平成8年度総合防災訓練大綱について

(中央防災会議決定)

 中央防災会議(会長・内閣総理大臣)は 平成8年度の総合防災訓練大綱 を決定し、「平成8年5月23日付・中防災第16号」で関係機関に通知した(地方公共団体へは消防庁から通知)。
 この大綱は毎年9月1日に実施している総合防災訓練の目的と訓練の主な内容等について定めたものであり、昨年同様、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた、実践的な訓練とすることとしている。
  1.  総合防災訓練は、南関東地域直下の地震及び東海地震のほか、全国的に発生の可能性が指摘されている大規模地震を対象とし、災害対策基本法等の円滑な運用に資するとともに、国民の防災意識の高揚を図ることを目的とする。
  2.  南関東地域直下の地震については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ昨年度に引き続き、実践的な政府本部運営訓練を行うこととし、今年度は特に以下の新規項目を追加して訓練を実施する。
     なお、東海地震についても国土庁を中心に南関東地域直下の地震に準じた訓練を行うこととしている。
    •  平成8年4月1日から供用開始となった地震被害早期評価システム(DIS)に基づく被害予測・伝達訓練を実施する。
    •  平成8年4月1日から運用開始された全都道府県と中央を直結する中央防災無線網による政府本部と都道府県災害対策本部との通信連絡訓練を実施する。
    •  災害対策基本法の一部改正(平成7年12月、第134回国会)に伴い必要に応じ現地対策本部を設置する旨明記されたことを受け、緊急災害現地対策本部の設置運営訓練を実施する。
    •  大規模災害時に都道府県の枠を越えて広域的に即応でき、かつ、高度の救出救助能力を有する「広域緊急援助隊」、人命救助活動等をより効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な援助を行う「緊急消防援助隊」の派遣計画作成訓練を実施する。
  3.  現地訓練については、上記「広域緊急援助隊」及び「緊急消防援助隊」の実働訓練並びに緊急輸送路確保のための車両の流入規制等の交通規制訓練、都県の区域を越えた広域的な重症患者の搬送訓練を重点に位置づける。
  4.  南関東地域直下の地震及び東海地震に係る地域以外の各地域においても、中央防災会議の総合防災訓練を参考とし、地域の訓練の充実に努めるものとする。
     特に地方のブロック単位で行われる広域的な防災訓練についてはその円滑な実施が図られるよう、中央防災会議として支援を行うものとする。
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問合せ先 国土庁防災局防災業務課 (電話)03-3501-5695 (Fax)03-3503-5690
     (防災企画官)大竹重幸 (課長補佐)塩見 寛

平成8年度総合防災訓練大綱

中央防災会議決定

 訓練の目的

 総合防災訓練は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、実践的な訓練とすることとし、発生の切迫性の高まっている南関東地域直下の地震及び東海地震に係る中央における訓練を内閣、関係省庁、関係地方公共団体、関係公共機関、その他関係団体が、緊密かつ有機的な連携を図りつつ実施するとともに、全国的に発生の可能性が指摘されている大規模地震に係る訓練を各地域において実施し、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法及び地震防災計画等の円滑な運用に資するとともに、防災意識の高揚を図ることを目的とする。

 中央における総合防災訓練

  1.  訓練の日時及び想定
     9月1日の「防災の日」に以下の想定に基づき実施する。
    •  南関東地域直下の地震
      ○ 震度6以上の直下型地震を想定
      ○ 発災時間:12時00分頃
    •  東海地震
      ○ 判定会招集連絡報:7時00分頃
      ○ マグニチュ−ド8.0、強化地域内の震度6以上を想定
      ○ 発災時間:9時30分頃(原則として警戒宣言後1日経過を想定する。)
  2.  政府本部運営訓練
    地震災害警戒本部、緊急災害対策本部等の政府本部の設置・運営に関する訓練を以下のとおり実施する。
    •  南関東地域直下の地震
       南関東地域直下の地震に係る発災対応型訓練として下記事項に重点を置き地震応急対策訓練を実施する。
      •  官邸の役割を重視した訓練
         関係閣僚会議の開催、緊急災害対策本部の設置・運営等内閣を挙げての災害対応訓練、緊急参集チ−ムの参集、消防・警察・自衛隊・海上保安庁等の関係省庁及び電力・ガス会社等の民間公共機関等から内閣情報集約センターへの情報集約等初動対応の訓練の実施
      •  初動期の情報収集・伝達訓練
         消防、警察、自衛隊、海上保安庁等防災関係機関による災害発生時の航空機等を使用した初動期における、迅速な応急対策決定のための情報収集・伝達訓練、指定公共機関からの情報収集・伝達訓練及び地震被害早期評価システムに基づく被害予測・伝達訓練
      •  地方公共団体等との連携による情報収集・伝達訓練
         政府本部、指定行政機関、地方公共団体等が連携し、衛星系を利用した画像伝送装置を活用した被害情報等の収集・伝達訓練及び全国の都道府県に接続された中央防災無線による政府本部と都県の災害対策本部との通信連絡訓練
      •  現地における情報収集・伝達訓練
         情報先遣チ−ムの派遣、緊急災害現地対策本部の設置、政府調査団の派遣、現地本部員の派遣等による現地情報の収集・伝達訓練、初動対応連絡・調整訓練
      •  広域応援要請訓練
        •  消防、警察、自衛隊、海上保安庁の広域的な応援に係る情報の伝達訓練、緊急消防援助隊、広域緊急援助隊等の派遣計画作成訓練
        •  被害想定に基づく道路、ヘリポ−ト、港湾施設等周辺の状況を踏まえた「緊急輸送ネットワ−ク確保計画」の作成訓練
      •  現地との連携による広域応援訓練
         被災都県が政府本部に対して行う物資の調達、救護班の派遣、等の各種の救援要請に関し、関係機関が相互に協力し、被災都県との連携のもと、広域的支援計画作成訓練を実施する。また、ボランティア等の支援申し出に対する対応訓練を実施する。
        
    •  東海地震
       東海地震に係る訓練として警戒宣言発令に伴う訓練と地震災害発生に係る訓練を次のとおり実施する。
      •  警戒宣言発令に伴う訓練
         東海地震に係る予知対応型訓練として、判定会招集連絡報の受理伝達訓練、職員の非常参集訓練、警戒宣言の発令、警戒本部の設営訓練及び地震防災応急対策訓練を実施する。
      •  地震災害発生に係る訓練
         南関東地域直下の地震に係る発災対応型訓練に準じ、地震応急対策訓練を実施する。
  3.  現地訓練
     南関東地域直下の地震又は東海地震を想定した現地における訓練を以下のとおり実施する。
    •  訓練対象地域
      •  南関東地域直下の地震
         茨城県、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県
         なお、栃木県、群馬県は広域救援地域として実施
      •  東海地震
         地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)の属する県(神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県)及び三重県
    •  訓練の重点事項
       地震及びその被害の想定を明確にし、各地域の防災関係機関、住民、企業等が相互に連携し一体となり、地域の実情に即し、以下の訓練を重点に実施する。
       特に、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、各人が家庭、企業、学校等において防災知識及び防災対応行動の再確認を行うとともに、防災意識の高揚を図る。
      •  防災意識の高揚
         防災に関する正しい知識を身につけ、災害に対して的確な行動をとれるように、以下の事項に重点をおいて防災意識の高揚を図る。
        •  自然災害における被害状況・行動形態等の検証とその教訓の周知
        •  自らの地域は自らで守る自衛意識の醸成、周知の徹底
        •  地域、家庭、企業、学校等における地震等の安全対策の点検・防災用品の点検・調達と家族会議等を通じた家族の防災意識の確認
        •  防災知識の普及と防災意識の高揚等をうながすテレビ・ラジオ、広報誌、新聞、雑誌、ポスタ−等による広報の充実
      •  住民・企業・ボランティア等における自主防災訓練
        •  自主防災組織を中心とし、企業・学校・ボランティア等の参加・協力を求めて行われる地域住民等の連帯による地元密着型の自主防災訓練として、以下の訓練を重点的に実施する。また、参加者の判断を求める訓練の導入など実践的な訓練となるよう配慮する。
          •  地域住民相互が助け合って行う初期消火、負傷者等の救出・応急救護、給食給水、災害関係情報の収集・伝達・広報等の訓練及び高齢者、障害者等災害弱者や在日外国人、児童・生徒に重点を置いた避難・誘導訓練、地域住民と参加ボランティア、ボランティア相互間の協力による訓練
          •  家庭内の危険箇所の点検、地震等の安全対策の点検、非常持出し品の点検及びその携行訓練
          •  救援活動・救援物資等の支援の受入れ等に係る情報収集・伝達訓練
        •  各企業における災害時の要員の参集、従業員等の初期消火・避難誘導・生産ラインの点検、情報システム等の復旧手順の点検、確認訓練、災害情報の収集・伝達等の訓練及び応急復旧等の訓練を実施する。
           また、防災関係機関、近隣の企業等との合同訓練を実施する。
        •  地域、家庭、企業、学校等における災害時の危険回避行動の点検、避難場所の確認、家族との連絡方法の確認等の訓練を実施する。
        •  夜間における災害発生に対応した訓練並びに長期間の避難及び広域・同時被災に対応した訓練を実施する。
      •  防災関係機関による情報の収集・伝達及び広報訓練
        •  防災関係機関による情報の混乱防止に配慮した、警戒宣言時及び災害時における迅速・的確な災害関係情報の収集・伝達・広報訓練
        •  防災関係機関相互間及び防災関係機関と住民等との間における情報の収集・伝達・広報訓練
        •  災害発生後の余震、降雨等による土砂災害及び建物の倒壊、公共施設の破損など二次災害防止のための点検、避難誘導訓練及び住民の安全確保のための広報訓練
        •  非常通信協議会構成員相互間における中央防災無線等各種の通信網を活用した情報伝達訓練及びパソコンネットワ−ク等を活用した情報伝達訓練
      •  防災関係機関による応急対策訓練
         防災関係機関は、それぞれの地震防災強化計画、防災業務計画及び地域防災計画に従い、関係機関相互の連携と協力体制の確保に努めるとともに、保有する航空機、船舶、車両、資機材等の特性と機動力を活かしつつ、以下の訓練を実施する。
        •  各防災関係機関における発災に備えた資機材・人員等の配備及び操作訓練
        •  緊急消防援助隊、広域緊急援助隊等による実働訓練
        •  消防、警察、自衛隊、海上保安庁等防災関係機関の相互連携、相互支援による同時多発火災の消火・延焼防止、負傷者等の救出・救護、医療機関への搬送等の訓練
        •  避難所の設置及び運営、給食及び給水の円滑な実施に必要な対応訓練
      •  緊急輸送路確保等の訓練
         防災機関の相互連携のもと、道路及び岸壁の損壊、放置車両、避難・救援車両及び船舶の流入等による陸上・海上の交通渋滞・混雑に対する緊急輸送路の確保、応急対策要員等の緊急輸送及び交通規制訓練などを行う。
        •  道路啓開訓練、道路復旧訓練、放置車両などの撤去訓練及び緊急輸送路確保のための車両の流入規制等の交通規制訓練、交通信号機滅灯対策訓練、船舶の入港制限等の交通規制訓練並びに緊急輸送訓練
        •  車両、船舶、航空機など多様な輸送手段を活用し、それぞれの機能と特性を考慮し、相互の連携を重視した緊急輸送訓練、都県の区域を越えた広域的な緊急輸送訓練及び重傷患者の搬送訓練
      •  津波、土砂災害、水害等の危険が懸念される地域における訓練
         津波、土砂災害、水害等の危険が予測される地域においては、地域の特性を踏まえ住民や行楽客等の参加協力を得るよう努めつつ、以下の訓練を実施する。
        •  津波危険予想地域の住民、行楽客、船舶等の早期避難・誘導、水難救助訓練
        •  安全を確保したうえでの沿岸部の警戒監視及び津波警報と避難勧告等の伝達・広報訓練
        •  土砂災害、水害等の懸念される地域からの住民の避難・誘導、救出・救護訓練
      •  混乱防止訓練
        •  タ−ミナル駅、繁華街、地下街、高層ビル等のような不特定多数の者が集まり、心理的不安を誘発しやすい場所における社会的混乱を防止するため、防災関係機関、関連企業、利用者、地域住民等が一体となって情報伝達・広報、避難・誘導、通行規制等の訓練を実施する。
        •  特定の企業・事業所等における混乱防止訓練として、以下の訓練を実施する。
          •  デパ−ト、旅館・ホテル、行楽施設等における一般客の参加を得た情報伝達、避難・誘導訓練
          •  病院、社会福祉施設等における災害弱者の安全確保訓練
        •  鉄道等における交通対策・混乱防止訓練として、以下の訓練を実施する。
          •  鉄道、地下鉄における乗客への情報伝達、避難・誘導、負傷者の応急救護、列車の停止・減速運転、車両脱線復旧、築堤崩壊復旧等の訓練
      •  ライフライン等の確保訓練及び情報化対応訓練
        •  ライフライン等の確保訓練として、以下の訓練を実施する。
          •  電気・ガス・上下水道・通信等のライフラインが、広域にわたり、かつ長期間使用できないことに対し、地域、企業等において行う代替手段等の確保、関係機器の点検とその使用方法の習熟等の訓練
          •  ライフライン施設における相互応援も含んだ応急復旧等の訓練
          •  住居、事務所等の倒壊に備えた応急用資機材の確保、調達、応急復旧等の訓練
        •  情報化の進展に伴う社会経済への影響に配慮し、情報化対応訓練として、以下の訓練を実施する。
          •  流通VAN等情報システムを利用している企業等におけるバックアップ手段の点検・運用等の訓練
          •  地方公共団体の住民情報システム等の安全対策の点検、代替方策の確認等の訓練

 各地域における総合防災訓練

 南関東地域直下の地震又は東海地震に係る地域以外の各地域においても、2に記した事項を参考とし、下記事項を基本方針として訓練の充実に努めるものとする。
 また、ブロック単位で行われる広域的な防災訓練の円滑な実施が図られるよう、支援を行うものとする。
 なお、訓練日時は毎年度9月1日の「防災の日」又は防災週間(8月30日~9月5日)内に設定することが望ましいが、実施主体においてこれまでの経緯、過去の地震災害等を踏まえ、有効かつ適切と考える日に行うことを妨げない。
  1.  被害想定等に基づく訓練
     地震及びその被害の想定を明確にし、訓練との対応関係を十分検討するとともに、被害状況等については、一時に全容が判明するものではないという現実に即した情報収集、伝達等の訓練の実施に努める。
  2.  非常参集訓練
     道府県あるいは市町村の重要施設(市役所等)が重大な被害を受けた場合、公共交通機関が途絶した場合等を想定し、災害対策要員の確保と体制の早期確立のための訓練の実施に努める。
  3.  広域的応援訓練
     消防、警察、自衛隊、海上保安庁、指定公共機関、他の地方公共団体等の緊密な連携のもと、広域的なネットワ−クを活用した情報収集・伝達訓練及び都道府県の区域を越えたブロック単位の広域的な防災訓練を推進する。
  4.  災害対策本部訓練
     訓練においては、災害対策本部への本部要員の参集、本部の設置、運営の訓練を合わせて行うとともに、災害対策本部と現地訓練との連携をも考慮し、実態に即した情報収集、伝達、応急対策の実施等の訓練を行うよう努める。
  5.  一体的な共同訓練
     防災関係機関の保有するヘリコプター、船舶、緊急車両等を活用した現地での共同訓練により、緊急物資・人員の輸送、交通規制、避難誘導訓練等が一体的に実施されるよう努める。
  6.  住民参加の促進
     住民が災害対策の主役であるとの観点から、住民の主体的、実践的な訓練への参加を促進する。
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問合せ先 国土庁防災局防災業務課 (電話)03-3501-5695 (Fax)03-3503-5690
     (防災企画官)大竹重幸 (課長補佐)塩見 寛

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