「防災とボランティアのつどい」 全体会(午後の部)

司会:池上 三喜子 氏(財団法人市民防災研究所理事・東京YWCA副会長)

(以下、司会者は「司会」、敬称略)

丸谷(内閣府災害予防担当企画官)

それでは定刻を過ぎましたので、全体会合を始めさせていただいます。まず、ご紹介です。全体買いのコメンテーターといたしまして「独立行政法人 消防研究所」理事長の室崎益輝氏をお迎えしています。さて、これ以降の進行を池上三喜子様にお願いいたします。

池上(財団法人市民防災研究所理事・東京YWCA副会長、司会)

 午後の部、全体会の司会を務めさせていただきます、池上三喜子でございます。私が司会をするといつも時間がなくて、せかす名人になりそうですが、やはり時間内にすますということがボランティア活動にとっても重要であります。2分あるいは3分で自分の考えをまとめるという、いいトレーニングになると思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。

 それでは各分科会からそれぞれ10分程度の報告をして頂きます。それでは「分科会A」の干川様にコメントならびに報告をしていただきます。なお、司会者以外の方からもコメントをいただければと思います。

干川(大妻女子大学助教授)

 「分科会A」を担当しました干川と申します。

 「分科会A」では、7月の新潟豪雨のことは、内容としてはあまり出てこなかったのですが、現在復旧が進行している新潟県中越地震のことが主なテーマとなりました。その中から出てきた今後の教訓としては、3点あると思います。

 1つはボランティアセンター、ならびにボランティアのコーディネーションの問題であります。如何にボランティアセンターを立ち上げ、それを運営するか、ということです。その中で、如何に物資をさばいていくのか、ということも問題としてあります。そして、被災者のニーズをどう汲み取っていくかといった課題が出てきました。ボランティアと住民の方々の信頼関係が大事だという意見も出てきました。

 それから、ITの活用方法やボランティアのコーディネーションのためのコーディネーター育成といったノウハウを蓄積することが大事であるということもありました。ボランティアのコーディネーションについて、企業がかなり貢献できるという意見もありました。

 次に、2点目としては、如何に行政とボランティア、それからボランティアを立ち上げる時に核となる団体として、社会福祉協議会とNPO等がどう連携するのか、という課題が出てきました。今回の新潟県中越地震で被害の大きかった川口町の例、小千谷市の例、そして長岡市の例などを通して、連携をどうするかという課題がでてきたのです。他方で、川口町などの小さな自治体では他の自治体からの色々な支援を受けなければなりませんから、自治体間の連携が重要であるといった課題もあるという意見もありました。また、全国的な組織である「全国社会福祉協議会」も、連携については色々な課題があると、関係者からお話をしていただきました。

 それと、3点目にとしては、行政、社会福祉協議会、ボランティア、NPO等の連携が、地域によってはうまくいくし、そうではないところもあります。比較的組織規模の大きなところでは組織的に動けますが、そうでないところはうまくいっていないところがあります。それから、ボランティアセンターの運営について、都市部と農村部ではボランティアセンターの運営のやり方が違います。どういったことが違い、どういったことが必要されるのかということについて、知識と知恵を共有していくことが大事です。

 最後には平常時からの地域づくりが大事であります。その中で行政、社会福祉協議会、ボランティア、NPO等が連携しながら、災害に備えたノウハウを共有していく必要があるかと思います。

司会

 ありがとうございました。それでは続きまして、「分科会B」について、司会の高梨成子様からお願いいたします。

高梨(防災&情報研究所代表)

 「分科会B」です。こちらの方は最初の登録の時は人数が少なかったようですが、ふたを開いてみると盛況で、かなりの方が参加されました。

 ここに地図を持って頂いています。(事務局注:分科会Bの参加者2名が大判の地図を広げてフロアに提示している)

 今年、全国の10個の台風が上陸したといわれておりますが、「分科会B」では、この地図に示した、こちらの「兵庫県立舞子高等学校」や、愛媛県新居浜市、それから福井、京都などからのご報告がありました。

 各地の方々から、それぞれの現場体験や、それぞれのノウハウに基づいたご報告がなされまして、それではどうしたらいいのかという非常に具体的な活動の情報交換がなされました。

 それは、活動資金をどう集めるかという話から、立ち上げの時にどう行政の方に関わっていただくかによって、ボランティアセンターと災害対策本部との連携が上手くいくかということについてのノウハウが個々にでてきました。その中にはオフレコのものもありましたが、非常に良い情報交換の場になったと思います。

 さらには保険の問題や、ボランティアの方々の保健衛生といったような後方支援のところまで含めて、どのように取組まれたのかということについてお話がありました。

 また、マニュアルについては、既存のマニュアルが有効でなく、水害の場合、事前に警報などが出るため準備期間があって立ち上げることができるのではないかとも思いますが、とてもマニュアルでカバーできず、現場で作りながら対処されたとのことでした。そこでは地元受け入れ側のボランティア組織が核を作り、基本的な方針をだすことが重要であるとのご意見も出されました。

 それから専門ボランティアとの関わりといった話もでました。どうも私が話しを聞いた範囲では、ボランティアが仕事を引き受けすぎてしまうという面もあったと思います。例えば、危険がともなう建築土木などは、やはり行政の仕事であると思います。これについては、これから行政との調整の中でボランティア活動を展開しなければいけないということなど、色々な意見がありました。私の方からは以上です。中川さん、何かコメントはありますか。

中川(時事通信社)

 中川です。私はメモの手伝いをしていただけですが、私は、当たり前のことですが、日頃からのネットワーク、繋がりが必要であるということを再認識できたことが大事だったと思います。それから、ボランティアの繋がりだけではなくて、色々な専門家、企業、行政が繋がっていくということが大事であるということも確認でき、次につながる良い分科会であったように思います。

 私たちとして、誰かにコメントをしていただきたいということで、次世代に繋ぐということで「兵庫県立舞子高等学校」の兼田さんにコメントをしていただければと思います。

兼田(兵庫県立舞子高等学校)

 「兵庫県立舞子高等学校」では、10月23、24、30日は豊岡へ、31日は洲本へ水害のボランティアに行きました。専門科目があるのですけれども、その授業で勉強した「ボランティアは被災者の視点から」ということを大切にしました。阪神・淡路大震災では助けてもらう立場であったのですが、今回は助ける立場にまわって、学んだことがたくさんありました。今日は難しい話もとても多かったのですけれども、一つの経験として次へ生かしていきたいと思います。

高梨(防災&情報研究所代表)

 実は「分科会B」の中では、ノウハウのことや資金のことなど、未成年が関われないようなことが多かったのですが、「兵庫県立舞子高等学校」は若い人達の最先端としてご活躍され、環境防災の専門科があるということで地元では非常に注目を浴びている高校です。今日は全国での発表の場でご紹介いただきました。ありがとうございました。

司会

 続きまして、「分科会C」について、司会の上原様よりお願いいたします。

上原(東京災害ボランティアネットワーク事務局長) 

 「分科会C」は被災地活動を支える広域的な支援活動のあり方ということで、様々なご意見をいただきました。この会についての発表は「神奈川県災害救援ボランティア支援センター」の宇田川さんにお願いします。

宇田川(神奈川県災害救援ボランティア支援センター)

 「神奈川県災害救援ボランティア支援センター」の宇田川と申します。「分科会C」は広域支援ということで、阪神・淡路大震災以降、全国からボランティアが集まるということは常態化したわけですが、それをいかに効果的、効率的に行うかが課題となっています。

 まずは今年の災害状況について福井、新潟、兵庫などで、それぞれ現地で活動した方からの報告がありました。その中ででてきた問題点は、色々ありましたが、一つは「分科会B」でも出たように、活動資金の問題がありました。活動資金を如何に作るかということについては、すでに基金という形で6億というお金があるという福井の話も出ましたが、これは極めて稀な例だと思います。これを如何に解決していくかということは、今後、ボランティアセンターを上手く運営していくためにも、広域的な適切な時期に立ち上げていくためにも、必要で追究されなければならないだろうと思います。

 基金の作り方には色々あると思いますが、それについての具体的な智恵の出方までは、まだ結論が出ていません。各地での経験交流がまだ必要だろうと思います。

 それから二つ目は連携という問題です。連携はボランティア、社会福祉協議会、行政、それから地元の様々な方がうまくかみ合って初めて、広域支援も活きるものであろうと思います。それから広域支援を行うためのそれぞれの後方の地域でのまとまり、連携も必要だろうと思います。そういったところは、普段からいかにきちんとした話し合いをしているか、そのきちんとした話し合いの裏にはラフな話し合いもあろうかと思いますが、それも最終的にはきちんとした話し合いでもって、ある程度の枠組を作り、信頼感を醸成していくことが不可欠であろうと思います。

 各地では私たち防災ボランティアと行政との担当セクションの結びつきが薄いとか、もしくはNPO担当窓口とだけ繋がりが限定されているということは問題です。様々な形で繋がることが大事です。例えば、三重ではボランティア団体、「日本赤十字社」「社会福祉協議会」「三重県県防災部・福祉部・NPO部」が複数つながっているという報告もありましたが、このような方向はもっと強く各地で追究されるべきだろうと思います。

 それから、その中で現実的に各地で支援センターが作られる場合には、社会福祉協議会が中心になるわけですけれども、社会福祉協議会が中心になることの良い点、悪い点についても率直な意見交換がされました。地元の資源を有効に使う、それから地元と強いパイプがあるという点では、社会福祉協議会が中心になるのは当然であろうと思うのですが、必ずしも社会福祉協議会が十分な人的資源を持ちえていない地域もあれば、また、災害に対して腰が据わっていない社会福祉協議会も現実にはあったように思います。その意味で、社会福祉協議会やボランティア団体、行政がそれぞれに知恵を出し合う必要があると思います。

 その中から生まれてくるのは、「ネットワークというものの持つ強さ」だと私は個人的に感じました。それぞれが如何に有機的なネットワークを持っているかということです。1人が10持っていれば、それが10人集まれば、10乗になります。ネットワークの強さはこういういったものだろうと思います。

 それがかなりの部分で具体的に発揮できている場が、たぶんウェブの上でのネットワークなのだろうと思います。このような広域支援を行う点では、ウェブサイトの強みがだんだんに発揮されてきています。これについては、その専門の会社である「レスキューナウ・ドットネット」からもご報告がありました。やはり、こういった形で私たちも情報発信を行い、それが的確に全国の災害活動をしようとしている市民や団体、行政に届くようなシステムがあって初めて、この広域支援というものが有効に展開されるのではないかと思います。

 これに関して、互いにどう智恵を共有し合うのかということが大事だろうと思います。一つ、宣伝をさせていただきますが、智恵の共有のために、今、「智恵の広場」という活動が展開されています。これは名古屋の「NPO法人レスキューストックヤード」の栗田さんが事務局長となって展開しているのですが、防災シンクタンクとして全国の様々な智恵をネット上に集めて、そこから、いざという時の活動の知恵や、それから防災のための知恵を全国に発信していこうという仕組みです。

 これは来年1月21日の神戸で開かれる「NPOと市民の国際会議」の中で正式な発足式を迎えますが、お一人お一人の知恵やノウハウがまだ小さな部分で留まっているのが、日本の防災情報の現状であろうと思います。これを集めて整理して共有化していくことが、今後に役に立つと思います。ぜひ、この「智恵の広場」にもお力を貸して頂きたいと思います。ありがとございました。

司会

 ありがとうございました。それでは「分科会D」について、司会の菅様、よろしくお願いいたします。

菅(人と防災未来センター専任研究員)

 「分科会D」では、ボランティア活動を担う人材育成およびボランティア活動の経験の地元での活かし方ということで、長時間に渡って、また、様々な方にご参加していただく中で、話を進めていきました。

 今回、新潟県中越地震の支援に行かれた方、水害の支援に行かれた方、それから、阪神・淡路大震災を経験された方、また、学生の方など、本当に様々な方のご参加の中で、議論が尽きませんでした。この分科会の報告につきましては、「こうち災害ボランティア活動支援基金運営協議会」の山崎水紀夫様、それから「NPO法人レスキューストックヤード」の浦野愛様に報告をいただきたい。まずは山崎様にご報告いただきたいと思います。

山崎(こうち災害ボランティア活動支援基金運営協議会)

 高知から来ました山崎水紀夫です。結論から言いますと、「聞く力」そして「引き出す力」が必要だろうと思います。基本的にボランティアセンターの話が中心になりますが、それ以前に、被災者の方が何を求めているかをきちんと聞き出す力がなければ始まらないということで、聞く力が必要だという意見が出ました。

 そして、もう一つが引き出す力。災害ボランティアに限らず、ボランティアの基本は自分で出来ることは自分でするということです。できない部分をサポートするのがボランティアで、何でもボランティアがして、避難所の人や被災された方が何もやらない状況がでてくると何か違うような気がします。地域自身の復興の力を引き出す力というものが求められると思います。

 災害ボランティアセンターには多様な方が集まります。子育て系や環境系などの色々な専門を持った方がいて、そして、一般ボランティアもいらっしゃいます。その中で、それぞれの専門分野を活かした活動の中で、出来ない部分をうまく発信していくことが大事だと思います。これのキーワードを私は「ドラえもん」に例えます。のび太には力がないので、「ドラえもん」のポケットから色々なものを引き出して大きな成果をあげているわけです。自分たちの出来ない部分を多様なアイデアやノウハウを持った方の力を上手く引き出して補いつないでいくことが大切だと思います。

 私は「力不足はネットワークの生みの親」という言葉を使っていますが、ネットワークには力不足を認めることが大事です。ボランティアセンターでは、専門分野を持った方と一般ボランティアがコラボレーションするわけですが、その中のリーダー、コーディネーターに求められるのは合意形成の力だと思います。災害ボランティアセンターには、全国から非常に熱い思いを持った方がたくさん来られますが、そういった方々の合意形成を如何に行うかが問題です。それ如何によって、1+1が5にも6にもなるし、間違ってしまうと足しても1以下になってしまう危険があります。

 またボランティアセンター中では、それぞれの部分の役割分担だけでは全体を見ることができません。その中で、「ふらっと」していて、全体を見ている人を置く必要があります。また、学生の方からは自分の思った意見を言いやすい雰囲気を作って欲しいという意見がありました。これも「ふらっと」している人が、いろいろ声を聞く役割をすればいいのではないかと思います。「遠山の金さん」のように、遊んでいるように見えて、きちんと色々な人の意見を聞いているという人が大事であろうと思います。

 その他に求められるのは、日々の活動を見直して、見通しを立て、色々な人の意見を聞くということです。「見直し」「見通し」「風通し」ということです。私は合意形成の力は日常の活動の中でしかできないと感じています。皆様、恐らくそれぞれの地域で何らかの活動をされていると思いますが、その中で日々の合意形成を大事にしていけば自然とそういう力がついてくると思います。

 最後に、カリスマ不要論で締めくくりたいと思います。カリスマは、全てを一人の人間が決定してしまいます。災害ボランティアセンターには多様な力が集うので、カリスマよりも合意形成が大事です。今回の分科会では「ドラえもん」と「遠山の金さん」をキーワードに例えて私の感想を終えたいと思います。

浦野(NPO法人レスキューストックヤード)

 「NPO法人レスキューストックヤード」の浦野愛と申します。私も感想を少しお話ししたいと思います。災害ボランティアコーディネーターなどの人材育成について、というテーマでしたが、やればやるほど、ボランティアコーディネーターがどの程度必要なのかということが分からなくなってしまったということがあります。

 ボランティアコーディネーターの動く拠点として、今、一般的に考えられているのが、ボランティアセンターであろうと思うのですが、きちんと時系列ごとに起こってくる問題をイメージできるためには、現場を何回か踏んでいる人でないと、そのイメージは育っていかないように思います。

 その意味で、2,3日限りのボランティアコーディネーター養成講座に参加しただけでは、大きな役割は担うことはできないという現状もあると思います。

 やはり、ボランティアセンターに来るボランティアさんを被災者の方々に効率的につなげていくことが、コーディネーターさんの一つの業務ではあると思いますが、つなげることだけに頭がいってしまうと、作業が機械的になってしまうという危険性があると思います。業務に集中してしまうと、本当に大事な被災者の心に寄り添うという部分を忘れてしまうのではないでしょうか。やはり、じっくり被災者の現実を知るためには、その方々にじっくり向き合っていくことが大事と思います。それができれば。「ここだ」というタイミングで、これからの生活を一緒に考えていきましょうということが初めて言えるのだと思います。

 やはり、ある程度の時間をかけての関係作りが必要になってきます。1,2日で養成されたボランティアに、そこまでの役割を負わせるのは無理ではないかと思います。ボランティアコーディネーター養成講座は各地で開催されてはいますが、災害後に復興に向けて支援をしていく中で、どういう風にボランティア活動をすればいいかということが重視されていますが、それは災害が起こった地域性や、集まってくる顔ぶれで状況は変わってくるため、臨機応変の対応が必要です。被災地に足を運んで見てきたこと、地域のどんな人たちと情報交換をすれば上手く行くかということ、誰の力を借りればお金や資材を引き出せるのかといったことを、自分たちの地域に持ち帰って、それを自分たちの地域で災害が起こったときにどうすればいいかということを、きちんと想像できる人を育成しなければならないのではないかと思います。

 ですから、災害ボランティア養成講座は、言い方を変えると、「備えて良かったな」と思えるような地域づくりを目指していく人たちとの出会いの場になれば良いのではないかと感じました。以上です。

司会

 ありがとうございました。

宇田川(神奈川県災害救援ボランティア支援センター)

 お金の話を言うのを忘れました。最近の変化の中で、企業の変化があります。「共同募金会」の変化ももっともっと利用していけると思います。そういった具体的な変化をいち早くキャッチしていけばいいと思います。

司会

 ありがとうございました。一応、4つの分科会からご報告いただきました。私は4つの分科会それぞれを回っていたのですが、率直な感想を言いますと、「それぞれそのまま居続けたい」とほどでした。本当に聴きたい話、特に人のこと、お金のこと、それから養成講座のこと等が盛りだくさんでした。

 私が4つの分科会を回って印象に残ったのは「地域」ということです。それは「自分たちの地域で何をやっていますか」という問いかけでした。他ではやっているけれども、自分の地域で何もやっていないのはまずいのではないかという指摘です。自分たちの住む地域を守るのは自分たち地域住民にほかなりません。それを日常しっかりして、地域防災力を高めておくことが、災害救援のためのボランティア活動に繋がっていくのではないかと言われたような気がしました。とても大事な点だと思います。

 それでは室崎先生、お願いいたします。

室崎(独立行政法人消防研究所理事)

 「独立行政法人消防研究所」の室崎でございます。私は被災地に行きましても、ボランティアの方々のそばでボランティア活動を見るしか能力がないにもかかわらず、こういう高いところから報告することをお許し下さい。ただし、私は30年前に、愛知県で災害ボランティア登録制度が作られた時から、ボランティアを研究対象にしてきました。長い間お付合いしてきていただいたということで、今日は少しコメントをさせていただく機会をいだだきました。

 今年の台風被害や新潟県中越地震のボランティアの活動を見ておりまして、はっきりいえるのは、その活動が阪神・淡路大地震の時と比較して、何10倍にも何100倍にもその力が大きくなってきたということです。これは確信を持って言えることです。

 しかし、それだけに、新しい課題がたくさん出てきているということも事実です。大きな過渡期に来ていると私は理解しています。例えば、1つ目はコーディネーションの問題です。その問題の大本はどこにあるといいますと、「社会福祉協議会」「日本赤十字社」「NPO」などがそれなりの思い入れを持って一生懸命やっているのですが、トップのところでコーディネーションがきちんと出来ているのかということにあると思います。これはもう一度、お互いの役割、能力を見据えて、理解しあって、一つの目標に向かって一致団結することが大事ですので、ネットワークというものを考え直さなければならないことだと思います。

 2つ目の問題は、災害が多様化することで、ボランティア活動の有り様は違ってまいります。同じ新潟の災害ボランティアでも豪雨災害と地震とで違います。これは大きな違いがあります。水害は家屋に入った土砂を取り除くことが基本的なことです。これは単純なことで、人が集まり、あるシステムが作られていけば状況に簡単に対応できます。このようにニーズが簡単に理解、把握できるものがあります。

 しかし、色々な問題がある多様なニーズのある災害に対応するためには、何をいつすべきなのかという優先順位付けをするといった、極めて高度なコーディネーションが必要になります。一つシステムを決めてそれを適用させるだけではなく、災害に応じたシステムのあり方を考えないといけません。

 3つ目の課題は、先ほど、「聞く力」とか「被災者への思いやり」という言葉が出ました。これはボランティアの原点であると確認しなければなりません。基本は被災者の立場に立って、被災者の心の中にしっかり入りこんで、被災者と協力しあいながら、被災者を全面に立てて支援していくことであります。被災者が基本なのだということですし、それを助けようという志であるように思います。それを考えると、すんなりとボランティアを被災者が受けれいれてくれるわけではありません。被災者の理解、協力、一体感を得るのは非常に難しく、高度な技術が必要です。これをボランティアの方がどう持っていくか、身につけていくのか、新潟県中越地震ではこれが非常に厳しく問われたように思います。

 4つ目の問題はボランティアの能力が問われてきているということです。一つは多様な経験を集約して、それを共有することが必要です。皆様一人一人の体験をしっかり集約をして、それを皆のものにしていくプロセスを重視しないといけません。現場で活動するだけではなくて、災害と災害の間をどういう形でつなぎ、とりわけ若い人にどう継承していくのかも問題です。以上です。

司会

 ありがとうございました。室崎先生には後ほど、総括をしていただきますので、またコメントをよろしくお願いいたします。

 それでは、今までのコメントないし報告に対して、何かご意見、ご発言はありますか。なるべく多くの方にお話をしていただきたいので、恐れ入りますが、1人2分以内でコメントをしていただければと思います。また、記録の都合上、ご発言の際に、所属とお名前をおっしゃっていただければと思います。どなたからでもどうぞ。

吉村(ユース21京都)

 失礼します。京都から来ました、吉村と申します。台風23号による水害の際は皆様にご支援いただき、大変にお世話になりました。

 分科会に参加しまして、つまるところ最終的には人をどうつなげていくか、それからどういう形でボランティアのコーディネーションをとっていくかということを専門機関を含めて問われている時代ではないかと思います。大事なことは、新潟県中越地震や水害に対して、応援に入る方も個々に経験、スキルはあると思うのですが、先ほどおっしゃっておりましたが、それぞれが地元とどう普段からつながっておくかが問題です。そのためにはどうすればいいかというと、日頃から団体とどれだけつながりをもっておくかということだと思います。地域の活動も同じことだと思います。

 災害の時に結成されたボランティ組織を作るということがありますが、今回の災害では充分に組織として機能しませんでした。やはり、普段から顔見せなどのコミュニケーションをとっていかなければならないと思います。

洙田(医師・労働衛生コンサルタント)

 こんにちは。ボランティアの衛生管理をして欲しいと思っています。

 水害も問題ですが、新潟は被災地、豪雪地帯で、毎年の豪雪災害があります。地元の専門家が集まって雪氷災害の委員会が組織され、私もそのメンバーですが、雪害では地震災害と複合されて、一部損壊や全壊の恐れがあります。

 ボランティアも除雪作業は危ないだけでなく、道路の凍結で滑って骨折や脳出血になってしまう可能性があります。それから、心臓病がある人は寒い時期に入ってしまうと狭心症、心筋梗塞になってしまうかもしれません。

 ですから、雪氷災害の委員会では、地震災害と呼ぶのではなく、雪害とも見合わせて、「地震豪雪複合災害」「地震雪害」と呼んだ方がいいのではないかということで、新しい概念が必要であるという結論に達しています。阪神・淡路大震災以降の経験、プラス雪害の経験といったものは、先ほど、吉村さんが言っていたように、被災者のことを尊重し、理解しなければ、わからないことだと思います。そういったことを、ぜひ訴えたいと思います。

正村(災害OUT・SIDE)

 正村と言います。Cの分科会にいたのですけれども、最後に社会福祉協議会の方が突き上げられていました。しかし、外の民間ボランティアの方はいつでも引く時期がありますが、社会福祉協議会の方はずっと仕事を続けて対応しなければなりません。確かにイニシアティブを取れるといいのですが、最終的に尻ぬぐいをとるということになります。

 初期の状況から入らなければならないということがあります。地元が引き継ぎやすいようなことをしっかり作ることが大事だと思います。「北海道虻田町社会福祉協議会」は職員が3人、トップが27歳です。このように弱い社協もあります。そういうところが引き継ぎやすいようなパッケージにして降ろしてあげることが大事です。また、年金受給者とか身体障害者などの災害弱者に対しては、地元のヘルパーが入っていくなど、地元の社会福祉協議会がイニシアティブを取ることが必要です。

八木(会社員)

 名古屋から個人で参加しました、八木と申します。1ヶ月前までは、防災とかボランティアとかについてほとんど知らなかったような人間なのですが、10月23日の震災を経て、私は学生時代に新潟県長岡市に6年間住んでいたため、知り合い方の安否などが気になって仕方なく、知り合いが名古屋の知人は全く関心がないのを尻目に、現地に入り、初めてその時に、災害ボランティアを経験しました。

 ボランティアセンターに運営スタッフを募集とあり、一応社会人15年目なので、それであれば何とかできるかなと思い、お邪魔することにしました。その中で私が感じたのは、本音が出ていないのではないかということでした。例えば、先ほど、室崎さんが言われた、被災者が基本で、それに対する志が重要だということがありましたが、正直言って違和感を覚えました。私が新潟に行って、お手伝いをしたのは、私の知り合いが大丈夫かどうかということがもの凄く心配だったからです。行ってみたら実際には長岡の中で被害が小さい地域だったので、安心をして、川口町で活動することにしました。そこで知り合った川口町のある小学校の校長先生に「長岡の友人が心配だったので、新潟に来た」と私が言ったら、急に距離が縮まった気がしました。やはり、本音で接することが大事だと思います。以上です。

長田(NPO法人ながおか情報交流ねっと)

 新潟県長岡市から来ました長田と言います。日頃、新潟県長岡市で消防防災の取り組みについて取材している高校2年生です。今回、「防災とボランティアのつどい」ということで勉強をするためにやってきました。

 皆さんが思う災害ボランティアというのは、NPO関係もしくは一般でボランティアセンターに登録されたボランティアが多いと思うのですが、今回、お話には出なかったですが、消防団も出動手当は一部支給されますが、これも大きく言えばボランティアの一種であります。

 今回の新潟県の地震や水害について、長岡市や三条市でも消防団が出動しましたが、こういった面で、民間のボランティアに加えて、街の消防団と連携や助け合いもしていけばいいのではないかと思い、発言をしました。

司会

 地域の消防団は、地元で長らく関わっており、消火、救援活動等を日常としているので、顔が見える関係ができているということですよね。とても良いご発言ありがとうございました。

池田(富山県民ボランティア総合支援センター)

 「富山県民ボランティア総合支援センター」の池田と申します。今回の新潟県中越地震で私が感じたのは、都市と農村、それから過疎地と過密地で、かなりボランティアに関する意識が違うということがあります。室崎先生は先ほど、ボランティア側として、被災者に対する思いが大切だということがありましたが、やはり私が大事だと思うのが、地元のボランティアコーディネーションをやる方が、いかに地元の実情とボランティアをつなげるか、そこのコーディネートだと思います。そういった動きが大事だと思います。

 特に、過疎地では、災害のことは事が起こってから考える傾向が強いです。その点の啓発活動が必要なのではないかと思います。

小澤(NPO法人ユニバーサルデザインステップ)

 「NPO法人 ユニバーサルデザインステップ」代表をしております、小澤と申します。よろしくお願いします。今回、色々な形でボランティアと住民方についてのお話しがありましたが、どうしても考えて欲しいものがあります。

 今回、阪神・淡路大震災と新潟県中越地震の何が違うかというと、一つ一つの避難所の大きさ、それから住民がコミュニティ、友人の家に集まって避難生活をしている人が大変に多かったということです。そういったところからのニーズをいかに引き出すかが問題です。

 私も川口町に入り、高齢者のケアで「まごころ隊」という組織を編成して行ってきたのですが、避難所の中で「何か要りませんか」と聞くと、「何もいらない」と言われました。それで、避難所から離れた地域に出て行くと、「肩が凝っている」とかいう実は「肌着がない」とかといった意見が出てきます。避難期間が長期になると、小さな場所に入っていく必要性があると思います。

司会

 ありがとうございました。残り時間が少なくなってまいりました。あともう一方、よろしくお願いいたします。

羽賀(長岡市国際交流センター)

 「長岡市国際交流センター」の羽賀と申します。私が担当したのは外国人支援に特化した活動でした。阪神・淡路大震災の場合は8万人を越える外国人がおられたようですが、長岡市も小さな都市ではございますが、2100人を超える外国人がいます。そして、市周辺部には全くケアがされていない地域も含めて、3000人もいます。

 そこに我々がどういう支援をするかということが課題となりました。特に地元には多言語に対応する組織がないということが問題となりました。私のところは、外国人支援という目的で3年前にセンターが設立されていたので、日常のネットワークがありました。一番助かったのは、「多文化共生センター」という、神戸で立ち上がったNPOが音頭を取ってくれて、全国を総括して頂き、そこで一元化された情報が入り、全国の種々多様な情報がわれわれをバックアップしてくれました。

 外国の人たちは文化が違います。イスラムの人の食事とか、識字率とかの問題があります。当初、我々は9カ国語の対応をしていましたが、「読めない」と言われて、FMで多言語で音で対応したということがありました。外国の方の多くは地震の体験がないので、何が起きたのか理解できませんでした。それを理解させてあげることが必要です。

司会

 まだ手が上がっておりましたが、ご意見等はお手元にある、アンケート用紙にコメントを書いて頂きたいと思います。

 それでは、全体会総括といたしまして、室崎先生から、コメントをお願いいたします。

室崎(独立行政法人 消防研究所理事長)

 時間がございませんので、全てのことについてコメントできません。むしろ、私に対する批判も含めて大切な問題が出ておりました。

 自主防災組織や地域の団体の方には、もっと心を開き、本音を出して、もっと助け合い方を勉強してくださいとお願いしたいです。その時は、それぞれの立場でお互いを考えないといけません。それぞれの立場で考えることが、私は本音で語るということだと思います。自分のエゴだけで物事をすすめることはできません。しかし、ボランティアをしていくと、かならずぶつかる問題があります。この点について、皆さんで深めて頂きたいと思います。

 防災の活動主体としての専門家にはボランティア、NPO、CBO(CommunityBaseOrganization)など商店街もあります、また、メディア、例えば地方のローカル新聞などの役割も防災について大きいものがあります。さらに、都市計画などの専門家が現場に入って一緒に考えなければならない時期に来ているのではないかと思います。

 組織ごとのネットワークも必要ですが、それぞれが持っている専門分野をネットワークしていくことが必要とされる時代に来ていると思います。以上でございます。

司会

 ありがとうございました。色々なご意見、コメントをありがとうございました。

 私が昼食時に打ち合わせをしていました時に、「ボランティアべからず集」ができると良いですねという話が出ました。こんなボランティアは良くないとか、こんな迷惑なボランティアはよくないというようなことが書かれたものがあると、これが即、ボランティア教育になるのではないか、という話でした。ぜひ、実行に移していきたいと思っています。

 あと、日常の延長ということが阪神・淡路大震災の後からずっと言われております。ある神戸の消防団の方が「地域で遊びなさい」とおっしゃっており、そういうことをしなければ、いざという時に助け合うことはできないということでした。まさに、お祭りでもイベントでも防災訓練でもいいから、そういう場に参加して、自分の顔を売っておけとおっしゃっているのです。

 それから、私ども「市民防災研究所所長」の籏野が私どもに遺言として残していった言葉に、「防災は勉強すればするほど、一人では何も出来ないことがわかる。皆でその不足を補いあうことが大切である。」というのがあります。実生活の中でも、困った時に「助けてください」ということが気軽に言えるような人間関係を作って行ければと思います。それぞれに限界があるので、皆で助け合ってやりましょうということで、司会進行を終わらせていただきます。それでは事務局にマイクをお渡しいたします。

丸谷(内閣府災害予防担当企画官)

 最後に主催者を代表いたしまして、内閣府防災担当政策統括官の柴田からお話をいただきます。

柴田(内閣府防災担当政策統括官)

 本日は朝早くから夕方まで、大変みっちりとお話し頂き、本当にありがとうございます。お忙しい中、全国各地からお集まりいただきまして、ありがとうございました。また、池上先生をはじめ、室崎先生、そして、座長をして頂いた先生方、ありがとうございました。

 今年は言うまでも無くボランティアの活動の必要性が再認識され、世間の大きな注目を集めた年であろうかと思います。

 阪神・淡路大震災の年がボランティア元年と言われ始め、その後、ナホトカ号海難・流出油災害の問題だとか、北海道有珠山の問題などもありご活躍いただいたのですが、今年ほど多くの災害が発生し、ご活躍いただいた年、もしくは幅広く国民の方々にその活動が分かって頂いた年は珍しいのではないかと思います。

 阪神・淡路大震災の時がゼロ歳だったとしたら、今年が何歳か分からないが、大学生くらいにはなったのではないかと思います。先ほどのご意見をお聞きしておりますと、その活動は定着し、また、その取り組みは深く広くなってきたのではないかと思います。

 政府の取り組みを申し上げますと、本当に今年は災害が多かったです。7月の水害の後も、次々と災害が置き、10月20日に台風23号が来たときに、余りにも大きな被害だったので、政府の非常災害対策本部を設置しました。それは水害では平成5年の鹿児島以来の本部設置となりました。村田防災担当大臣が本部長になりしまして、各省の局長クラスを集めて対策を練ってまいりました。

 そうしましたら、同月23日に地震が起きまして、24日に直ちに非常災害対策本部を置きました。地震で非常災害対策本部を置いたのは、実は阪神・淡路大震災以来のことでございます。こうして、その2つの非常災害対策本部を置いて、平行させてそれぞれ政府も対策を検討してまいりました。その中で、特に地震の問題につきましては、被害も大きくて政府の対応も一丸となってやってきたのですが、また、応急対応についても政府で色々なテーマでプロジェクトチームを作って対策を行いました。

 その中で大きなテーマは住まいの復興の問題でした。また、ボランティアさんの活動についてのプロジェクトチームも設置しました。今、前にいる丸谷くんがそのリーダーとして毎回活動を報告していただきました。そのため、毎回、災害対策本部でその活動状況、ニーズを把握して、その報告が入っておりました。深く感謝しております。

 さて、会合では「本音がなかなか分からない」という話が出ておりましたが、我々も阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、避難所の体制が大事であり、お年寄りの方に温泉かホテルでゆっくりしていただこうということで、3000から4000人分のホテルをかき集めて行ってくださいと呼びかけたのですが、なかなかお年よりは行っていただけません。送り迎えも含めて無償なのですが、500人も集まりませんでした。

 このように、地域性も対応も違う中、被災者のニーズを正確に掴むのは大変なことだったろうと思います。活動されている方につきましては、大変に感謝いたしております。また、新潟の水害後のボランティア会議に際して、私が挨拶をする機会があり、「自分のことは自分でする。人のことも自分でする」という意見が多いのですが、最後に人に甘えてしまうということがあります。先ほど、堂々と発言された方が長岡の高校生であったということに感銘を受けました。ここまで勉強をしに来て、堂々とご発言されているのに驚きました。

 地震後の対応につき、政府としても出来ることを検討したいと思います。引き続き、ご支援をしていただければと思います。本日はありがとうございました。

丸谷(内閣府災害予防担当企画官)

 本日はまことにありがとうございました。


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