生する前に何かする必要があるだろうということで、県庁をはじめとした行政や団体とのネットワークを作っていこうと思っていますが、実際にどのように作っていくのかが壁となっています。このような問題がクリアできればと思って参加いたしました。

司会

 どうもありがとうございました。災害の経験があるところとないところでは意識が違うということでございます。それでは、次に谷川様、会社員ということですが、よろしくお願いいたします。

谷川(NTTネオメイト中九州113)

 熊本の方から参加させていただきました谷川と申します。この名簿には「NTTネオメイト」という技術系の会社の名前が出ておりますが、災害が起こった場合、電話故障の113番や災害伝言ダイヤルなどを利用されると思いますが、そういう部署に25年ほど勤務しております。

 阪神・淡路大震災の時には、長田区のスタート長田だとか、4つの学校、1つの施設、高橋病院だとかを10ヶ月、私どもの方で担当しました。1月に地震が起きて3月には急激にボランティアの数が減ってくる。そのときに、神戸市の方から熊本の私どもの方に、更なる支援をということで、延べ人数2800名を10日間ずつボランティアを出しました。

 当時、ボランティア元年とか言われましたが、その経験をどう活かすか、熊本も災害の多い所ですから、「熊本民間災害ボランティアセンター」というものを立ち上げました。NTTに勤めながらやっていたんですが、実はそのときの行政マンは非常に私たちの活動に理解のある方で、熊本はそこまでやったということで、熊本駅前に備蓄倉庫を行政から借りています。今現在でも4,000名から5,000名分の毛布や食料、飲料水、カイロなどがいろいろなものが置いてあります。今回の被災地にもたくさん出しました。残念ながら予算がありませんので、次の便を出すことができず、大変苦労をしております。

 外務省からも「JICA(国際協力事業団)」を通して、予算が足りなくなりますと、成田の備蓄倉庫が空になりますと民間から出してくれないかというようなことを、緊急に出してほしいというようなことを言われますので、これまでも何千枚という毛布を海外に出したこともあります。

 このように日常的に、企業とかいろいろなところから協力をいただいてやってきましたが、結論から先に言うと、この備蓄倉庫を早急に出ないといけなくなっています。倉庫を1ヶ月借りると50万円かかります。災害が起きようが起きまいが、600万円の予算を持っていないと、物さえ置けないというのが、私たちの民間災害ボランティアの大変な悩みです。

 ただ、行政と話しをすると、いいことはたくさん出るけれど、日ごろの苦労はほとんど出ないんです。実は、はっきり申してあげますが、熊本というところは赤十字発祥の地ですので、私たちがどれだけ会議をやっても、日赤の下について下さいというひとつの行政の建前があります。

 今回のテーマであります、ボランティアをどのように育成するかということにつきましては、マニュアルのある会社で仕事としてやる場合はそれでいいんですが、マニュアルがない、価値観が違う、年齢が違う、職業も住んでいる所も違う人たちを全部集めて、研修だといって皆さん方やっておられることはよくわかりますが、なかなか困難な状況です。

 私たちの団体もやっていますが、八方ふさがりの状況です。場所の問題もそうですし、また日赤や社会福祉協議会の下に付いてもらわないと困りますということで、皆さん方もNPOに入ってくれといわれているかと思います。NPOに入ると、行政が声をかけやすいということもありますが、私たち九州ではなかなかそれができない。

 行政と何回か会議もやりました。私たちは、「JC(青年会議所)、以下JC」ともいい関係をつくっています。日本海のナホトカ号海難・流出油災害で、インターネットを使ってお礼を出そうじゃないかということで私たちが協力しました。また、タクシー会社とも連携して、災害の早期通報ということで、例えば電柱が倒れているとか、現場の情報を知らせてもらう通報体制をつくったりとか、いろいろなことをやっていますがそれを活かせないんです。こういう経験をふまえたマニュアルを作っても、民間が作ったマニュアルは使わないということをはっきり言われます。

 それと学校の空き教室さえあれば、日頃からの子供たちや地域住民に対して防災教育ができますよとか、備蓄倉庫として使えますとか。実は学校の空き教室というのがものすごく多いんです。そういうところを使わせてくれと正式文書で申し入れても、文書で回答は返ってこないんです。口頭で、「予備教室」はありますが「空き教室」は一切ありませんと言われます。では予備教室を使わせてくれと言っても、それはなかなか難しいと言われるんですね。

 もうひとつ、防災というのは、すでに聖域があります。これはどういうことかというと、既得権というのがあります。田舎になればなるほど、それを社会福祉協議会の下じゃないといけないとか、報道関係も取材して載せたいということも、削らないといけないこともある。救援物資が山のように集まっているんですが、これを運ぶのに費用が出ないということもあります。そういう点で、私たちは後方支援の役割が重要だと考えていまして、いろいろこれからネットワークをつくって活動する団体の支援をするような方向を考えていきたいと思っています。

司会

 いろいろな専門をお持ちの市民の力をどう活かしていくかということが課題だと思います。また後ほどご意見をいただければと思います。それでは次に、吉村様にお願いいたします。

吉村(NPO法人青少年育成審議会Jsi) 

 「NPO法人青少年育成審議会Jsi」の理事長、吉村うさぎと申します。名前からすると、防災とどういう関係がある団体なのかということになるかもしれませんが、私たちの団体は子育て支援から青少年健全育成、安全安心まちづくり、災害時救援ボランティア育成などをやっています。

 新潟県中越地震では11月から他のNPOと連携を取り災害時ボランティアを現地で養成して支援するということをやりました。なぜそういう活動をしたかといいますと、今年は立て続けに風水害が相次ぎましたので、子育て支援センターに関しましては四国で水害の関連でお母さんたちの支援とか、京都の宮津の方の水害でも、全部一斉に協力要請がきてしまったんです。さあどうしよう、われわれができることは何だということで考えました。スタッフが現地に行くことが出来ればいいのですが、全部が全部回るわけにはいきませんので、じゃあ現地で私たちの持っているノウハウを伝えて、京都は京都、四国は四国、新潟は新潟の、被災地周辺のNPOやボランティアの人たちにやってもらうのがいいのではないか、ということで取り組んだわけです。

 地元のことは地元の方の方が土地感もありますし、また災害弱者に対しての支援も色々と言われてきておりますが、母子、乳幼児、妊婦さんについては省かれているのが実情ですね。例えば避難所でみんなの見ている前で大っぴらにオッパイを出して、赤ちゃんにお乳をあげたりできません。赤ちゃんのおむつにしても替えがすぐに出来ないので、お尻がただれたり、いろんな問題が出ていたんです。避難所生活で最初に届く食べ物はおにぎりとかですよね。赤ちゃんの離乳食とかミルクというのはなかなか届かないので、食べられないですよね。離乳食の幼児や赤ちゃんがおにぎりを食べられますか?そのことを行政にも、考慮してほしいとずっと訴えてきましたが、なかなか改善されていないと思います。

 では私たちのような子育て支援のノウハウを持った団体がネットワークして、なんとかできないかということで、災害が起きた新潟現地の近くのNPOにノウハウを伝えて、何とかやってもらえないか。しかし相手も活動するにはお金がいるわけです。じゃあ私たちは募金活動もして後方援護支援もしよう。できる限りの募金を集めて、NPOがNPOを支援しよう。でも結果の見えない義援金集めではなくて、それがどういう形で使われ、どういう成果をもたらしたかを報告していただいて、3ヶ月後にやるフォーラムで発表しようよということで今やっております。

 さきほどから、予防的活動が必要だとか、後方支援団体が必要だとか、その通りだと思います。私たちのNPOでは日頃の訓練に小中学生に重い荷物を持たせて歩いてみるとか、小さい子であっても応急手当の仕方をわかってもわからなくてもやらせてみるとか常に対処できる意識づけもやっています。なぜなら、スーパー広域災害といわれる東南海地震が来ると言われていますが、それが来れば彼らが本当に力にならないといけないわけです。10年後、20年後の予防措置として今からやらなければいけない。小中学校、自治会に呼びかけて、行政がなかなかやって下さらないので、われわれから発信していこうということで勉強会を始めておりました。例えば、まず自分たちの地の利を知る。井戸がどこにあるのか、空き地がどこにあるのかなど自分が住んでいる町を知ることです。いざというときに自分から行動を起こせるように子供たちを鍛えるということを、ゆとり教育の中でできないものかと、今大阪府下の教育委員会にも働きかけているところです。

 私たちもいつかは助ける側から助けられる側になった時を考えて次の世代にノウハウなどを引き継ぐ必要があると感じています。また、新潟県中越地震のこれからを考えると、雪かきのボランティアが必要になるのではないかと考えて、大学の先生とも話し合って準備を進めているところです。大学生からも現地に行きたいという相談を受けますが、雪の季節まで体力を温存しておいて、と言っています。とにかく、「やれることからやる」ことが大事だと考えています。

 ボランティア・コーディネーターの育成についてですが、私は内容に非常に懸念しているんです。大阪の社会福祉協議会で研修があったのですが、救助犬の説明、多文化共生の説明で終わってしまったんです。「えっ」という感じでした。こういうことも知識として大事なことですが、炊き出しには何が必要だとか、物資を搬送したときには何を整えないといけないのかとか、総合的な本当に実動型のコーディネーターの育成講座にはなっていない。また何処の誰が参加したのか、参加した人の顔が見えない。災害時には人と人との関係が非常に重要だと思いますが、そのときになって誰が何の人か人を知らない、団体の名前や役割さえも聞いたこともないというのでは問題ではないでしょうか。やはりネットワークをつくるという考えを持ってやってほしいと思います。災害ボランティアの研修については、社会福祉協議会だけに押し付け任せにしておいてはいけないのではないか。社会福祉協議会については自治体ごとに運営方針が大きく違い、また土地柄も違うので、それぞれに工夫していくことが必要ではないかと思います。

司会

 ありがとうございました。いろんな課題が出てきまして、自分の地域でも同じような課題を抱えておられるところが多いかと思います。特に専門性を持ったNPOが専門性を活かして非常時に対応する、また教育を行う。またのちほどご意見を伺いたいと思います。それでは続きまして、滋賀県の明智様、よろしくお願いします。

明智(滋賀県総合防災課)

 滋賀県内でボランティア・コーディネーターのネットワークを構築したいと考えています。構築するにあたっては行政がどのような立場で参加することが望ましいのかを皆さんと意見交換しながら見極めてまいりたいと思っています。行政が主体になることが一番良い方法なのか、行政が出しゃばらない方が良いのならば出しゃばらないし、行政の顔が見える範囲が良いと言うならば見られる所にいるようにしてネットワークを効率良く作り上げたいと思っています。実際にネットワークに参加している方がいらっしゃれば、それがどういう形で発足したのかなどお話を聞かせていただきたいです。

司会

 続きまして、大学生の高橋様にお願いいたします。

高橋(雨水市民の会)

 現役の大学生です。今回の新潟県中越地震へのボランティア参加が始めてで、私も何かできることがあればという想いで川口町に入りました。まったくの素人でも感じたことはコーディネーターがとても少ないことでした。私なりに人材育成をする上で必要と思われことは全部で5点ほど挙げられると思います。

 1つ目はボランティアについて「する側」と「される側」の両面をしっかりと理解していなければなりません。2つ目は援助物資の内容や流れを正確に掴み、必要な箇所にスムーズに行き届くようにすること。3つ目は川口町のボランティアセンターの開設が被災後1週間後にオープンしたのですが、あまりにも遅いのではないでしょうか。早くオープンすることで、私たちのような学生ボランティアを含めて効率良く動かすことが大事ではないでしょうか。その意味では初期活動が大事なことだと思います。4つ目は2つ目とも関係しますが、各避難場所とボランティアセンターとの情報の共有化ができていないと感じられました。情報の共有化を通して、どこに何が不足し、どこにどれ位の物資を輸送すれば良いかなどがはっきりすると思います。最後には資金が不足していました。ボランティア活動するにも資金は必要なことが理解できました。資金があれば、プライオリティの高い順に購入することもできると思います。その意味ではボランティアをする人たちに対する支援、募金の支援なども必要だと思いました。

司会

 ボランティアの経験を地元に帰ってからどう活かしていくかというようなことも、後ほどご意見をいただければと思います。それでは「NPO法人レスキューストックヤード」の浦野さんにお願いいたします。

浦野(NPO法人レスキューストックヤード)

 私たちの会は、人材育成の面では、名古屋市や岐阜県や千葉県などの自治体から、災害ボランティア・コーディネーターの養成講座の企画から運営までを任されています。その活動を通じて感じることですが、災害ボランティア活動は徐々には浸透するようになってはいますが、地域の方々や自治体によってボランティアセンターなどの位置づけに温度差があると思います。反面、「ボランティアセンターとはこういうものだ」といった押し付けが行われているように感じられます。主体は被災者であり、被災者と災害ボランティアとを結びつける人が必要です。その役割を担う組織として社会福祉協議会があると思いますが、大きな自治体にも小さな自治体にも社会福祉協議会があり、すべてが同じレベルの組織になっていないのが現状です。被災者と災害ボランティアとの距離を一番縮めてくれる人、つまりコーディネーターが必要とされています。現実にはコーディネーターが不足していると思います。

 災害ボランティアやコーディネーターの育成をしていますが、実際に水害でのボランティア活動と地震でのボランティア活動をイメージできている人がどれ程いるのか気になります。今回は立て続けに水害があり、地震があった訳で、水害の場合には水が引いてくれれば復旧や復興活動が即座に可能になります。しかし、新潟の場合、これだけ余震が続き、家屋が倒壊している現実では、どのタイミングで対応して良いのかの見極めが難しい。被災者が最も優先されるべきなのに、ボランティアセンターの開設に皆の意識が集中してしまっていたのではないかと感じられました。

 災害ボランティアは何も現地活動だけではなく、後方支援をすることも大事であるとコーディネーターも認識を持つことが必要です。後方支援をスムーズに行うことで被災地活動も助けられると思います。今回、名古屋市に資材がストックされていたので、災害ボランティアセンターが立ち上がった初期の時点で7ヶ所に送らせていただきました。誰がやるではなく、行政でも社会福祉協議会でも誰でも良いので、被災地と繋がりを持って、しかも何が必要とされているのかを見極められるコーディネーターが必要です。このような資質を持つコーディネーターの育成は必要です。災害ボランティア・コーディネーター養成講座は災害後の活動に視点が集まってしまいますが、災害が起こっても困らないように事前に何をしておくべきかといった点も大事だと思います。事前と事後を組み合わせた形の養成講座を考えればと思います。

 名古屋で提案していることは各地区に活動できる人を養成することに主眼をおいています。指導者となった人たちは命を守るために、どのような取り組みをしなければならないのかなど地域の住民の一人として地道に活動しています。このような指導者たちが自発的に「災害ボランティア・コーディネーター名古屋」を組織しました。その代表が一緒にいますので日ごろの活動を通して感じていること、悩んでいることなどを聞いて下さい。

高崎(災害ボランティア・コーディネーター名古屋代表)

 名古屋市が主催した養成講座を終了した後にグループを作りました。名古屋は広いので災害が発生した場合、区ごとに対応することになっています。現在16区ある内の5区については災害ボランティア・ネットワークができました。組織作りだけでなく、町内会では自主防災活動もしています。色々と学んできたことを地元の人にどのように伝えるかを指導者メンバー間で考えています。行政が行う防災講座に参加するのは町内会長や消防団長などで、住民を対象とした講座がとても少ない。私たちは地元で地元の住民を対象とした講座を考えています。

浦野(NPO法人レスキューストックヤード)

 学んだことを地元に反映させるためには自主防災会などが中心になると思いますが、現実に、自主防災会に入ろうとしても地縁などを持つ人は別にして、なかなか入れない垣根が存在すると思います。しかし、要請されるべき人が地元に反映できるような機関やノウハウなどもないのが問題だと思います。

司会

 ありがとうございました。それでは最後となりますが、高知の山崎様にお願いいたします。

山崎(こうち災害ボランティア活動支援基金運営協議会)

 高知の場合、98年に高知豪雨があり、12,000世帯が床上浸水の被害に遭いました。また2000年には西南豪雨があり、2度の水害ボランティアの受け入れ経験があります。40年以内に高い確率で南海地震が発生すると言われていますので、高知県では防災に対しては活発な取組みがなされていると思います。市町村の社会福祉協議会を対象として防災ボランティア講義を年に一度、県民に対しては防災フォーラムなどを開催しています。

 また、先日の台風23号水害の時には「タオル・プロジェクト」を行いましたが、その後の新潟県中越地震で庁舎がタオルで埋まってしまうほどの状況になりました。このプロジェクトの時には事務所職員だけではなく、一般の方にも手伝っていただきました。高知の場合には災害ボランティアに特化した団体はありません。また、日常の活動をしていません。高知豪雨や西南豪雨の経験から言うと、日常のネットワークが円滑に行われていれば、いざという時にもネットワークとして活かされると思います。 

 「高知災害ボランティア・ネットワーク会議」がありました。こちらには日赤、青年会議所、社会福祉協議会なども入っていますが、その会議では救援に赴いた際の活動報告と意見交換などを行いました。そこでは、日常の協力関係がなくて、災害の時のネットワークだけを構築しようとして、いざその時に役に立たない場合に、感情論に走ってしまうかもしれないというような話もありました。中間の支援組織を重点的に組織化していれば、災害の時にも十分にネットワークとして働くと思います。

 県内では最近、防災の取組みを重視して行っていますが、その活動で最も大事なことは「命を守る」ことですが、災害ボランティアセンターができた時に地元にどのように活かしていくかがはっきりしません。都市型の場合は問題ないかもしれませんが、田舎になればなるほど他人が入ることに抵抗があります。災害が起こった場合には災害ボランティアが入ってくることを認知させる必要があります。水害の場合などは2から3週間でいっきに復旧、復興活動を行いますので、その心配はないかもしれませんが・・。

 人材育成をする上で気を付けることは「ボランティアにカリスマ性はいらない」こと。想いの強い人が発言をすることでギクシャクしてしまうことがあります。特に災害時の場合には合意形成が必要なので、カリスマ性を持つ人ではなく、合意形成に導ける人材を育てることだと思います。

司会

 ありがとうございました。以上が事前に登録していただいた方の報告ですが、他にご意見を述べたい方がいればお願いします。

荒木(ふくい災害ボランティアネット)

 ボランティア・コーディネーターの育成についてですが、福井県では県がお金を出して講座を開いています。人材育成は学生を中心に行っており、動きやすいという理由からです。水害の時はちょうど夏休みだったこともあって、大勢の高校生などがボランティアに参加してくれました。ボランティア意識を高めるためにいい機会になったのではないかと思います。ただその後のフォローをどうするかが大事だと思います。

 自主防災組織は地元の一般の方を中心にネットワークを組んでいます。色々なボランティア団体があり、色々な職種の人がいますが、特定の職種の人しか集まらない団体は弱いと思います。逆に、自主防災組織の人たちは色々な方がいて、特定の職種に偏っていない。他の団体、例えばJCと簡単につながる人がいるので強いと思います。

桑木(滋賀地震防災市民ネット代表)

 滋賀地震防災市民ネットの代表をしていますが、実は防災に関しては全くの素人です。今、私たちは3名で活動していますが、その目的は滋賀県の地震防災をしっかりやりたい、特に少子化の時代ですので若い命を守っていきたいというのが私たちの思いの基本です。地元はどうかといいますと、滋賀県は地震も少ないし、風光明媚で、人情も厚くていいところだということで、平和ボケしています。これではダメだと思い、自分たちでパワー・ポイントを駆使した説明教材を作成し、地域住民に地震の怖さや地震の本質を理解しやすい内容で啓発活動を行っています。この教材を作るために高校の地学の先生のアドバイスも受け半年かかりました。この資料を使って初めはシルバー大学で勉強会を開きました。

 勉強会の感触からすると、大人を対象にした場合は反応が良くない。関心はされるけれども切実感がまたまだ足りません。政府からも行政からも琵琶湖西岸断層帯が発表されており、阪神・淡路大震災よりも大きな地震が起こる可能性が30年以内に9%であると指摘されています。住民の皆さんがどの程度理解しているのか不安でなりません。今地震が起きれば、大人が中心になって防災活動を担うわけですが、10年、20年先のことを考えると、今の小中学生たちが中心となるわけですから、小学校の生徒にしっかりと防災教育を実施しなければならないと考えつきまして、この9月からある小学校の協力をいただきまして、6年生を対象に1ケ月間、5回の学習をしました。これは「当たり」でした。

 なぜ地震が起こるか、まず最初に起振車で阪神・淡路大震災級の震度を実体験させて関心を持たせました。子供は地震の怖さを直感的に理解します。そこで地球の構造や地震が起きる様子を見せながら話ました。滋賀県はここに断層があり、今後もこの断層からの地震が起こる。断層を実際に見学に行きました。そうして返ってきてから宿題を与え、自分の家が安全かどうかを考えさせて発表させたり、まちの中を危険、安全チェックして防災マップをつくらせたりしました。子供たちは熱心に学習し親御さんや地域の人以上にパワーになってくれるということを実感しましたので、これからもっともっとやっていかなければならないと感じている次第です。

八木(会社員)

 個人で参加しました八木です。個人で参加しておりますので、1ヶ月前までは災害ボランティアを考えたこともありませんでした。しかし、大学時代6年間長岡市にいました。新潟県中越地震以来、頭の隅から離れませんでしたので行ってしまいました。行った所で何もできないかも知れないと思っていましたが、ボランティアセンターで運営スタッフを募集していました。会社経験15年で生産管理という仕事をしていますので、いろいろ部署間の調整なんかをやってきておりますので、力には自信がないので、そういった部分が活かせるのではないかと思いました。現地では川口町に行ってくれと言われまして、11月8日~14日までの1週間滞在いたしました。その中で気になったことは、コーディネートができていないことでした。特に、山崎さんがおっしゃった合意形成が重要だということを強く感じました。 

 新幹線の中で考えてきたのですが、ボランティアに必要な三大要素というのがあるのではないか。それは「知識」「技術」「想い」だろう。

 川口町から帰ってきて、ホームページなどをいろいろ見ていますと、ボランティア研修とかいろいろやっているということを知りまして、「知識」については皆さん方にお任せして、私が四の五の言う必要はないだろうと思います。「技術」についても、日頃の仕事の中で身につけた専門性というものが、それぞれの人にあるでしょう。

 一点、重要だと思うことは、私のようにとにかくボランティアをしたいという「想い」を活かしてくれる人がいないことが問題ではないかということです。そこでイライラしてしまう。そこでみんなの力が結集できないことが、大きな問題ではないかと感じました。それを解消するためのカウンセリングが必要なのではないでしょうか。ここでいうカウンセリングとは言うのは被災者のメンタルケアということではなくて、ボランティアの相談ということですね。参加されたボランティアは焦りや気負いがあります。初めての場合は、何ができるんだろうかとか、もっとできるんじゃないかとか、肩に力が入っているんです。私の場合は2日間悩んで、3日目位からやっと肩の力が抜けてどうにか活動することができるようになりました。カウンセラーがいれば2日が0.5日になるとか、もっと早く活動できたのではないかと思いました。住民の方を相手にボランティアに来たのに物資の係とか、私はホームページ担当と言われました。住民の方のお手伝いをしたいと思って来たのにホームページか、と最初は思いました。想いと現実のギャップというのが意識の低下につながってしまうのではないかと思いました。

 「ファシリテーション」という単語をご存じでしょうか。「ファシリテーション」というのは、各自の、参加された皆さんの想いを共有して、様々なアイデアを引き出して、最終的にはみんなで実行できる方法をまとめていく。最近、ビジネスの世界でも注目されてきたんですが、こういう「ファシリテーション」の技術を持った人が、ボランティアセンターの中に一人おられるだけで、ずいぶん違うのではないかと想いました。

 例えば、ボランティアを受け入れる側はそれぞれの立場によっていろんなことを言います。食料・水は持参してくれと。交通は一般交通機関で来てくれ、車は駐車場がないとか、といわれます。そうすると1週間分の食料・水、テントをもって、一般交通機関でボランティアに来られるかということになります。これではボランティアに来るなと言っていることと同じではないか。ではどうするんだということを、みんなの知恵を出し合って方法を考えていくべきです。

 「ファシリテーション」のプロセスで言うと、想いを出し合った次のステップでは混沌というところに来ます。ここを通って収束していくということが、「ファシリテーション」を勉強している人はわかっています。しかしそのことを知らないと混沌のところが非常に怖いんです。そのあとどうなるんだ、ということで、無理矢理まとめてしまおうとすると、本当のところの合意が形成されないんですね。こういう動きがあるんだということを理解していると、力をまとめて大きく発揮できるようになるのではないかと想います。以上です。

鈴木(NPO法人IVUSA国際ボランティア学生協会)

 今までお話を聞いていて出てきた言葉は「ボランティア」「NPO」「災害時のネットワーク」「人材育成」「ノウハウ」「人との繋がり」「行政との関り」「コーディネート」「防災時の取り決め」「災害ボランティア」「人材育成」「コーディネーター」「力不足」などがありました。私たちの団体は大学生を中心とする団体で、400名位が加盟しています。

 私たちは学生のボランティアですが、ボランティアとは何なのか、何をしに行くのかをはっきりしないまま行ってしまうと「ボランティア災害」と呼ばれてしまいます。そのため初期の段階から被災地の情報収集を徹底的に行っています。どのようなニーズがあるのか、本当に行っても良いのか、物がほしいのか、お金がほしいのか、などを十分に把握し、学生の身分に照らして、その許容の範囲で活動を行っています。それが、例えば食料を集めることだったり、簡易トイレを集めることだったりします。ニーズに応えることが大事なことだと思います。

 ネットワークについては外部のNPOとの連携は難しいと思っています。それは共同歩調することがとても難しく、例えば、私たちは一日も早く現地入りしたいと思っていても、他の団体が急ぐことはないと現地入りをしない場合などがありました。ネットワークを組むのであれば、被災地のNPO団体や行政と組むことで一時でも早く現地ニーズを把握できるし、取り組みも早くできると思います。

司会

 様々な立場の方から色々な意見が出されました。午後は午前中に出された意見を吟味し、それに沿って話を進めたいと思います。全員の方にお話を聞くことはできませんでしたが、午後は一人でも多くの方に発言していただけるようにしたいと思います。

【午後の部】

司会

 分科会午後の部を始めたいと思います。午前中、事前に提出していただいた方を中心にいろいろとご指摘をいただきました。こぼれているご意見もたくさんあると思いますが、午後の部で多くの方のご意見をお聞きしたいと思います。

 午前中に発言された内容を整理してみました。「人材育成をする場合、現場での経験をどのように活かしていくのか」がこの分科会の中心テーマになっていると思いますが、まず始めに災害時、後方支援を含めて「どのような人材が必要なのか」、次いで「そのような人材をどのように育てていくのか」に分けて議論してみたいと思います。

 特に、「どのような人材が必要なのか」については、個々の災害ボランティアが身に付けていなければならないことを、例えば「知識」「技術」「想い」などのように整理しなければと思います。また、災害時に専門性を活かすために日常ではどのような活動をすればよいのかについても議論したいと思います。

 さらに、リーダーやコーディネーターが求められる資質として「合意形成」「カリスマ性はいらない」などが出ましたが、個々のボランティアの「想い」をどうしたら活かせるかについても考えてみたいと思います。また、リーダーだけでなく、個々のボランティアの方たちも災害イメージを持つこと、災害の予測も含めて持っていなければいけないと思います。

 まず、「どのような人材が必要なのか」について、午前中、意見を発表できなかった方を中心に発言をしていだきます。その後、休憩を挟んで、後半には「そのような人材をどのように育てていくのか」に移ってまいります。特に、地域の日常活動の中でどのように育てていくのか、災害時の経験を日常の中で、どのように活かしていくのかといったことも大きなテーマになると思います。それでは「どのような人材が必要なのか」に関してご意見を伺いたいと思います。

山下(災害・防災ボランティア未来会)

 私たちのグループは初めから専門性を持ったグループになろうということで、医療関係に携わる人、建設業者、重機を扱う業者、橋梁業者、道路を扱う業者の人などがいます。また、ハードからソフトまで自分たちで用意できるボランティア団体でありたいと活動しています。今回、新潟県中越地震では11月2日から16日まで医者と看護婦、延べ58名が避難所ではなく、被災された住宅を巡回しました。現在は大工が4名、材料も含めて山梨から持ち込んでお年寄り家族を中心にボランティア活動をさせていただいています。

 専門性を持ってボランティア活動をしてきたことが、本日、改めて正しかったのかなと思っています。また、私たちの啓発活動の基本は「意識、知識、物」として考えています。「意識として考え」「知識として覚え」「物を備える」ことが大事なことだと思っています。「意識として考える」ということは被災地の方々が何を求めているのか、「知識として覚える」ということは被災地までどのようにするのか、「物を備える」ということは自前で対処できることを表しています。こうした考え方を徹底させています。

司会

 非常時の対応としては、何か心がけていることはありませんか?

山下(災害・防災ボランティア未来会)

 「やってやるんだ」ではなく「やらせていただく」気持ちを持つこと。また、誰か一人をリーダーとして、「行くところは行く、引く時は引く」決断をすることが大事。それが例え、被災者の方の要望であっても、被災者の方が家にしがみ付いていても引き離す決断を持つように育成しています。

司会

 それでは、今のご意見に対するコメントでも、それ以外のご意見でもかまいません。

南部(NPO法人災害ボランティア・ネットワーク鈴鹿)

 せっかく来たのだから、しゃべって帰りたいと思います。三重県の水害の際には皆さんにお世話になり、ありがとうございました。私たちは、三重県で「ボランティア・コーディネーター養成講座協議会」を立ち上げてもう5年になります。県や市から要請されたわけでなく、すべて自分たちで始めからイメージして、企画して、公募もして、作文を提出させて、審査もしてという形で、全部自分たちで実施してきました。今後も自分たちの力でやっていこうと思っています。そういうことをやりながら、三重県では「三重県ボランティア情報センター」を立ち上げて、「人、物、金」をどういうように動かすかということをやっています。「こっちが足らんねえ」「そっちが必要やねえ」と言いながら、専門性はないかもしれませんがやっています。このやり方が良いか、悪いかはわかりませんが、一所懸命やっていることは確かです。何も専門的なことはしていないかも知れませんが、みんなで育てて行くことに、私たち自身は良かったと思っています。

 これは三重県の「ボランティア・コーディネーター養成講座協議会」の話ですが、私たちの「災害ボランティア・ネットワーク」では今年で7年目を迎える「子ども防災サミット」を行っています。これがなんでいいかというと、子供が家に帰って「おばあちゃん、今日はこんなことやったんやで」とか「あんなことがあった」とか、大人に話します。すると、「あんたら、子供ばっかりやなくて、私らのためにもやってんか」ということになって、3チャン防災サミット=「じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃん」のボランティアサミットへ発展しました。子供たちとやるにしても、「こうでなければならない」というのではなく、「どないしよう、どないしよう」と言っている中で芽生えてきた何かを導き出す方法を取っています。

 いつも、「災害には筋書きがない」ということを言って締めくくることにしていますが、それは私たちは責任をとることができないし、みんなで作り上げていくしか方法はないからです。「ボランティア・コーディネーター養成講座協議会」は「ボラ講」と呼んでいますが、もし関心のある方がいらっしゃったら、詳しくお話ししたいと思います。

司会

 災害には筋書きがない、というのはそうだと思います。

椎谷(NPO法人ヒューマンエイド・22)

 新潟の魚津市から来ました。今回の新潟県中越地震では全国の皆さま方から様々な形で援助をしていただき、心よりお礼を申し上げます。私たちは「子育て支援センター」を管理・運営しているNPOで、子育て支援をどうしたら良いのかを中心に考えてきました。

 今回の場合、私たちに何ができるのか悩んでいた所、大阪で活動しているJsiの吉村さんから声を掛けていただきました。どうしていいか悩んでいるときにノウハウを持っているよそのNPOから「こうしたらいいよ」など教えていただけることは、大変心強いものがありました。

 ありがたかったことのひとつに、被災地の現場を見て「これはなんとかしなければいけない」と思ったんです。ミルクとかおむつとかが足りない!メディアで流れてくる足りない物資の中にも「おむつ」というのがありますから、これは何とかしなければならないという気持ちになるんですが、ちょっと落ち着いて考えてみた方がいいよとか、こうゆう段取りでやった方がいいよなどアドバイスしてもらえ、それが非常にありがたかったです。

 今回、避難所を4カ所回ってきました。当初はたくさんの方が避難所にいましたが、私たちが行った時には大分少なくなっていて、長岡の避難所では母子は一組しかいなくボランティアの方が多い状況でした。各地で状況が変わっているんだなということも感じました。

 活動はまだ現在進行形ですが、子育て支援は子育て支援という分野で、活動していくことも大事だと感じました。

司会

 支援する側にも災害イメージをどう伝えるということが大事だということですね。どうもありがとあございました。

林(信州大学)

 学生の立場で、今回新潟の方へ1週間ボランティアで参加させていただきました。人材育成について発言させていただきますが、先ほど合意形成を導き出せるコーディネーターが必要ということでしたが、私もまったく同じ経験をいたしました。私が参加したボランティアセンターにもコーディネーターがいなかったため、下の意見をくみ上げていただけないといった意見が大学生のボランティア仲間から出されました。被災者とボランティアのフラットな関係と同様にボランティア同士の意見交換や合意形成がなされる環境にしていただければと思います。そのためにもコーディネーターには合意形成を導き出せる資質を持っていただきたいです。

村野(大分県社会福祉協議会)

 社会福祉協議会にコーディネーター要請を任せて良いのかといったご意見がありましたが、必要だと思っております。私も新潟の方に入らせていただきましたが、そこから「どのような人材が必要なのか」をお話させて下さい。今回は社会福祉協議会からの派遣ではなく、全体を見させていただくために現地研修として入りました。社会福祉協議会の職員は少ない情報の中でコーディネートする立場になっています。ボランティアセンターの中にどの役職にも就かない、フリーな立場で全体を見渡せる人が必要だと思います。被災者の方には必要な物が行き届いているか、ボランティアの人たちはスムーズに活動できているかを見極める人が必要。このような人がいれば、初めてボランティアに参加する人たちの声を聞き、上や中央に伝達することもできると思います。

司会

 「見極める」ということはどのようなことですか

村野(大分県社会福祉協議会)

 とにかく色々な人のお話を聞くこと。被災者からもご意見を聞くことだと思います。私の場合、社会福祉協議会の職員として意見を聞いたり、一人のボランティアとして意見を聞いたりしました。偏った立場からの情報収集ではない、色々な立場の方から情報を集めることで総合的な判断ができると思います。

司会

 今回も現場に行って、活動をしながらお話を聞いたということでしょうか。

村野(大分県社会福祉協議会)

 そうですね。お話を聞くにしてもボランティアの方たちは経験の中から独自の方法で被災者の方たちからニーズなどを引き出す術をもっています。例えば、"足湯隊"というボランティア活動の中で被災者の方たちと普通の会話の中からニーズを引き出し、それをメモして、ボランティアセンターにつなげている様子を見ました。今後は参考にできる方法と思いました。

鈴木(NPO法人IVUSA国際ボランティア学生協会)

 新潟の水害の被災地などにボランティアに行った人たちから聞いたことですが、学生から見ても判断ができる人がいないということでした。ボランティアの人に何かを聞いてみても、たらい回しにされてしまって、時間ばかりが費やされてしまいました。その他にも、被災者の方から人数に見合った配給ではないといった苦情や問合せにも責任を持って対処する人がいない状況もありました。様々な問題に対して対処ができる人材が必要と思います。

司会

 広い意味でのクレーム処理ですね。

鈴木(NPO法人IVUSA国際ボランティア学生協会)

 学生も泣きたくなることがあります。でも泣きたくなるのは被災された方たちですし、被災者の方から言われたことを、真摯に聞き入れて、総てを受け入れてくれる人材が必要だと思います。

吉村(NPO法人青少年育成審議会Jsi)

 社会福祉協議会のこと、先ほど時間があまり無く言葉が足りなかったようで、申し上げたことで誤解があってはいけませんので、再度発言させていただきます。私たちは堺です。阪神・淡路大震災がありました。「O-157」がありました。そして「SARS」がありました。それらを対応しているわけですが、まず現場に何が必要かというと、実際現場にどっと初動で入ってくるのは警察、消防、自衛隊に、各自治体から支援が入ってきます。そしてライフラインの復旧に全力を注ぎます。私たちは行政の邪魔にならない支援活動をしたいと思っています。このたびの新潟では子育て支援で活動してきましたが、新潟への対処と支援は各自治体が日頃から災害準備をそれぞれしておられたので速かったです。災害現地の新潟に行くのに結構な旅費がかかりますので、旅費の分を支援に回すことでわれわれがやりたいと思うことをできないだろうかと考えました。私たちが心がけているのは行政の邪魔にならない支援なんです。被災地の行政の方は必死なんです。自らも被災しているにも拘らず、一所懸命がんばっています。そこへよその自治体から来て、あれも足りない、これもできていないというのはちょっと問題ではないかと思います。

 私たちNPOは、側面から行政が動きたくてもできないこと、例えば子育て支援センターも壁が落ちてガムテープを貼って補修しているような状態なんですが、そういう中で「やれることからやりたい」という思いでやっていきました。災害現場の活動を行っていて感じることは縦割り行政が被災地の現場でも行われていることです。縦割りをどこで横につなぐのかということです。誰かがきちんとした情報を発信しないといけない。災害の支援というのは第一に人の命を救うことです。物資を運ぶのも人の命を救うためにやることですから、誰かにきちんと出来るだけ早く指示を出してほしいと思います。はじめからこの部分は任せるとかできていればいいんですが、行政は危機管理室とか組織をいろいろ作りますが、課長が替わるとまた一から説明しないといけないかというようなことだけは勘弁していただきたい。頭が代わったらまた流れが変わるということでは、NPOとの連携窓口はどんどん狭くなります。専門性は皆さん持っているわけですから、その力を寄せ合ってどう活かすのかを考えていただくところはどこなのか。ぜひ一緒に考えていただきたいと思います。

司会

 今のご意見に対して、ご意見はありますか。

大住(滋賀地震防災市民ネット)

 阪神・淡路大震災を経験した者で、その時はボランティアはしていません。社員のライフラインを守るのが精一杯でした。新潟にはボランティアではなく、調査団に一私人として参加させていただき、災害時対応の方法を調べにまいりました。行政の動き方と被災者の反応をテーマに堀之内町を見させていただきました。被災者からの意見では町の方は何でも良くやってくれるけれども、県は書類の不備などを指摘してなかなか対応してくれない、国も県と同じといった意見でした。ボランティアも同じことだと思いますが、実施サイドと企画サイドを結びつける調整役が必要だと思います。私が感じましたのはプロパーの職員の方は非常に少ないのではないでしょうか。

司会

 それは防災担当のプロパーということですか?

大住(滋賀地震防災市民ネット)

 そうです。専任者や専門職が行政の中にいないのではないでしょうか。もう一つ感じたことは、あたらの地域は自活できる力は抜群です。応援は要らないという声も聞きました。地元の建築業者は非常に優秀で、現場の把握は的確だった点が印象的だったことを付け加えさせていただきます。

司会

 行政の担当者の方で、ご意見はありませんか。

高橋(練馬区危機管理室)

 練馬区危機管理室で防災計画担当の係長をしています。今日は防災の問題なので公務員と名乗っておりますが、これが別の問題になると皆さんと同じボランティアの席に座るんです。兼業公務員という言葉がありましたが、ボランティアプロパーという方はあまりいないと思いますので、兼業公務員の力というのは非常に大きいのではないかと思います。先ほど課長が代わると話が変わるというお話しがありましたが、まだ練馬区の場合は、ボランティアに参加している職員も多いので、ボランティアの皆さんとの距離は他の自治体に比べて近いかなと思います。それでも人が変わると理解がないということもあって、できるだけ公務員が地域の活動に参加したり、兼業公務員が増えるとそれだけボランティアの皆さんの活動もやり易くなるのではないかなと思います。

 私の場合は防災計画の担当係長になって8年、練馬区の場合は区内在住の職員の多くは防災担当を発令しますので、阪神・淡路大震災以来、防災担当になって10年になります。ふつう防災担当者が2年3年で代わるのが当たり前かもしれません。練馬区では地域の皆さんとの関係を大事にしたいということで、5年くらいはいてもらうことにしています。それでも短いといえばそうかもしれません。そこで練馬区の場合、どうしているかというと、普段から自分の住んでいる地域で防災訓練や自主防災活動の勉強をしている職員の集団があるんです。だいたい600名くらい、職員の約1割強に当たります。学校の先生方も知っている、地域の顔役も知っている、地域で活動するいろんな方々を知っているということが大事なことですので、そういうことを職員が心がけるようにしています。

 逆説的な言い方になりますが、災害時のボランティアに関する問題意識としては、練馬区は「大きな災害が起きたときに、外部のボランティアは要らない。自分たちで何とかしよう」、ということを基本に考えてやってきたつもりです。地元で活動するために、よそへ行って活動して勉強してくるということはとっても大事なことだと思っています。ただし地元で活動することを目的としない災害ボランティアは、はっきりいって、練馬区ではいらないと私は思っています。

 「兼業公務員」を、皆さんの手で、できるだけたくさんつくることが必要だと思います。それから地元で活動する勉強のために、よそへ行って活動するボランティアは大事だ、このふたつを申し上げたいと思います。

船入(NPO法人災害ボランティア・ネットワーク鈴鹿)

 私も今日はボランティアとして参加していますが、普段は防災安全課の防災担当をしています。どのような人材が必要かについて一言だけ言わせてください。私たちはボランティアのことを「率先市民」と言うようにしています。行政の中にも、市民の中にも率先して何かをする人のことを率先市民と位置づけています。そして、この率先市民を育てることが大事だと考えています。このような人材を育てることで調整役、パイプ役にもなれると思います。

谷川(NTTネオメイト中九州113)

 水害の場合は水が引けば一気に復興へと入れますが、震災の場合には様々な問題が発生しますから、心のケアを含めて地域のボランティアのネットワークが組織されないと復興は難しいと思います。様々なNPOやボランティア団体が活動している現在、その組織の中心テーマを「防災」にすれば望ましいネットワークが構築されると思っています。

 それから市民と顔をつないだ公務員は長くその職務に就くことが望ましいと思います。職務に就いている間に市民組織をじっくりと育てることに専念していただきたいです。このような流れを全国的な規模で国が率先してネットワーク化を進めてもらいたい。ただ、ネットワークを作るだけではなく、そこで課題を見つけることが本当の意味でのネットワーク化になることを理解していただきたいです。この課題を見極める人材を育てることが大事だと思います。 

 また、ネットワークの規模も全国一律でなくても九州ブロックのような広域エリア単位でも良いではないかと思います。ボランティア初参加の想いと現実のギャップに戸惑いを抱かないでもらいたい。次の世代へとボランティアの想いが引き継がれるような教育、強いては国の施策などで対応していただきたい。また、どのような組織でも団体でも100%何でもできると思わないことです。「できないからこそ、助け合うことが大事」この気持ちを初めから持つことが必要だと思います。また、「ムダ、ムラ、ムリ」を省く体制づくりが肝要ではないかと思っています。

村野(大分県社会福祉協議会)

 ニーズの拾い上げや、ニーズをどこまで実現するのかを判断する必要があると思います。ボランティアセンターの規模、ボランティア参加の数などによっても違うし、どこまでのことを実施するのかを参加者全員で共有しなければなりません。現場に入ってしまうと、色々なことをしたくなるでしょう。しかし、「危険なことはやらない」といった安全面、衛生面を考えて対処をしなければならない。気持ちの部分は判断することが難しいけれど、色々な人の意見を聞いた上で、「判断する人」が必要だと思います。

高崎(ボランティア・コーディネーター名古屋)

 今年各地で発生した災害に、名古屋からは何千、何万のボランティアが参加しました。東海地震や南海地震に襲われる可能性が指摘されている名古屋では体制作りをしています。指摘されている大型地震が連鎖して発生した場合、4000万人が被災すると言われ、太平洋沿岸地帯は壊滅状態になると想定されています。そうなるとボランティアは入れない状態になると思われますので、その場合には自分たちだけで援助活動ができるように体制作りをしています。

桑木(滋賀地震防災市民ネット代表)

 災害が起きてからの復興に必要なボランティアの人材育成も必要と思いますが、災害が来た時に最小限の被害に食い止めるための教育の方が必要だと思います。しかも全国規模で徹底して教育を行う時が来たと思っています。地域の実情に応じて、内容に差があっても良いと思います。現状では学校での防災教育は皆無の状態で、カリキュラムもありません。先生方も地震の発生メカニズム、防災についてはほとんど脆弱な状況にあるのが実情です。是非とも学校教育の課程に「防災」を導入していただきたいと思っています。日本は地震から避けられない国である以上、根本的に教育の段階から防災という考えを早く実施する必要があると思います。

南部(NPO法人災害ボランティア・ネットワーク鈴鹿)

 北海道の大学の先生が学校教育の中に「防災」がないのはおかしい。ということでまず先生に防災について学んでいただこうといった動きが始まっています。子どもに教育をするといっても、様々なレベルの子どもがいて、小学生、中学生、高校生、大学生まで色々です。幼稚園の子どもたちと一緒に防災の勉強も始めました。一番難しく、一番教えにくいと言われている幼稚園の子どもたちが一番良かったと思っています。小学生が次、中学生は知らん顔、高校生は無視する状態でした。幼稚園の子どもとお母さんが一緒になって、同じ目線で一緒に学ぶことがとっても大事だし、底辺での啓発活動につながると思います。難しいことは大学の先生がマニュアルなどを使って教えれば良いと思います。この考えは被災地でも同じ、上から押し付けるような援助ではなく、手や足を擦りながら何気ない会話を通してニーズを引き出すこと、同じ視線に立って活動することの方がマニュアルを見て活動するよりも効果的だと思います。

村井(震災がつなぐ全国ネットワーク)

 非常に難しいテーマの分科会だと思います。さきほど南部さんが言われたように、難しい言葉ではなく、誰にでも理解できる簡単な言葉を用いることは大事なことだと思います。そういうところで防災、減災に取り組んでいくということが大事だと思います。

 ボランティアに必要なことは、一言で言うと「聴く力」かなと思います。災害ボランティアは被災者の支援のために行くわけですから、被災者の方は何を求めているのかということを「聴く力」が大事だと思います。災害後あるいは普段のNPO活動の中で、こういう「聴く力」を磨いていくことが重要かなと思います。

 それぞれが、いろいろな専門性をもっともっと磨く必要もあるのかなと思います。もうひとつは、高橋さんが兼業公務員ということを言われましたが、NPOのほうもひとつだけでなく、いろいろな分野を兼業するということも必要ではないかと思います。また自分の専門性を磨くことによって、ネットワークの必要性が見えてくるのかなということも思います。

 新潟のことに関してだけ言わせていただくと、被災者の傍に直ぐに行くことができていなかったのではないかと。ボランティアセンターがどうのこうのという以前の問題で、やはり聴く力が足りなかったのではないかと感じました。

八木(会社員)

 さきほどから、聴く力とか、仕事のたらい回しということが出ていますが、ボランティアセンターというのははじめからあったものではありませんから、腹を括れる人がいないんです。たまたまボランティアに行って、お前の責任でやれと言われても、腹を括ってやれる人なんかいません。だから、たらい回しにされてしまう。

 ただ、ボランティアセンターとしての方針なり指針があれば、それに沿って対応も取れると思うんです。ただしその方針や指針は、みんなが納得できるようなものでなければなりません。みんなが認めるためには本音トークをしないといけない。本音トークをするためには自分が本音で話さないといけない。そうすると相手が言ってくれる。言ってくれたことに関しては、ちゃんと本音で言ってくれているといって受ける。そのときに聴く力というのが育つのかな、と思います。話すときには論理的というより、「気持ち」で話すことが大切なのではないか。

 皆さん最近泣いたことあります?私も含めて、皆さん気持ちを表すという機会はなかなかありません。これは「感情論」ということではなく、想いを込めた会話ができるか、想いの込められた意見を聞くことができるかということです。そのような人材を育成する必要があると思います。

吉村(NPO法人青少年育成審議会Jsi)

 復興に結びつけるための支援になっているのか考える必要があると思います。そこに若者の力も必要になってくる。高校生や大学生が参加しなければ、次の世代に引き継ぐことができない。次世代を担う人たちも含めたネットワーク、横の連携を円滑に行うや問題が起きたら「ネゴシエーター」的な動きをするなどの存在などが確立されたらすばらしいことだと思います。

 最後に腹を括れる人、今回の新潟県中越地震の場合、椎谷さんが現地支援の話を引き受けてくれたとき、誰がその活動の責任を取るのかということがありましたが、私が「現場で何か問題が起きれば、わたしが全責任を取る!すぐに私に連絡をください。」と言いました。現場のスタッフにも何が起きても大丈夫だという安心感が必要です、おかげで初期の活動がスムーズに行えたと思っています。10年、20年後を考えた時、今現在のコーディネーターを養成する、ボランティアを養成するだけではダメです。将来に引き継ぐことを視野に入れた対策なり、しくみをみんなで考えないといけないと思います。

池西(NPO法人青少年育成審議会Jsi)

 最近、学生さんのボランティアが多いことに喜びと共に驚いています。自分の身銭を切ってまで被災地に赴き、活動してくださる想いは非常に大事なことだと思います。この想いを後世まで引き継いでいってほしいと思います。

 ボランティアセンターやコーディネーターの役割がますます重くなりますが、現場では色々と空回りを起こします。それは阪神・淡路大震災の時もありました。空回りを経験することが自身のボランティアでの成長の印と思ってください。社会福祉協議会なりが行うボランティアセンターでは十分過ぎる位の情報を提供してください。被災地ではどんなニーズがあり、どんな課題があるのか、どんな人材を求めているのかといった情報の発信をしてください。積極的な情報提供をしていくことで、現地の情報収集だけで疲れることのない体制を全国規模で作ってほしいです。この仕組みができれば、防災教育にもつながるし、災害に強い国土になると思います。

荒木(ふくい災害ボランティアネット) 

 教育ということで、静岡大学の先生が、大学の位置が高台にあるということで、例えば地震がくると避難所になるということで、地域住民との絡みということで、学生を連れて水害の2ヶ月後くらいにきてくれました。福井の水害の現場を案内しました。災害の後すぐに入る形態もあるでしょうし、復興のある段階での学生の取り組みということも必要かな。その場合は大学と学生と地域住民との交流、学生にとっては4年、5年の関わりでしかないと思いますが、大学と地域住民との混ざり合いですか、われわれNPOだけでなく、いろいろな形でやる必要がある。災害というのはいろいろ地域性がありますから。さきほどお話しがあったように、練馬区は練馬区で対応する。逆にいうと、ボランティアセンターの立ち上げなど、要望があった場合には入ってもいいのかなと。センターの立ち上げとか、そういう場合は全国の情報がないのはおかしいのではないか。誰かがほしい、例えばボラセンを立ち上げたいのでどなたか適当な人がほしいと言ったときに、仲介するところがほしい。それを人と防災未来センターが果たすのかどうかわかりませんが、そうした工夫も必要かなと思います。

司会

 少し同じ方のご発言が続いていますので、今まで発言のなかった方に発言していただきたいと思います。

加藤(大学生)

 平塚市のNPO団体で活動しています。今回は川口町の方に行かせてもらいました。大学の中にボランティアセンターがあるのですが、私の大学の平塚キャンパスにはなかったので、一般の市民の方のボランティアといっしょに参加しました。大学内にあるところは対応が早くていいなと思っていたのですが、そうなると活動範囲が限られてしまうことも考えられるので、今回は「ひらつか(平塚)防災まちづくりの会」の活動にも関わっているので、そちらのメンバーの方といっしょに入りました。平塚市で組織した防災団体の一員として入りましたので色々と体験できました。地域の人たちと一緒に行けたことが良かったと思います。このような地域団体の活動に関する情報があれば教えていただきたいと思って参加しました。

福田(東京災害ボランティア・ネットワーク)

 現在、新潟支援をさせていただいています。私の住んでいる地区には大学教授がいます。大学教授は大学では地域は大切だと言っているかも知れませんが、現実には町会には入っていません。被災された地域にはこのような方がいると思います。さっき高橋さんがおっしゃっていましたけれども、外のボランティアに頼らなくても、地域のなかでかなりのところまでできるんじゃないかなと思っています。だから災害が起こる前の地域の取り組み、さっき山崎さんが合意形成というお話しをされましたが、災害でなくても地域の中で様々な課題に取り組んでいく。

 地域にはいろいろな人がいますから、専門知識を持っている方、技術を持っている方と連携できれば、かなりのことが地域でできるのではないかと思っています。私は「チエン」というのをふたつの「チエン」(地縁、知縁)と言っているのですが、この二つの「チエン」をくっつけられる人が求められているのではないかと思います。ここにいる方も、地域でどのような活動をしているのかと考えてしまうんですが、お隣に自分はこんな活動をしているということを伝え切れているのかな、「何か困ったことがあったら、俺、こんなこと知っているから。俺に役立つことがあったら言ってね」というようなことを地域の人に言っているのかな、というのが心配になっています。だから皆さんいろんな技術や知識を持っているわけですから、地域で活かすことができれば、地域の力というのは相当強くなると思います。「地縁」と「知縁」の二つのチエンを結び付けられる人が望まれていると思います。

司会

 それでは「どのように人材を育成するのか」について話し合いたいと思います。

宮西(まちづくりプランナー)

 神戸から来た宮西です。阪神・淡路大震災を経験して、皆さんがお話していた内容は的を射ていると思います。私自身はまちづくりのコンサルタントをやっていますから、30年くらい同じ地域につきあってきたわけです。ですから発災直後はボランティアというより、司令塔の役割をやりました。ですからボランティアをどう動かすかということは、いやというほどやりました。コーディネーターをどう育てるかということについては、そんな方法はありません。私にもできたのだから、誰でもできると思う反面、まあ無理だろう、とも思います。

 ボランティアにはひどいボランティアもいたし、例えばあちこち勝手に回ってきて、「あそこでこんな困ったことがあったから対応してよ」と、ポンと紙を置いていく奴とか、全く何を考えているのかというような人もいました。しかし助かった部分もたくさんありますし、外から入ってくるボランティア、例えば炊出しボランティアについていえば、当初はなかなか受け入れの体制がなかったんですね。ですから受け入れ態勢のある私どものところに集中してくるわけです。地区には4つの公園があたのですが、午前と午後の2回ずつ炊き出しをしますから、4つの公園で8回もの炊き出しがありました。1回で500食から1000食もつくるわけです。地域は5000人しかいませんし、そのときは4000人しかいなかったのですが・・。

 地域で何とかするというのが一番いいですね。地域で何とかできなければだめですよ。ボランティアというのは、基本的にはいらないですね。ですから、地域のための勉強のためにボランティアに行くというのはいいですけれど、基本的には地域の中で対応するということが重要だと思いますね。

 家がつぶれて大工さんがいないわけです。で私のところはどうしたかというと、滋賀県の大工さんの生協があって、そこに頼んだんです。地元の工務店はみんな仕事をしていますし、われわれにつきあってくれる人はいない。力のある人は自分で何とかするんですが、瓦が全部ずり落ちてもブルーシート1枚かけられない人もいたんです。まさにこういう部分をお願いしました。建築家を中に入れて、工務店のお金の支払いなんかも含めてやりました。

司会

 日頃から地域のなかでやっていくことが重要で、でも地域の中でできない専門的なことがある。子育てのこととか、技能を持った人をどのように活用していくのか、ということが課題だということだと思いますが、何かご意見はありますか。

中瀬(総務省消防庁防災課)

 こういうボランティアの集会とか防災に関する研修に参加される方というのは、防災に対する意識がそれなりに高い方たちだと思います。災害ボランティアを含めて、そのような方たちが平時にはどのような活動をしたらいいのか、というようなことも話題になっていましたが、例えば地域には自主防災組織があるわけです。年々、組織率が上がっているというものの、一方で活動内容に関しては、形式的な訓練ぐらいしかやっていないところもあると言うことも聴いております。災害ボランティアのように災害対応の経験がある人や防災の知識を持った方に、自主防災組織へもっと入っていただいて、周辺の方々を活動に巻き込み、強いては地域の防災力の底上げにつなげていただきたいと思っております。

南部(NPO法人災害ボランティア・ネットワーク鈴鹿)

 さきほど炊き出しが云々という話がありましたので、私たちが十日町で体験したことを聴いてほしいと思います。私たちが「ぜんざい」を振舞おうと行きました。そのときに朝ご飯を見せてもらったら、そのとき行政が提供している、栄養を考えてこれが一番いいというお弁当ですが、キャベツ少し切ってあってハムが1枚とゆで卵と漬物、ご飯。ご飯はひっくり返すとポンと固まって出てくるような冷えたご飯。それを頂いたときに、はじめは「おいしい」と思った。「こんなごちそうをいただいていいんかな」と思った。でも毎日これが続くと、「もうええんですわ」ということになる。

 私たちが行った時は、ちょうど「もうええんですわ」の際やったんですね。そこで、私はこれを「お粥に炊こう」と言って、お鍋を持ってきて、固まったご飯を全部入れてお粥を炊いた。塩をぱっと入れただけで、おいしいお粥になった。そのときが私は勝負やと思った。またこれを発泡スチロールに入れて「はいどうぞ」と出したら元も子もない。横を見たらお茶碗が一杯並んでいる。このお茶碗を使って、出したら喜んでくれた。

 そのときなんですよ。お年寄りの人たちが、「これを私たちに洗わせて下さい、何かやらせて下さい。」と言われた。「気が付いてくれてよかった、やりましょ、やりましょ」ということでお茶碗を洗い始めたところに、大根とにんじんとネギを出した。「何をするんです」と言うから「今晩、みそ汁をつくってあげようと思って」というと「私ところにお味噌がある、お味噌を使って下さい」と言われた。

 何かやりたい思っていたところに、自然と「やりませんか」という声をかける。それがとても大事なことではないかと思いました。何でもこっちが決めて、「はい、決められたカロリーで、お金がいくらで・・」というようにお仕着せのものを提供するのではなく、そこに知恵が入って、昼はちょっと節約して夜はおみそ汁でも作ってとか、そういうみんながやり始めるきっかけができることが大事だと思いました。

司会

 そう言う形でみんなでやることが大事ですね。

南部(NPO法人災害ボランティア・ネットワーク鈴鹿)

 そうなんですけれどもなかなかそれができない。せっかく頂いている物を断ることはできないし、固いご飯やけど断ると明日からもらえないかもしれないし・・と考えるのがお年寄りなのでは。三重も大変でした。村が孤立してしまって、ボランティアが水を持ってきても、「変なボランティアが水持ってきた、もろたらあんかんで」と言われる。1ヶ月全然水が出なくても、よその人が運んできただけで「変なボランティアが持ってきた水」と言われてしまう。そんなときにちょっとしたきっかけで心が通い合っていく、そういうことでいいんだと思います。

工藤(災害・防災ボランティア未来会)

 必要な人材とは専門性を持った人、または自己完結のできる人だと思います。災害のイメージが持て、現地の方に迷惑をかけない人が必要な人材だと思います。また、被災地のボランティアと共に活動すること。地元のニーズは地元のボランティアの方が一番知っているので、外部から入ったボランティアはニーズの実現を担当すれば良いと思います。地域を大事に思っていますから震災に備えるつもりで日々の活動の中に勉強会を県下で行っています。社会福祉協議会の方と一緒になって学校の体育館、公民館、老人会など、色々な年代を対象に行っています。各地域の防災マニュアルが違うし場所、例えば、商店街と高層マンション地区、老人の多い地区、若者の多い地区毎に勉強会を行っています。

平野(木更津市社会福祉協議会)

 地元でどういう人材が必要かと言うことを小さいレベルでしか考えていないんですが、半農半漁を行っている私たちの地区では、親の世代にはボランティア活動に抵抗を感じる人がたくさんいるわけです。ボランティア活動をする時間があるならば、自分の家の庭掃除をした方が良いと思う人が多いです。しかし、その方たちの行動をみると、ひとつひとつが今の言葉で言うボランティアに当てはまっている訳なんです。地元の消防団にしろ、農協、漁協が主催する共同活動なんかは立派なボランティア活動だと思うんです。それをまた言い方を変えてボランティアというと、抵抗を感じてしまわれます。子どもの世代は会社勤めが多く、親が自然にやっていたことができなくなっています。災害が起こった場合、復旧の主役は地元民で、地元でできないことは外部のボランティアなんかにお願いせざるをえないんだと思いますが、自分たちが何をしてもらいたいかをしっかりと把握しておかないと行けないと思います。ボランティアの方に、何をしてほしいかを伝える人間が必要だと思います。あまりうまく言えませんが、そんなことを言いたいです。

司会

 すごく重要な指摘だと思います。「何をしてほしいか」ということ同じように「何をしてほしくないか」ということも伝えていかないといけないと思います。ボランティアセンターで「べからず集」というか、やってはいけないことを教えるとかも、今後のボランティア研修のなかで大事になってくるのかなと思います。

葛谷(天白でぃぷり天白防災助け合いの会)

 「天白でぃぷり天白防災助け合いの会」という、名古屋市天白区にある、社会福祉協議会と地元の福祉団体、防災団体等と立ち上げた団体の葛谷と申します。東海豪雨のボランティアセンターを立ち上げたメンバーの一人として感じたことを申し上げます。当然、被災地で完結することが被災地責任だと思っています。そのために地元の人間を育成し、地元の住民が防災の意識をしっかり持って、日ごろから活動することが必要です。

 しかし、被災を受けた直後は行政も住民も被災していますから初動の活動はできない状態にあります。被災を受ければ必ず外からボランティアが入ることを前提に準備をした方が良いと思います。受け入れを前提に各自治体は対応を考える必要があると思う。

 よそ者は入るなではなく、いただける知恵はいただくことが大事です。ボランティアに入る人もいずれは地元のため、地元の人に引き継ぐことを念頭にいれて活動する。ある被災地のボランティアセンターの中で地元の人と他所のボランティアとの間でコーディネーターの地位を巡って争いが生じたことがありましたが、お互いに良いところを出し合って、最終的には地元に引き継いでいくことを前提に活動する。

 そのためには社会福祉協議会の役割は重要。社会福祉協議会でなければ、地元の団体が引き継ぐことができるような体制作りに努力することだと思います。

井上(NPO法人国際ボランティア学生協会)

 大学にはちゃらんぽらんと言ったら言い過ぎかもしれませんが、そう言う人たちもいっぱいいるので、学生に災害ボランティアとしての意識付けができると相当すごいことができると思います。災害の現場に行ったことがある人は、一から十まで教えるのではなく、一のきっかけさえできればいろいろな経験ができます。そういうきっかけづくりができたらと、思っています。

司会

 どうもありがとうございました。不手際で時間延長になってしまいました。この出会いを次につなげていけたらと思います。それではこれで分科会を閉じさせて頂きます。


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